表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/133

アゲてけ!②

 夕方の学生会館。その中はいつもとは違う喧騒に包まれていた。


『Tonight, we honor the hero!』


ココ最近ずっと聴いているバンドのキラーチューンのイントロが流れてきて、身体が自然とノる。激しいロックサウンドが会場全体を揺らし、ライブが近づいてきているのだと感じさせる。


 軽音部のライブは放課後、4時30分からのスタート。俺はこういうライブが好きだから来てみることにしたが…


「やらかした。誰か誘ったらよかった。」


同じ学科のヤツを誰も誘っていなくて、一人ぼっち。桜は今日は5限まであるので、それまでは絶対に1人だ。


 1年生は続々と中に入ってきていて、会館の中は賑わいを見せている。その中にはもう軽音部に入っているヤツもいるだろう。


 機材の調整が終わったのか、一瞬だけ静かになったあと、ドラムの8ビートが響き始め、内臓の方から持ち上げられるような感覚になる。そこにギター、ベースの音が重なり、会場の空気の色を変えた。


「手拍子お願いします!」


そう煽られ、頭の上で手拍子を打つ。ボーカルの歌が入り、会場の熱狂は最高潮に。音の緊張もだんだんと和らいできた。


 コピバンだからか、何人か一緒に歌っている人もいる。その姿を見たときに顔が綻んで、さらに音の安定感がでてきた。


 そしてサビ。全員で右手を突き上げる。身体全体でリズムを刻む人や、腕を振って刻む人。はたまた踊り始める人まで。それぞれリズムに乗ってライブ全体を盛り上げていく。


(やっぱこういうのがいいな。)


ハコの大きさに関わらず、観客と奏者、その両方でライブというものを作り上げていく。このバンドが好きとか嫌いとか、そんなのは関係ない。音を楽しむこと自体が最高に楽しい。


(でも、活動方針が違いすぎてなぁ)


ここの軽音部は基本的にコピバンだらけだ。オリバンはあることにはあるのだが、その数はやはり少ない。しかもそのどれもが作詞も作曲も両方やっていて、俺みたいな裏方のみ志望の人は入りにくい環境になってしまっている。


 ひとバンド目のライブが終わって、俺は文芸部のSNSが更新されていないかの確認をする。するとついに新歓の予定が発表されていた。


「やっとかー。」


そのスクショを桜に送ると、すぐに反応が返ってくる。桜も今週の木曜日は行けるらしい。


 入る部活は決まった。それじゃ、もうちょいライブを楽しむとするか。


 もうすぐ始まる2番目のバンドのライブに備えて、俺はお茶を飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ