土佐にっき②
「「「んあぁぁぁ!」」」
高知に着いて、バスから降りた俺たちの一声目はそれだった。
「寝れた?」
「せいぜい2時間ぐらい。狭すぎな。」
「ほんまそれ。俺なんか真ん中やからカーテンないし、スマホつけたら周りに迷惑かかるから地獄やったで。」
海人がなんか文句を言っているが、じゃんけんに負けた海人が悪い。それよりも今、目の前の問題だ。
「朝飯どーするよ?」
「それな。」
「空いてる店ある?」
高知のど真ん中のはずの高知駅。そこにある店も空いてないし、何よりまだ人が少ない。
「とりあえず亮介に連絡したからここら辺で待っとこ。」
海人が起きているか起きていないか分からない亮介に連絡してくれたので、バスのロータリーのところで待つことに。すると、やはり目につく像が3つあった。
「坂本龍馬と……」
「中岡慎太郎……なんか聞いたことあるなぁ」
「武市半平太……って誰やねん!」
3人並んだその像に一人一人感想を言いながら、駅前を軽く見て回る。路面電車が通っていたり、観光案内所みたいな施設があったりと、まあ天王寺あるものはみたいな感じか。見た目は……って感じ。
とは言え、道は広い。それだけははっきりと言える。
「ん?」
「あれちゃう?」
「あれやな。」
Tシャツ1枚。気だるげなその歩き方と、眠そうに目を擦る仕草。身長はそこまで大きくなく、中肉中背を体現したようなその見た目。どこからどう見ても亮介だ。
「おはよ。」
「起きれたんや。」
「それな。今日は雨か。」
「お前らほんま好き勝手言うな。」
久しぶりに会った亮介の一言目はそれだった。
とりあえず4人でまだ動き始めていない路面電車の横を通りながら、商店街を目指す。もちろん、店が空いているわけがない。
「千日前みたいな広さやな。」
「やけど、店の古さとかはおおとしみたいな感じやで。」
笑いながらそう言う亮介。おおとし商店街というのは寝屋川市駅前の小さな商店街のこと。小さいながら、あそこら辺では1番栄えている場所と言っても過言ではないところである。
「人おらんなぁ。」
海人はそう言葉を漏らした。
「今何時やと思ってんねん。」
「何時?」
「6時過ぎやな。こんな時間にここ出歩いている人なんかおらんやろ。」
「それもそうか。」
とりあえず歩きながら朝を食べれそうなところを探す。するとよく見るMの文字が見えてきた。
「そこやったらもうすぐ開くんちゃう?」
「やな。ちょっと待っとくか。」
今にも開きそうなここを朝メシにすると決めて、その横にあるベンチに座った。