土佐にっき③
「そろそろ行くか」
6時半から8時前まで朝を食べながらダラダラとすごした俺たちは、もうすぐレンタカーの店が開く時間なので動き出す。
駅前のレンタカー店をプラプラと歩きながら、車の確保に成功。借りた軽に乗り込んで運転役の海人が乗り込んでくるのを待つ。
「おまたー」
「待った待った。」
「とりあえずルートは調べといたで。」
「ナイス。じゃあ行くか。」
ナビで上手くそのルートに近づくように設定して、車は動き出す。さあ、市場までの旅の始まりだ。
今回使うのは海沿いに行けるようなルート。とはいえ、そんな狭い道をナビが推奨してくれるわけがないので、途中で左に曲がって行く。
「ここら辺やったっけ?」
「その次やな。そこ左。」
ジャンケンに負けて助手席になった晴彦がスマホ片手に案内する。ナビはまっすぐと言っているが、そんなのは関係ない。俺たちはただ太平洋を見に来たのだ。
「めっちゃ漁村って感じやな。」
「それな。なんか全体的に古くていい感じや。」
窓の外を眺めながら車を走らせていく。もちろん、海側の窓は全開だ。潮風が車内に入ってきて、気持ちいい。
しばらく走らせていると、少し内陸側に入らないといけなくなって、仕方なくそっち側に。すると、道の駅が見えてきた。
「寄ってく?」
「寄ってくか。」
「寄ってこーぜ。」
「寄ってくけど何すんの?」
国民的アニメのメダカの魚人みたいなことを言いながら、駐車場に車を停める。
中はまあ、「高知やな」って感じだった。普通のお土産や、道の駅らしく野菜が売っているのはもちろん。奥の方には魚屋がある。しかも、鰹ばっか売っていて、ここだけでも高知って感じだ。
「良かったら食べてき。」
魚屋のおばちゃんに話しかけられて、タッパーの中に入った鰹の身を食べる。口の中でホロホロと解けるようなその身は、その瞬間に鰹のうまみが口の中に広がる爆弾のようだった。
「うっま。」
「やろ?」
食べたことない鰹の強さが口の中で弾ける。
「4人とも大学生?」
「はい。こいつが大学がこっちの方なので遊びに来てます。」
おばちゃんが聞いてきて、海人がそう答える。おばちゃんはそうかそうかと頷きながら「この中で一人暮らししてるのは?」と聞いてきた。
「僕だけですけど、半同棲みたいな生活送っている奴が1人います。」
「おい亮介、それ誰のことや。」
「君、そうなんや。彼女可愛い?」
興味津々と顔に書いてあるような笑顔でそう聞いてくる。
「普通に可愛いですよ。こいつの彼女。」
「おい晴彦。」
「そうかそうか。じゃあその可愛い彼女もこれ買って帰ったら喜ぶやろうなぁ。」
ダメだ。どんどん逃げ場がなくなっている。
「これ買います。」
「ありがとう。」