帰ろうか、帰ろうよ②
「ほな、行ってくるわ。」
「気ぃつけてね。」
2泊分の荷物をまとめたリュックを背負って、手にはお土産の寒干大根が入った紙袋を持つ。玄関まで行くと、後ろから桜がやってきて、送り出すようにこう言った。
「今年の冬はジャム勝通おうね。」
いや、それプレッシャーやって。
昼間の暑い外の世界に踏み出した俺は、いつも乗っているのとは逆側のバス停を目指す。それにしても、9月とは思えないほどの暑さだ。
「あっつ」
バイトは基本的に朝行って夜帰るってのがずっとだったから、この暑さにはあまり慣れていない。その暑さを紛らわすように、両耳にイヤホンを突っ込んで当たり前のようにロックを流す。あれ、これってさらに暑くなるんちゃう?まあ、気にせんとこ。
バス停に着いて、当たり前のように5分くらい遅れたバスに乗り込む。こんなんやったなと1ヶ月半前のことが懐かしく思えてくるあたり、この夏休みは結構濃かったんやなと思う。
福井駅まではすぐ。そこからハピラインに乗って敦賀まで。そしてそこからはJRで京都までだ。今日は湖西を通るルートで行けるから、乗り換えが格段に少ない。帰ってくる予定の電車は湖東経由だから少し多いので、余計楽に思えてくる。
雄大な琵琶湖を左手に南下。窓の外をみながら電車に揺られること2時間。その間は電波が悪かったりするのでオンラインゲームはやめておく。味方に迷惑かかるからな。
だからWeb小説を漁る。春からちょいちょい読み進めたり、一気にガサッと読んだりした小説の更新分が積まれているから、2時間なんてあっという間。
京都駅に着いた俺はまた乗り換えて、東福寺に向かう。近鉄乗り換えとかそんなのもあるけど、これが一番楽だからな。
と言いつつ、少し腹が減った。時間も夕方の5時をもう過ぎようとしている。朝昼兼用で1食しか食べてきていない腹はもう限界だ。
コンビニで値引きシールが貼られた小さなスイーツを1つ食べ、今度こそ東福寺に向かう。東福寺にはすぐに着いて、また乗り換えだ。
聞きなれた音楽、聞きなれた表示。青地に白文字の案内の通りに歩いて、改札をくぐれば京阪のホームだ。もう夕方なので、出た時よりは涼しく感じる。
「まもなく、準急、淀屋橋行きが……」
聞きなれた音声案内と共に、いつも乗っていた緑色の電車が入線してくる。少しだけ懐かしい気持ちになって、俺はそれに乗り込んだ。