バカも集えば神になる②
大学に入って一番最初にやること。それは履修登録である。
「楽な授業、他ないすか?」
「えー、楽な授業?これは割と楽だけどなぁ。」
そう言われて教えてくれたのは社会学。その時間は心理学で埋まってるから無理だ。
今は履修登録のための相談会。しかも、小浜の方から海洋系の先輩が来てくれて、俺たちの相談に乗ってもらっている。俺たち海洋系の学部は1年間で一般教養の科目を40単位取らないといけなくて、ハードスケジュールなのだ。
「実際、今、由良くんが入れてる授業でも理想だと思うけどね。それ以上目指すのは、やりたいことと違うことになるかもしれない。」
「俺はそれでもいいですよ!単位さえ取れたら!」
意気揚々とそう言うのは洋樹。手元のメモは聞き出した楽な授業でいっぱいだ。
「実際、楽単ってレポート系が多いんよな。でも、それだけにしてたら期末死ぬからやめてた方がいいんだよ。適度にテストありのやつを入れて、期末の負荷を落とすのが1番いい。」
「テストありですか…」
大学のテストなんてそうそう予想がつかない。高校のときは2年連続一緒だったり、中学からずっと一緒だったりしたのもあったみたいだから、比較的傾向が分かりやすかったものの、大学はそうではないから、予想がつきにくいのだ。
「でも、君たちまで旧カリだから色々根回しはできるよ。」
「「「「本当ですか!?」」」」
机をガタッと揺らす。
「うん。しかも無料でいいよ。それくらいは稼いでるから。」
そう、この先輩は大学の中でも1、2を争う有名な先輩。大学2年生にして会社に勤めたり、研究結果を発表したりして新聞に取り上げられたり、さらにはそういう大学生たちを集めて、意見交換会みたいなものもしている。エリート路線まっしぐらだ。
『お願いします‼』
俺たちは机に頭がぶつかりそうになるほど、お辞儀をした。
そして、先輩の話を聞きながら、履修科目の選定を進め、会も終盤。後ろの席からふいに会話が聞こえてきた。
「オンデマンドは忘れなかったらめちゃくちゃ楽やで。」
『え?』
後ろに座って同じように質問していた女子たちの方に体ごと向ける。
「おお、めっちゃ食いつくやん。オンデマンドってのは遠隔とはまた別で、配信された課題に、空いてる時間に取り組むだけの授業。このロシア語やったら、1は対面やけど2はオンデマンドやねんな。やから授業一コマ出るだけで、家でちゃんとやったら2単位になるんよ。」
『ほぉ〜』
「ちなみに私はこれで単位稼いだ。」
終了時間ギリギリで明らかになった、新しい単位の稼ぎ方。
「今から…どっかの家で集まってやるか?」
「それもあり。」
「やけど…」
「俺の終バスやな。だいたい2時間ぐらい後。晩飯当番は桜に頼んだらいいから、いける。」
これはさすがにもうちょっと調べて組み直さないといけないなとなって、大輝の家に集まることに。
さあ、延長戦だ。