新生活の始まり
―俺に青春は必要ないと誰かが言った。正直そう思っていたし、彼女ができるまではそんな世界は遠いものだと思っていた。
でもそれは違った。実際のところは隣にいる誰かとの関係が少し変わるだけで、他は何も変わらない。そんなものだった。
言葉にするのは難しい。けど、お互い想い合ってさえいれば、自然と伝わる。このことには、青春がなかったら気づかなかっただろう。
あの頃の俺に言わせてみれば「青春など必要なかったはずなのに!」だな。
おっと、呼ばれてしまった。それじゃあ、また―
「お待たせ。」
「おう。」
トイレから帰ってきた桜は手を拭いてからキャリーバッグを転がし歩き出す。
福井駅に着いた俺たちはトイレ休憩を済ませ、不動産屋で鍵を受け取る。そしてバスに乗って、これから住む部屋に向かった。
「ヨーロッパ軒、ケンタ、アトム、天一…食べるところには困らなそう。」
バスに揺られながらスマホのマップで部屋の近くのお店を探す桜。
「なんでもう外食する気満々やねん。」
「やって、これからバイトとかあるやろ?料理作れる体力残ってるっかなって。」
「それは、その日休みのほうが作ったらええんちゃう?」
「それはそか。でも、今日はフライパンとかないんやしええやろ。」
「今日の晩はな。」
一応、近くのスーパーも確認して借りた部屋だから、そこにも困らないはず。それはそうとして、今からは荷物の搬入が待っている。
最寄りのバス停から徒歩4分。俺たちの住む部屋に着いた。2階で広さは2DK。お互いのプライベートは分けようということで、それぞれ部屋を持つことになっている。その分家賃は高くなってしまうが致し方なし。
「あとどれくらいで着くんやろ。」
「まだ連絡来てないからな。とりま先になんか腹入れとくか。」
「せやな。天一行こ。」
「タイマーやな?」
「そゆこと。」
キャリーバッグを部屋に置いて、俺たちは天一に向かった。
昼食を終えたタイミングで、引っ越し業者から連絡が。どうやらもうすぐ着くらしい。
「帰るでー。」
「はぁーい。」
気の抜けた返事とともに、俺たちは店を出る。
さあ、新生活の幕開けだ。
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お久しぶりです!
前作、『陰キャ』のほうで匂わせていた大学生編、きょうから開始です!
課題とかバイトとかいろいろある中で書いていくので、不定期になることもあるかもしれませんが、現状、毎日投稿の予定なので楽しんでいってください!(なお、今作も書きだめは一切していない模様…)
高校生編はこちらから↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601