ギリギリで過ごしてきたから
疲れというものは本当に面倒なときにくるものだとつくづく思う。
動画制作に車校の勉強、それに加えてバイトと忙しい日々を送っていたところにWeb制作という新しいタスクが増えて、身体のキャパはほぼ限界を迎えていた。
「桜、1時間経ったら起こしに来て。」
「ん?ええけどいつもみたいにソファーで寝たら?」
「今日はベッドで寝んとあかん疲れやから部屋で寝る。」
バイト終わりの午後3時。明日に迫っている車校の卒検の勉強をしようとしたけど、どうも身体がだるい。多分これは休憩せんと熱が出るやつだ。
「分かった。1時間ね。」
「うん、頼む。」
同じように車校の勉強をしようとしている桜は優しく笑って送り出してくれる。俺は自室に入った。
カーテンを閉めて、ベッドに横になる。枕元に手を伸ばしてクーラーをつけて、目をつぶった。
「ん〜」
しかし、一向に寝れない。身体も疲れているし、精神的にも限界に近いのに、意識だけは手放すことができない。スマホでも持ってきてたらよかったのだけど、生憎そこまで頭が回っていなかったのでリビングに置いてきてしまった。取りに行くのもめんどくさいので、本棚からテキトーにラノベを1冊取り、開く。
20分くらいページをめくり続けていると、だんだんとぼんやりしてきた。瞼も少しずつ重くなってきて、あくびも出る。
俺は本をそっと閉じ、そのままベッドにうつ伏せに寝転ぶ。大きく息を吸って吐くと、なんだか寝れそうな感覚になってきた。
そしてそのまま意識を手放した。
誰かに起こされるとかそんなことはなく、自然と目が覚める。時間を確認したら5時を過ぎていた。
「起こして言ったやん。」
そう呟いて起き上がる。体の疲れも取れていて、もうちゃんと動けそうだ。
リビングに行くと、桜がまだ勉強していた。
「おはよ。よう寝とったな。」
「起こして言ったやん。」
今度はちゃんと面と向かって言う。俺も勉強せんとあかんかったから、早めに起こして欲しかったのだ。
「どーせ最初の30分ぐらいはまともに寝れてへんやろ?それやったら1時間で起こすんちゃうくて、起きるまで寝させてあげよう思って。」
呆れたような口調でそう言う桜は、ペンを俺に向けながら続けてこう言う。
「久志は溜め込みすぎやねん。疲れんの分かってて無理してるやろ。寝込んだら私が面倒見んとあかんねんからちゃんとしてや。」
「せやな。善処する。」
「明日からちゃんと直すこと。そうやないと小浜行ってからもお母さんにたまに様子見に行ってもらうことなるから。」
そう言ってまた机に向き直す。俺は「ありがと」と言って隣に座り、また勉強を始めた。