理系でも楽な日はたまにある②
『今日はこれで終わります。コメントペーパーを…今から…送るので次の授業までに回答してください。』
講義が終わって、教授が最後に挨拶を済ませる。俺は誰もいない部屋の中でググっと伸びをして、部屋から抜ける。すると、桜からRINEが来た。
『さっきの授業ちゃんと聞いてた?』
よう分かってるな、俺のこと。この講義の間にコーヒーを淹れること2回。そのうえ1回トイレに行き、日常品で足りないもののネット注文まで済ませた。そんなことをしていて、まともに聞いているわけないやないか。
『まあ、感想だけやから後からスライド見ながらなんとかするわ。』
画面の向こうで大きくため息をついている桜のことが容易に想像できる。もしも問題系のものばっかりなら桜を頼っていたかもしれないが、今日のところはひとまず大丈夫そうだ。
パソコンの電源を落として、今日一日をどうしようかと考える。講義が終わったら、部活に入っていない大学生なんて暇以外の何物でもない。
「なにやろっかなー。」
ちなみに大学では桜と一緒に文芸部に入るつもっりだ。もともと文章を書くことには興味があったので、せっかく大学生になったからと始めてみることにした。
ということで、公募のまとめサイトを巡回して、書きやすそうなテーマの募集を探す。
「こうやって見てみると、公募って結構多いねんな。」
最近はネット小説の人口が増えてきて、刊行されるラノベはサイト内でのコンテスト系のものが増えてきた。だからといって、まだ紙小説は根強い人気があるのでこういう公募が減らないわけである。
その中に一つ、ちょうど福井県が開催している賞を見つけた。福井県在住の人や、ゆかりのある人、出身の人を対象とした賞で、俺たち福井県の大学に通っている人にとってはもってこいの賞だ。
また、小学生の頃によく読んでいたミステリー小説もちょうど募集していて、短編だから書きやすいと思いこれも書くことに。
そして最後に見つけたのはラブレターを募集しているもの。文字数も少なめで、そこまでコンテスト事体が有名ではないから、入選されやすそうな感じではある。が、これは書籍化の副賞がついてこないから、そこを注意しないといけない。
「忘れられへん人か…」
脳裏に浮かんだのは幼馴染の顔。こういうのを書くようなキャラじゃないが、こいつは書けそうだなと思う。俺自身も桜に対してのことで少しは書けそうだ。
「とりあえず、これ書いてみよう。」
俺はもう一度パソコンを立ち上げる。時間は昼前。暇つぶしの始まりだ。