さあ、始めるか②
数日後、SNS班のメンバーが決まった。俺と蒼空、オタクである宮城、そして陸だ。そのメンバーが決まった今、
「よかったあぁぁぁぁぁぁ」
俺はほっと胸を撫で下ろしていた。もしここでそこまで関わりのない奴がSNS班に入っていたら、俺は上手く動けないだろう。しかもあまり無茶できない。ここ最近は解消されつつあったが、桜と出会うまでは教室の端にいるようなクソド陰キャだったのだ。
これからSNS班として動くにあたって、蒼空とは少しだけ相談をしてある。何のSNSをやるか、そのメールアドレスは?とかとか。宣伝方法も少しだけ相談していて、蒼空が外部に頼んで作って貰ったチラシっぽいものと俺が軽く作る動画。そして各お知らせはSNSで写真と共にアップする感じだろう。
「やること少ないなぁ」
その都度やる感じだから、基本的にはやることは少なめ。拡散とかはネット民の皆さんがやってくれるし、自分でしようにも、世界に影響のあるアカウントなんか俺は持っていない。
「少なくてええやん。自分のやることに時間使えんねんし。」
「まあ、せやけどな。」
俺の隣で参考書を解いている桜はそう言う。今週の金曜に家庭教師や個別教室をやるためのテストみたいなのがあるらしい。そのときはスーツで行かないといけないらしく、クリーニングに出しに行っていた。
「俺はこんなけしか仕事内容ないやん。やけどさ、調理班は仕事しかないんよ。当日もそうやし、試作とかも手伝わんと勝手分からんからさ。」
「それも見越して選んだんやからええやん。」
桜はそう言うけど、納得できない。実際には納得はしているけど、心が追いついていない感じ。一言で言うなら「何かが違う」という感情だ。
そもそもSNS班の仕事内容は、基本的にデスクワークだけだろう。当日までの文実みたいな感じだ。それに比べて調理班や調達班、試作班は常に動き続ける。それこそ高校までの各クラスみたいな感じで、俺はそこから素材を提供してもらわないといけない。だから、何かが違うと。そう思ってしまうんだ。
「何か俺に……」
そのとき、ふと脳裏に2人の顔が浮かんだ。
「そうか。」
俺は笑う。傍から見たら悪い笑顔に見えるかもしれないけど、あの2人の力を貸して貰えたら、もっといいものができるかもしれない。
早速RINEを送ったら、「珍しっ!」と「それならいいよ。ちょい待ち」と返ってきた。送った相手はフランスで働いている料理人の両親だ。