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そーさくきょーしつ③

「高校時代はどんな小説書いてたんですか?」


木崎先輩が零した一言。これがきっかけに話題はどんどん脱線していく。


「聞きたい?」

「はい!」

「やめとけ朱莉。絶対後悔するぞ。」


ノリノリな木崎先輩を加瀬さんが止めようとする。しかし偏野先輩が止まるわけがなく、小説の投稿画面を見せてきた。


「『寡黙な後輩との創作教室』?これってもしかして……」

「そう!私と駿人をモチーフにしたラブコメよ!もちろん登場人物は私たちだけ!モブは何人か出したけど名前は出してないし!」

『……』


何も言えなかった。まさかここまでとは思わなかったから。呆れたようにため息をつく加瀬さんがほくほく顔の偏野先輩の頭にチョップしているけど、響いている感じがしない。


「朱莉はどんなの書いてたの?」

「えーっと、ここだから言える話なんですけど。」


話は木崎先輩のターンになって、少し恥ずかしそうにしながら口を開く。


「推しユニットのメンバーがイチャイチャするBL小説です。」


マジで恥ずかしそうに言うから何も言えない。静寂が教室の中を包みこんだのを感じた木崎先輩は、焦ったように弁明を始める。


「だって!こういう小説って、いわば自分の性癖の開示じゃないですか!フェチを前面に押し出していかないと何も伝わらないじゃないですか!そういうものですよ!」


もう苦しいを通り越して、こっちまで恥ずかしくなるような弁明。自分でも気づいている木崎先輩は「死にたい……」と悶え始めた。


 でも、ここで終わらないのが文芸部というものだ。


「1年生ズは何か作ってた?」


次は俺たちの番か。もうここは諦めるしかないけど、特に変わったものは作ってないしな。


「私たちは高校の文化祭でバンドやったんで、そのときに曲つくりましたよ。」


桜は何の躊躇もなくそう話し始める。俺にだけ悪そうな笑顔を見せながら。


 その時気づいた。この話、もしかしたらダメージを食らうのは俺だけじゃないかと。歌詞だけ見せることになれば、公開されるのは俺の所だけ。音付きなら桜が作ったところもということになるが、歌っているのは俺。どちらにしても俺は致命傷を食らうことになる。


「へぇ、どんなん?」


加瀬さんが真っ先に食いついてくる。あなただけには聞かれたくない!


「流しますね。」


桜はまた躊躇せず音源を流し始めようとした。その画面に映っていたのは、文化祭の時の映像。俺たちのライブだった。


 結果から言おう。そこから30分くらいの記憶がない。

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