土佐にっき⑦
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
湯船に浸かって俺たちはおっさんみたいな声を出す。ここは風呂。今日一日の疲れを癒す場だ。
あの後結局足だけ海に浸かりに行き、結果下半身はびしょびしょに。体も冷えるし、せっかくやからと温泉に行こうとなった。
「それにしてもなぁ。」
「あん時ゃ笑ったわ。」
俺たちがマッサージ風呂に浸かりながら言っているのは、桂浜での一幕。さすがにこれ以上濡れたらレンタカーがやばい事になると車に戻ったときだ。
『桂浜は遊泳禁止となっております。波打ち際で遊ぶなどの行為はお止め下さい。』
そんなアナウンス。俺たちは顔を見合わせて笑うしかなかった。
「遅いよな。」
「あれは俺たちが遊んでる間に言わんと意味ないやろ。」
「おーい、3人とも遊ぶことがまず悪いんやからな。」
この中で唯一波打ち際に行かなかった亮介がそう言う。ごもっともだが、もう終わったこと。今更何を反省するやら。
サウナに移動して汗を流す。温度が少し高めの設定だったので、短めの7分で外に出て水風呂、そして外気浴までする。何回かしていると整ったって気がした。
「奏ってようそんなことできるよな。」
「ん?」
「俺やったらあんな暑いところなかなか行こうと思えんぞ。」
海人が露天風呂に浸かりながらそう言っている。そういや海人は最初の1回でもう露天風呂に浸かっていたな。
「慣れよ慣れ。俺も最初は『何がちゃうねん』って思ってたけどな。合宿でサウナ入って整ったら沼った。」
まさにサウナは沼だ。1度あの快感を味わってしまうと抜け出せない。そんな魅力がここにある。
しばらく空を見上げながらぼーっとしていると、横から声をかけられた。
「もうそろそろ上がらんと時間やばいぞ。」
「ん?もうそんな時間なん?」
晴彦だ。このメンバーの中やったら1番引き締まっている身体をしている。確か小学校の頃は1番腕相撲が強かったっけな。
「6時過ぎ。今から飯食って、どーせダラダラしてってしたら車返す時間なるやろ?」
「やな。」
俺たちは重たい腰を上げて、風呂を後にする。体を拭いて服を着替えたら、飯だ。
こう思ったことはないだろうか。温泉の飯って美味い。
『うっま。』
温泉のレストランで飯を食べる俺たち。やばい。これは癖になる。
「それどーなん?」
晴彦は俺の親子丼を指さす。ちなみに晴彦はうどん、海人はチキン南蛮定食、亮介はラーメンだ。
「マジ神。」
「1口ちょーだいや。」
「嫌や。」
「ケチ。」
俺たちはずっと喋りながら晩飯を食べて、車を返しに行く。こうして1日目は終わ……るわけがなかった。