さあ、始めるか①
9月がもう目の前まで迫っている。日の沈む時間もだんだんと早くなってきて、気温も……いや、それはそれほど変わらんか。
まあそんな時期になってきて、文化祭ももうすぐ準備を始めないといけないということで、その計画が進んでいる。
『じゃあ、作るのは未利用魚を使った餃子ってことで』
『仕事の割り振り決めたいからアンケート答えて』
主導はうちの学科の一番の有名人、よっさん。そもそもこの計画を考えたのもよっさんで、今まで試作も何回もしてくれた。俺たちはこれまでは案だしとかばかりで、特に活動はあまりしてこなかったが、本番約1か月前の今日から本格的に活動開始だ。
よっさんから送られてきたアンケートを見る。
「SNS、調理、買い出し、設営……まあ、そんなもんよな。」
アンケートに書かれている役割はこんな感じ。選択肢の追加は許可されてるから、足りなそうなところは勝手に追加していいって感じか。
「車がないから買い出しは消しよな。調理は当日行けるか分からんからやめとった方がいいやろうし。」
「久志の性格的にはSNSちゃう?PCそこそこ得意やねんし。」
「上がってたんやったら声かけてーや。心臓止まるか思ーたわ。」
アンケート画面を眺めていると、風呂から上がってきた桜が隣から顔を出す。風呂上がりの少し火照った肌と濡れた髪が目の前に来るが、いつもの光景。もう慣れた。
「SNS言うても何やるか分からんしな。Xやったら勝手わかるけど他はどうやろうなって感じやからな。」
「聞いてみたら?」
「せやな。」
試しに聞いてみると、いくつか案が出てきた。宣伝方法はこちらに任せてもらえるらしく、必要なら素材も提供してくれるらしい。
「決まりやな。」
「まあ、できるからやってみるか。動画も作ることになるやろうから、BGMは頼んでもいい?」
「ええけど、そんな無茶はできひんで。」
「……善処するわ」
そう笑いながら言う。俺の頭の中にはどういう動画にするかは決まっていて、あとは素材があればできる感じだ。これが上手くできるなら、桜の負担は……考えないことにしよう。
とはいえ、SNS運用だけという訳にもいかない。だから設営のところにもチェックを入れて、そっちにも関わることにする。そんな感じでいいかなと確定した。
「あとは、この魚捌き日程か。」
未利用魚を使うので、スーパーで売っているような魚は使えない。なので、漁港から直接仕入れて、自分たちの手で捌くことになる。だから、何人かが揃わないといけないのだが……
「全部無理やん。」