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1人でふと、空を見上げる

 大学からの帰り道、少女は1人、空を見上げていた。


「元気かなぁ」


心配しているのは彼女の想い人である久志と、その彼女の桜。少し複雑な感情は胸の中にまだ残っているが、それでも応援している。


 彼女の名前は橋本紀乃。周りからは「きい」と呼ばれているが、そのあだ名は久志がつけたもの。幼い頃からずっと好きだったが、桜という彼女ができたことで、諦めざるをえなくなってしまった。


 枚方を包む夜の空はまるで紀乃の心をそのまま映し出しているようで、足取りも重たい。今までなら3人で歩いていたこの道も今は1人。その事が余計に寂しさを覚えさせる。


「大学に入ったら見つかると思ったのになぁ。ひい君みたいに合う人、見つからないなぁ」


恐らく久志と桜はずっと一緒にいるのだろう。この先もずっと、死ぬまで。だから紀乃に残っている席は幼馴染としてでしかなくて、それが恋人に変わることは絶対ない。ラノベみたいなifストーリーなんて、現実ではないんだから。


「クラブは…私みたいなコミュ障にできるわけないし、文化部に入っても幽霊になりそう…となると、やっぱり授業かなぁ。喋らんしなぁ。」


いい加減切り替えないといけないけど、人間そんな単純な生き物ではない。紀乃自身も一度は切り替えたはずなのに、また想ってしまっている。


 そんなことを思っているともう家の前に着いていたようだ。振り返ったところに見えるのは久志の家。今は杏ちゃんだけが住んでいるけど、たまに聞こえてくる声を聞く感じ、もう1人ぐらいいるんだろう。誰を連れ込んでいるのやら。


「会いたいなぁ」


なんて言葉を呟く。遠く離れた福井にいる久志には絶対に届かないはずなのに。


 玄関のドアを開けて、家の中に入る。


「ただいまぁ。」

「おかえり。新歓どんな感じ?」

「ん〜、やっぱり合わないかなぁって。」

「そう。これはもうバイトか帰宅部しかないなぁ。」


カバンを自分の部屋に持って行って、スマホのマナーモードを解除する。すると通知音が鳴った。


『【急募】そうだ、福井に行こう!』

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