バカも集えば神になる①
今日は前期オリエンテーション。つまり、初の登校日だ。
何をするのかというと、履修のことが大半。昼まではその説明を永遠と受けて、午後はプレテストがある。
「勉強してきた?」
学食で作ってきたご飯を食べながら、目の前の仲良くなった男子に話しかける。
「なんもしとらん。てか、しとるやつおんの?」
名前は横井啓介。同じ先端増養殖科学科に入学する、岡山出身のヤツだ。
「俺も何もしてない。」
そう言うのは葛西洋樹。京都出身の少し真面目そうな男子。そして、俺の横で首を大きく振っているのが静岡出身の大本大輝。全員同じ学科だ。
1日目にして仲良くなったのにも理由がある。というか偶然なのだが、今日最初に座った席の近くがたまたま同じ先端のメンバーが揃っていて、それで仲良くなったのだ。
「とか言いつつやってるんやろ?」
「そんなわけないって。こっちで暮らし始めていきなりそんなことできる暇あるかって話やん。」
「でも彼女いとるやろ?」
「それとこれとは話別や。」
ちなみにこのメンバーには桜のことは話した。もちろん一緒に暮らしてることもだ。
「でも、あんなに可愛い彼女いるんだし、夜ははかどるんだろ?」
「そんなできるか⁉枯れるわ。」
ちなみに桜は学部のメンバーで食べるらしい。向こうも友達ができたようで何よりだ。
「それよりもや。今からのテスト筆記やったら俺、生物1桁とる自信あるぞ。」
「俺たちだって化学無理だけど。」
「マークなことを祈るしかないな。」
昼食の時間も意外に短く、もうそろそろ戻らないといけない時間に。
「いやだあああああああああああああ」
「そんなこと言っとったってなんも変わらんねんし行くぞ。」
俺たちはコップとかを直して、午前中に説明のあった部屋に向かった。
部屋の中は、喋っている人が大半。足掻いている人がちらほら。俺のちょうど前のやつも勉強していた。
「インスリン?なんか聞いたことある。」
「そりゃあそうでしょ。糖尿病のやつだもん。」
ん?俺でも軽く勉強したときに覚えたこと…こいつまさか!
「なあなあ、物化?」
「何でわかったん?」
俺は机の下でガッツポーズを決める。
「仲間おったぁ~!」
「もしかして君も?」
「物化物化。生物とか触れたことなかったわ。」
思わぬ出会いだ。この学部はほとんどが生物で受験しているので、俺たちみたいな生物をやっていない人は本当に少数派。だからみんな嘆いているのは科学のテストの方で、生物はむしろ余裕そうなのだ。
「生物どうするよ。」
「今ちょっとやってるけど、筆記やったら諦めやな。」
「死ぬときは一緒か。」
「てか、勉強せんでいいん?」
そいつは俺のことを心配して聞いてくる。そんな心配など気にせず、さっきまで出していた生物の参考書をカバンの中にしまった。
「諦めた。」
「早すぎ。」
そうこうしているうちに、担任と副担任が教室に入ってくる。いよいよテストだ。
「なあなあ名前は?」
「山井陸。」
「俺は由良久志。よろしくな。」
「よろしく。」
お互いにちゃんと座りなおす。
「できないものでなかよくなることってあるんやな。」
「めっちゃ諦めとるし。」
「よくそんな笑ってられるよな。」
「うるせえ。」
時間は1科目あたり60分。途中提出ありのテスト。そして形式は…
「テストはマークシートです。」
「「っっっっっしゃあぁぁぁぁ!」」
結果を言おう。マークシートでも全くできんかった。