2人はふと思いを馳せる
遠く離れた大阪の地。そこではあるカップルが今日も電車に揺られていた。
「あの2人、元気かなぁ?」
「どした?急に。」
女子のほうはグリーンに髪を染めていて、電車のドアにもたれながら目の前にいる彼氏のほうを見ている。その彼氏はまだ塩素で脱色されていたのが残っているのか、焦茶色の髪だ。吊り革を持って彼女を守るように立っている。
2人の名前は加太奏太郎と海南楓。小さい頃からの幼馴染で、もうすぐ付き合い始めてから3年と半年になる。高校でもそうだったが、大学でも熟年夫婦とイジられる2人は、今日も一緒に大学に向かっている。
「やって、あの2人がさ、一緒に暮らし始めて、もう1ヶ月ぐらいやろ?もうそろそろ不満の一つや二つくらい出てきてもおかしくないやん。」
楓はそう言っている。が、それは嘘である。内心、2人がそんなことで別れるとかは思っていない。それも全部、彼氏補正や彼女補正がかかって、それすらも愛してしまう。そんな2人だからだ。杏ちゃんというストッパーがいなくなってどうなっているのかと思ってはいるが、そこら辺のリスク管理はちゃんとできているだろう。
「そうか?あの2人やったら大丈夫やろ?」
奏太郎はそう言っている。が、それも嘘である。内心2人が別れないかビクビクである。それもそのはず。高校で付き合っていたカップルがことごとく大学進学をきっかけに別れていっているからだ。楓とはそうはならないと考えているにしても、周りがどんどん別れていった事実を知っている以上、その可能性も捨てきれないのだ。
「かなぁ?」
「そうやろ。まあなんかあったら、どーせどっちかに相談来んねんし。」
「やな。気長に待っとこ。」
こういうときに楽観的に考える彼女と考えすぎる彼氏。こんな2人だからバランスを保っているのだ。
「それよりさ、早く計画立てよ!ゴールデンウィークカップル突撃ツアー。」
「えー、マジでそれやるつもりなんか?」
「やろーや!絶対おもろいもん!」
2人が何を考えているのか、それは2人にしか分からない。けど、一つだけ確かなことがある。絶対迷惑をかけるということだ。
まあ、そんなのも2人の色だ。ここまで2人の空間が出来上がっているから、夫婦と言われるのかもしれない。