土佐にっき④
「来たんちゃう?」
「やな。これやな。」
ついに今回の目的地である久礼大正市場に着いた。近くの駐車場はいっぱいだったので、海沿いの駐車場に停めて車を降りる。
「せっかくやし海行く?」
「やな。せっかくやしな。」
ということで海に降りれる階段を降りていく。波打ち際は浜って感じより砂利浜って感じだった。太平洋を望む海を見ていると、横からピシャって音が聞こえてくる。
「何してんねん。」
「水切りやん水切り。こんなけ石あんねんからやらんと。」
海人が近くの石を持ちながらそう言う。晴彦もなんか探しているし、これはやる流れだな。
俺もいい感じの石を見つけて投げてみる。すると、ちょうど波が来るタイミングで海の中に吸い込まれていく。
「むっず!」
「それな。タイミングゲーやん。」
普通のやつと違ってタイミングゲーと化した水切りは困難極まりない。しかもここは太平洋。波もそこそこ高いわけで、落ち着いたタイミングなんかそう来ない。
軽く体も動かしたということで腹が減ってきた。
「行く?」
「行こーぜ。腹減った。」
「まあ、朝あの時間であんなけやもんな。」
「行くか。」
そう笑って市場の方に向かう。小さいながらも人で賑わっていた。
「食べるならこの2軒のどっちかよな。」
「まあ、見て回ろうぜ。」
中にある定食屋は2軒。昼はどっちかで食べるとして、とりあえず観光から。
市場から少し離れたところにも商店はあるらしく、そっちから回ることに。すると、市場の中よりも格段に安い魚屋を見つけた。
「兄ちゃんたち、食べてきなよ。」
おばちゃんに話しかけられて足を止める。見れば鰹はもちろん、今の時期だから食べれるメジカもある。
「捌いてもらえるんですか?」
「もちろんよ。ちょっとだけお金貰うけどね。」
多分ここで食べないと向こうはそこそこお金を取られてしまうだろう。でも、鰹はやはり飯と一緒に食べたいわけで……
「じゃあメジカお願いします。」
「はーい。ちょっと待っててね。」
おばちゃんはメジカを1匹取り、捌いていく。当たり前だが手馴れていて、すぐに刺身が出来上がった。
「すだちかけてるから、このまま食べるなり、醤油かけるなりし。」
「ありがとうございます!」
受け取ったメジカは光り輝いていて、見てるだけでヨダレが出てきそうなほど。俺たちは1切れ取って、口に運んだ。
「どう?」
口に入れた瞬間に淡泊ながらも濃い味が広がっていく。そう例えるなら淡白にしたマグロって感じだ。
『美味っ!』
俺たちの口からは自然とそうとだけ零れ出していた。