そうだ、福井に行こう!②
「よっ!」
「久しぶり。長旅おつかれさん。」
福井駅についたら、目の前にはQと桜がいた。
「ほんま久しぶりやな。元気そうでよかったわ。」
「2人ともなんか大人っぽくなったー?」
「Qはなんかチャラくなってるし。」
「桜もなんか垢抜けたね。」
「ひい君も桜も寝れてる?疲れてへん?」
かれこれ1ヶ月以上ぶりの再会。私もみんなも口々に言いたいことを言う。
福井駅は恐竜で埋めつくされていて、流石って感じ。奏もずっとキョロキョロしているし、男心燻られるものなんだろう。
「ほな行こか。今日はちょっと歩くで。」
Qがそう言って歩き始めるのは、百貨店とかがあるのとは逆側のバス乗り場のほう。だけど、向かったのはえちぜん鉄道三国芦原線の駅だ。
「ここでフリーパス買って、んで、三国の方行くから。」
そう説明されるけど、福井のことを知らない私たちは、目的地がどこなのか分からない。とりあえず言われるがまま切符を買って、電車に乗った。
大阪では見ないような風景を眺めながらさらに北へ。温泉街を通り抜けて着いたのは三国港駅だ。
「え?こんな海近いんや。」
カレンが驚いたようにそう言う。そう、ここまで本当に40分ほどしかかかってないのだ。
「これで近いとか言っとったらな。」
「来年俺が住むとこはもっと近いで。それこそ徒歩圏内。」
こっちに来てもう感覚がバグっているのか、2人はそんなことを口走る。これより海が近いって、大阪って本当にそういう面では恵まれてないんだなと感じる。
「んじゃ、歩くか。東尋坊まで。」
『え?』
Qが笑顔で言った一言に、私たちは恐怖を感じる。バス推奨のところに徒歩で?なんで?
歩道もない道を歩き続ける。聞こえてくる木々が揺らめく音と、潮騒。そのどれもが私たちを後押ししているようで、ただ現実を見せているように感じる。
「ほら、きいも生き返れ。あともうちょっとやぞ。」
「むぅーりぃー!じぬ゛ー!ひい君、よくこんな苦行考えたなぁ」
「どーせ全員運動とか全くしてへんのやろ?ええ運動や。このあとの温泉が楽しくなるスパイスやと思え。」
福井住みの2人以外は、どんどん歩くペースが落ちていって、ゆっくりとしたペースで山を登り続ける。だからお互いを励まし合って、しばらく歩いていると、東尋坊の入り口が見えてきた。
『づい゛だー!』
「「みんな死にすぎやろ。」」
ケラケラと2人は笑っているが、そんなに元気な2人の方がおかしい。売店で売っていたサイダーを飲みながら、体力を少しづつ回復…
「まだ東尋坊はこの先やで。行くぞー。」
Qの鬼。