土佐にっき⑨
最終日と言いつつも、明日は俺たちもバイトだのなんだのあるので昼過ぎには高知から退散ということになる。
「この芋けんぴうんまー!」
「甘すぎんくてめっちゃ美味いわ。」
「これ買って帰ろ。」
ひろめ市場に来た俺たちは、大阪へのお土産を買おうと店を見回っていた。
とりあえず昼前までここで過ごし、俺たちは駅前のとある店に向かう。
「何気に食べたことないなぁ。」
「鍋の〆やったら似たんは食べたことあるけど。」
「どんなん出てくんやろうなぁ。」
ルンルンで歩いている俺たちを横目に亮介は笑っている。
「どないしたん?」
「なんか子供みたいやなぁーって。」
「そか?」
「ウッキウキやんけ。」
案内しながらそう言う亮介もなんか楽しそうだ。
軽く歩いて着いたのは小さな店。木の引き戸と暖簾の入り口はどこか古そうだが、店内は何やら賑やかだ。
「煮込みラーメンか。」
「名前聞くだけで美味そうやな。」
「すみませーん!」
亮介が店内にかけあってみると、もうすぐ席が空きそうなので待っててくれと言われた。そして、何人かのお客さんが出て行ったのを見送ると、俺たちを案内する声が聞こえてくる。
「行くかぁー」
「やな。」
荷物を持って店の中に入った俺たちを迎えてくれたのは、いいだしの香りだった。
店内に貼られているメニュー。そこに書かれているのはラーメンとご飯、そしてそれぞれの量だけ。晴彦はラーメン大とご飯小、海人はラーメン並とご飯小、亮介はラーメン特大、そして俺はラーメン大とライス並をそれぞれ注文した。
「どんな量来るんやろうな。亮介は来たことないん?」
「あるでー。中々量多いから奏やってんなぁ〜って思っててん。」
「先言ってーや。俺、食そこそこ細なってんから。」
ちょうど反対側にいる亮介にそう文句を言いながら俺たちは待つ。すると、茶碗にこんもりと盛られた白米と一緒にくつくつと音が鳴っている鍋を持って来られた。
「わお。」
俺たちの目の前に広がっているのは鍋とご飯だけ。なのに驚きを隠せない。そう、本当にそこそこ量があるからだ。
「言ったやろ?」
「ほんまにこんな多いとは思わんやん。」
「まあ美味そうやな。」
「それな。」
鍋焼きラーメンという初めて見る食べ物を前にした俺たちは、やはりウキウキを隠せない。割り箸を手に取りそれを割る。
『いただきます!』
俺たちは手を合わせて食べ始めた。