そうだ、福井に行こう!③
『うおおおおおお!』
目の前に広がる雄大な日本海と岩を眺めて、私たちの口からはそう自然と出てしまう。涼しい潮風と飛んでいるトンビの声が心地いい。
これが噂の自殺の名所か。サスペンスでよく見る景色。ラストのシーンで船越〇一郎が立っているところ。うん。よく見てた。
「写真撮ろ!」
「えーなーそれ。どこで撮る?」
とりあえず展望台みたいになってるところ…はあるけど、そこは観光客の溜まり場になっているし、なんか撮りにくそう。
「この下とか行けるんちゃう?」
「たしかに、行けそうやな。」
きいが見つけた階段を下って行くと、本当に海のそばに出れそうなところがあった。けど、足場が相当悪い。
「ほっほっほっと、みんなもこっちこっち!」
「速いって!コケるぞ、きい。」
「みんなが遅いだけやって。早く早く!」
きいが岩場をぴょんぴょんと飛び越えてその奥へ。ちょうどそこは岩に囲まれているところで、1枚の画としてちょうどいい風景だ。
「分かった分かった。」
それを追っかけるように奏と楓がぴょんぴょんと岩場を歩いていく。
「音羽ちゃん、はい。」
「あっ、ありがと。」
カレンが出してくれた手を取り、岩場を1個1個越えていく。Qと桜も同じように3人の元に歩いていった。
「ここええな。めっちゃ綺麗やわ。」
「ホンマに。潮引いとって良かったわ。」
足元はちょっと水があったりして、ここまで海がくるのだろう。本当にこんな場所に来れるなんて、私たちは本当にツいているな。
「どーやって撮る?自撮りで全員は…入らんか。えーっと。」
「撮りましょうか?」
別の観光客に話しかけられる。とりあえずスマホを渡して撮ってもらった。
「すっご。これめっちゃいい景色やん。」
「ちょうど後ろも波あるしさ。」
「なんかフレームみたいになってるし。」
岩に囲まれたここだから撮れる写真を撮って、私たちはもう一度上に上がる。
上には遊覧船の受付があって、そこに結構人が並んでいるが、私たちの目当てはそれではない。
『腹減ったー!』
そう叫ぶ。そう、私たちは昼がまだなんだ。朝食べてから何も食べてない。しかも、さっきからずっと食の誘惑がそこら中にある。そんな環境で我慢などできるはずがない。
ちょうど近くにカフェがあったのでそこに入った。
「うぉー、雰囲気めっちゃいいな。」
「席先とってやってさ。どこにする?4人席2つ使わなあかんけど。」
「そこら辺空いてるし、そーするか。」
桜が見つけた席に荷物を置き、カードを持ってレジに向かった。