朝の目覚めに1杯を①
こっちに来てもうすぐ1ヶ月。だんだん福井の生活にも慣れてきたし、リズムも出来始めた。
「ふわぁ〜あ。」
久志の隣で裸で目覚めて、伸びをする。まぁ、昨日ヤってそのまま寝ていたからしょうがないけど、体に刻み込まれたこのリズムはどうやらもうズレそうにない。
そんな私の隣で気持ちよさそうに寝ている久志の頬をそっと撫でて、起こさないようにベッドから出る。投げ捨てた服を拾い集めて、それを身につけていった。
今日は土曜日。高校時代は今日も授業があったけど、大学は今日は休み。だからこうやってゆっくりと寝ている。
私は昨日の晩、水につけておいた食器たちを洗い始める。久志はこれくらいの音では起きてこないからこれくらいの作業はできるし、何より今日の朝担当は私だからだ。
「何作ろっかなー」
とは言いつつも、頭の中にぱっと思いついたのはいつものあれ。だけど、ホットサンドメーカーはIHは使えなかったから持ってきていない。だからボツだ。
本格的に何を作ろうか悩んでいると、そういえばと思って私は食器棚の方を見た。その上段、ど真ん中に入っているのはミルとドリップのセット一式。休みの日にこういう優雅な朝食を摂ろうと2人でお金を出し合って買ったものだ。もちろんコーヒーカップも少し良さげなものを持ってきていて、休日はゆっくりできるようになっている。
「これに合うんはやっぱパン系よな。普通のモーニングみたいな感じにするか。」
今日の朝ごはんが決まったので、私は課題を始めた。
しばらくすると久志の起きる声が聞こえてきた。
「おはよ。」
「ん?もう朝なん?」
「そーやで。」
「おはよ。」
久志ももちろん裸のままで、特に鍛えてもいないのに引き締まった上半身だけが見えている。杏ちゃん曰く、現役とほぼ何も変わっていないとか。引退して3年以上経っているのにそんなこと有り得るのかと思うけど、有り得たようだ。
「とりあえず、朝はコーヒードリップする気やけど、久志も飲むやんな?」
「もちろん。」
「じゃあテキトーに作るから待ってて。」
「はーい」
久志は寝ぼけた目を擦りながら服を着て、顔を洗いに向かう。その姿を見送ってから私は業スーのパンを切り、トースターの中に入れた。2口あるコンロをフルに使い、卵を茹で、ウインナーを焼いていく。皿には先週のうちに千切りにしておいたキャベツをのせて、ゆで卵とウインナーをのせる。
「ドリップはさすがにやるわ。そんなけ1人でやらせてるし。」
「ありがと。お湯は沸かしとくね。」
完成まであと少しだ。