バクロノオトマリカイ
私、舞原華は桜未来ちゃんの家でお泊まり会をしてます。
「華ちゃんって、ただのオタクかと思ったけど、意外と話しが合うよね。」
部屋着の未来ちゃんは、男子が見たら鼻血モノだと思う。足長いなぁ。ショートパンツからのぞく小麦色の足。グラビア雑誌から飛び出てきたような…女の子なら憧れるスタイル。大人っぽい顔。
「私も、未来ちゃんは世界が違うかと思ってたー。」
「よっしーと華ちゃんが付き合ったから、話すようになったもんね。」
「うん。未来ちゃんたちはどんな感じでくっついたの?」
未来ちゃんがハートのヒョウ柄クッションを抱きしめた。まるでポスターの一枚みたいに絵になる。
「あんまり人には話さないんだけど、華ちゃんならいっかなぁ。」
タイミングが良いのか悪いのか、未来ちゃんの携帯が鳴った。
「出ていいよー。」
「ごめんね。」
(ピッ)
「はぁい。…もう、今日は女の子だけのお泊まり会だからダメだよ。…うん。浮気してないから。…えー?ちょっと待ってね。華ちゃんキヨからなんだけど、ちょっと代わりたいって。」
ナゼに私?しぶしぶ携帯を受け取った。
「なに?」
(お、本当に舞原チャンだ。)
「荒城ーもっと信用したら?未来ちゃんスッゴい、いい娘じゃん。」
(…何が分かるんだよ。)ブチッ
ツーツーと電子音が鳴り響く。
「何か切られちゃった。」
「そっか。まぁ、キヨは意外と怒りっぽいからね。」
「そうなんだー。荒城ってひょうひょうとしてるから、怒んないと思った。」
「キヨはねー、一時期グレてたんだから。」
確か、未来ちゃんと荒城は違う中学だったハズ。
「あれ未来ちゃんって女子中だったよね。」
「そだよ。私も同じ時期にちょうどグレてたの。中2の秋くらいかなー、私金髪にしてたなぁ。」
「中学生で金髪って周りがうるさくなかった?」
「全部に反抗したくて、わざと怒られるコトばっかしてた。でも、女って単純だよね。好きな人ができたんだ。」
未来ちゃんは、懐かしそうに、目を細めた。好きな人って荒城の事かな?
「私が一目ぼれしたのは、よっしーだったの。で、隣に私と同じ髪の色した男が歩いてて、話しかけやすそうだったから、その男が一人の時を見計らって話しかけた。」
「未来ちゃん…みきやが好きだったんだ。」
「あはっ。昔の話だよ。隣に歩いてた金髪の男ってのが、私のダーリンのキヨ。で、よっしーの事を教えてもらううちに、お互いの髪の色もおさまり、気がつけば付き合ってた。」
「なんか、気がつくと。っていいね!じゃあ、みきやは知らないんだ?未来ちゃんが好きだったこと。」
「さぁ。当時よっしーは恋愛に興味ないって言ってたから分かんない。」
じゃあ綺麗な元カノといつ付き合ってたんだろ。未来ちゃん知ってるかなぁ。でも、やっぱり本人に聞きたいかも。
「よっしーの元カノの事知りたい?」
「えっ。」
「そんなに驚かなくても、顔に出てたよん。」
「本人に聞きたいから、今はいいよ。」
「我慢はよくないよ。たまには、ズルしてもいいんじゃない?」
ズル…かぁ。
「でも、みきやが約束してくれたの。自分で話せるようになったら話すって。」
「なるほど。爽やかカップルだねー。まぁいつでも相談とかのるし。明日から夏休みだよ!水着買った?」
「ありがとう。って水着買ってないよ?なんで?」
「夏休みと言えば、海!水着!そして、ビキニで彼の心を仕留めよう!」
「それって、この雑誌に書いてるのを読んだだけだよね。」
未来ちゃんは、引き出しからヒモ?がついているモノを取り出した。
「じゃん!可愛いでしょ。」
「その水着絶対布が足りないよ。しかも白?」
「これ去年のだから、一緒に買いに行こうね!」
そして、色んなシチュエーションの場合の対応の仕方?をお布団に潜りながら教わり、あっと言う間に一夜が明けた。
それにしても、紐で縛る場合ってのが謎だった。しかも、彼氏を縛るとか?まさかね。こんな美人さんがそんなコトしないよね。
謎を残したまま、未来ちゃんちを出た。
キヨが、電話で俺たちが泊まるのは無しって振られた。中2以来に機嫌が悪いキヨ。
「ウチに泊まるか?」
「男の家に泊まるかア・ホ。」
「雪がキヨに会いたいっつってたなぁ。」
「ふーん。じゃ行くか。」
もれなく、光もつくけどな。
「ただいま。」
「おっじゃましまーす!」
「俺より先に行くな。キヨのヤツ何だかんだで、嬉しかったんだな。」
俺の部屋にはヤツがいた。
「おかえりー。あれ?キヨ先輩!」
「よっ!一番弟子。」
「このサイトがですね。」
「まだまだ甘いよキミ。俺っちが大人の世界に…。」
「人のパソコンで何してんだよ。」
と言いつつ、興味津々な俺。「おー」とか「もうちょい」とか俺の部屋に響く。
「お兄ちゃーん。また私のシャンプー使ったでしょ!あ、キヨ先輩こんにちはー。」
雪登場。
「あ、雪これ以上近づくな!」
「光早く消せ!」
「はい。師匠。」
ピッと冷静に画面を消す光。
「またエロサイト見てたのー?あ、今日お父さんとお母さん、おばあちゃんちに用があるから泊まるって。」
「マジ?今日キヨが泊まるから。お前、樹を泊めんなよ。」
「雪ちゃんいっぱい遊んでねー。」
「僕も泊まります。」
「三人一緒に喋んないでよ。好きにしたら?私はイイコにお勉強してますから。あんまり騒がないでよー。」
雪が自分の部屋に戻った。晩飯どうしよ。適当でいいかー。
「雪ちゃんおっきくなったねー。アレは未来を越すかも。」
「おい。人の妹を変な目で見んな!」
「それより格ゲーしません?」
「人の部屋のモン勝手にあさるな!」
「おーいいじゃん。やろうぜ!」
誰がコイツらへのツッコミ協力して。一人で二人はキツいわ。
「みっきーなに寝てんの?夜はこれからだぜ!」
数時間後。
「おりゃっ。十の字固め!」
「うっ。ギブギブっギブですー。」
「そして、くすぐり地獄ー。」
格ゲーから、実技になっていた。そして雪はいつの間にか俺の部屋で、出前のピザをモグモグ食ってる。
「私もまざりたい!」
いきなり雪の爆弾発言。
「お前は、受験勉強しろ。」
「光ちゃんも受験生じゃん!」
「僕は、間に合ってるから。」
間に合うって何が?プロレスごっこは体が密着するし。イヤだ。
「雪ちゃんは、彼氏と楽しもうね?」
キヨが雪の頭を優しく撫でた。
「うん。」
クソー。雪のヤツ、キヨには素直なんだよな。雪は「おやすみ」と俺の部屋を出た。すぐ隣の部屋なんだけどな。
「うちのマサも雪ちゃんみたいに素直なら可愛いのに。」
「隣の芝生だぜ。俺もマサみたいな弟欲しかったし。」
「え!僕みたいな弟は欲しくないの?」
俺とキヨは顔を見合わせてから、
「いらない。」
とハモった。
「僕も嫌われちゃったなぁ。別に気にしないけど。」
「出た。光ってたまーに、どす黒いよな。」
さすがキヨは鋭い。
「はい。僕よく性格良いって言われますね。」
切り返し上手い。ってかこれってすごい話術だよな。話がずれていくように仕掛けてる。
「僕眠くなった。」
一秒で光は寝た。光はいつも寝るのがめっちゃ早い。
「そういや、天使とか言われてたなコイツ。」
「キヨは金猿。」
「失礼だよなぁ。この好青年にサルってなんだよ。幹也は、ストロアップルだっけ。」
「キヨ、猿っぽいじゃん。俺のは、あだ名じゃねぇし。」
「やたらと甘そうなキャラクターな。今頃、未来と舞原チャン何してんだろーね。」
「悪口言われてるかもなー。」
「未来が舞原チャンに変なコト教えてなけりゃいいけどー。」
「何だよ変なコトって?」
「縛るとかー?」
「俺に聞くな。束縛は俺別に構わねぇし。ヤキモチとか嬉しいから。」
「良い子は寝ましょーねー。」
今の絶対バカにされた。でももう夜中の3時。さすがに眠い。俺は部屋の電気を消して、雑魚寝した。
明日から、夏休み!華とラブラブなるぞ。やっぱ海とか行きてぇなー。
しばらく明日からの夏休みを、想像して眠れなかった。