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理系でも楽な日はたまにある①

 理系の学生と聞いて忙しそうだなとか思う人もそう少なくないだろう。実際、俺もそう思っていたし、現実でも桜よりも授業のコマ数は多い。


 でも、今日だけは違った。


「んじゃ、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」


桜は今日は少し不機嫌そうというか、不服そうな感じ。玄関で靴を履くも、外に出ようとしない。そんな感じだ。


「なんで文系の私が大学行かなあかんくて、久志がオンラインで1限だけやねん。」


文句を言っている彼女の言う通り、今日は俺は偶にしかない、めちゃくちゃ楽な日だ。


 1限にとっているのは宗教学。京大の先生がオンラインで講義してくれるもので、なおかつ楽だから人気が高い。経済のやつらは結構取っている講義の1つで、桜ももちろん取っている。そして、2限からが休みになっている理由は、英検による認定制度を使ったからだ。これを使うと授業に出る必要がなくなる。つまり空きコマになったわけだ。そして3限は元から何も入れていなかった。なので空きコマ。そして4限は今週は先生の都合で小浜からこっちにやって来れず、なくなっている。


 つまり、今日は1限が終わったらもう自由ということだ。課題はいくつかあるけど。


「やけど昨日桜、全休やったやろ?」

「それはそうやけど、なんかずるい。」

「それは昨日の俺が思ってたことやな。ほな行ってこい。バス遅れるぞ。」


「はーい」と不服そうに返事をしながら、鍵を開ける。ドアノブに一度手をかけたが、すぐにその手を放してこっちを向いた。


「ちゅーして。」

「はい?」

「そしたら行くから。」


少し甘えた口調で言う桜は、いつも見ているものとは違って、とてもかわいらしく見える。


 そして俺たちは軽く触れるだけのキスをした。


「ちょっと元気出た。行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」


今度こそドアを開けた桜は大学へと向かっていった。


 さて、一人になったわけだが、講義のスタートまでまだ1時間もある。


「洗い物でもするか。洗濯は…分らんものだらけやから任せて、掃除と、作り置きでも作ってたら時間になるやろ。」


とりあえず家事系をやることにして、時間をつぶしていると誰かからRINEが飛んできた。桜からだ。


『さびしい…』

『周り喋れる人誰もおらん』


だろうなと思いつつも、とりあえずなんか返事せなと思い、打ち込んでいく。


『とりあえず隣の席とかに話しかけてみぃさ』


すぐに分かったとだけ返事が返ってきて、俺は俺で授業の用意をする。zoomを起動して部屋に入ったら準備完了だ。


 すると、またRINEがきた。


『喋れた!』


そのメッセージだけで嬉しくなった俺がいた。今晩はちょっと豪勢にしよう。

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