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帰ろうか、帰ろうよ③

 光善寺駅に着いて、家までの道をゆっくりと歩く。前回帰ってきてからまだそんなに時間が経っていないのに、風景が随分と変わった。いや、前回のときは話しながらだったから、気にしていなかっただけか。家がいくつかなくなっていたり、逆に建っていたり。半年ぶりに気にしたこの街は、まるで自分が過ごしていたところとは思えないほど変わってしまっていた。


 いつも待ち合わせをしていたコンビニはまだ残ったまま。その横の坂を上がると家まではもうすぐだ。


「懐かしいな。」


駄弁りながら歩いた道。未だにその風景は鮮明に思い出せる。1つ、2つと街灯の明かりを踏んでいき、ある場所で止まった。そこは、桜を初めて見かけた場所。そういえばあの時、なんで俺の家の前にいたんだろうか。そこは聞けていないな。


「帰ったら聞いてみよ。」


そう呟いてまた歩き始める。1分もかからずに家の前に着いた。明かりは灯っている。今日は休日だから、午前練か午後練でもこの時間なら帰ってきているはずだから当たり前か。もう1人がいるかは知らんけど。


 久しぶりに取り出す、こっちの家の鍵を差し込み、いつもと逆回しに捻る。ガチャッと音が鳴って、鍵が開いた。


 ドアを引く。


 目の前を見る。


 制服のブラウスだけ着ている杏がいる。


「ただいま」

「せめてピンポンぐらいしてーや。」


そうそうこれこれって心の中で笑っていた。


 家に上がり、荷物を置く。杏はそのまんまの格好でソファーに寝転んで、アイスを食べていた。


「あ、これお土産な。」

「何?あ、それ!ナイス!」


持って帰ってきた寒干大根を見せると、犬のように飛びついてきて奪っていく。実のところ、うちの家の全員はこれが好物だ。


 アイスをさっさと食べ終えて、杏は袋をガサッと開ける。そして中の小袋も開けてポリポリと食べ始めた。


「ほんまそれ好きよな」

「美味いんやからしゃーないやん。あ、せや。おかえり」

「おっそ」

「忘れとったもんはしゃーない。こっちは今練習後やねん。」

「まぁ見りゃ分かるけど、そんなキツかったんか?」


スマホを充電コードに差したりと、俺も俺で色々しながら、2個、3個と手を伸ばす杏と喋る。


「そりゃあキツかったわ。」

「ご愁傷さま」


俺も寒干大根に手を伸ばし、1つ食べる。


「なんで奪うん?」

「美味いからに決まってるやん。」


もう1個食べようと手を伸ばすと、杏は袋ごと持っていく。それでも尚取ろうとしたらプロレスが始まり、部屋中に散らばってしまった。杏のせいやからな!

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