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帰ろうか、帰ろうよ①

 卒検に受かったら次に待っているのは本免だ。これは住民票がある都道府県の運転免許試験場で受けないといけない。


「用意できてんの?」

「まだやで。」


というわけで、来年には小浜に移るからとまだ住民票を移していなかった俺は、大阪に帰らないといけない。桜はずっと福井市なのでこっちに住民票を置いていたが、俺はそれをしなかった。


「久志もこっちに移しといたらよかったのに。」

「まあ、しゃーないしゃーない。折角やし杏の様子見て、奏とかにも会ってから帰ってくることにするわ。」


俺はすっかり使っていない大きめのリュックを引っ張り出してきて、その中に着替えとかを詰めていく。ここで袋に種類ごとにまとめて入れて、最後に防水の袋を入れておくのは桜の入れ知恵だ。


 桜はそんな様子を見ながら、他に必要そうなものを手渡してくれる。


「向こうで一泊する感じ?」

「せやな。折角やし大阪満喫してくるわ。」

「地元やのにな。」

「それな。」


こっちに住み始めてから、今まで当たり前のように過ごしていた大阪を満喫するって感覚が芽生えた。場所としても遠くなったし、何よりあるものが違う。だから、満喫するって言葉が出てくるのだ。


 ざっと用意を済ませて、これで終わりにするかとその場に寝転ぼうとしたら、桜にちょいちょいと止められた。


「お土産は?」

「え?」

「お土産は持っていかんの?」


桜に言われたその言葉。俺はそんな発想はなかったが、桜にとっては当たり前のことだったのだろう。


「いる?」

「あった方がええと思うけどなぁ。」

「まじかぁ〜」


お土産となると、杏の分、そして会う奏の分。あとは必然的に会うことになりそうな楓の分。これは奏の分とまとめといてOKか。そして最後に、帰って来ていると言われたら家凸してきそうなきいの分。まあ、3つか。それならええわ。


「それは明日駅で買うわ。今は眠い。」

「絶対忘れるで。今買ってき。」

「でもこの近くないやん。」

「バロウ行く途中あるやろ?あそこでええやん。」

「高そう……」

「諦めな。」


そう言われて買いに行くかと思いつつも、今はバイト終わり。


「眠いから一眠りしてからな。」

「それは絶対起きひんやつやねん。寝る前に行ってき。」

「じゃあ一緒に選んでーや。」

「ええよ。行こ。」


俺は立ち上がって、プール後のボッサボサの髪を軽く整える。変な感じで乾いたからめんどくさいことになっているけど、何とかして人前に出れるレペルに。


「ほな行こかー」

「なっつその先生。」


高校時代の化学基礎を担当していた先生のモノマネをして俺を呼ぶ桜の後を追って家を出た。

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