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空っぽの教室

今日は、みきやが無断欠席だ。



「…ら、舞原華!」



「は、はい!」



「教科書の続きを読め!」



今、歴史の時間なのにまだ、化学の教科書開いてた。



《214ページの5行目からだよ。》



席替えで隣になった杉岡が小声で教えてくれてる。



「しかし、秀吉は…」


せめてメールくらい欲しいのにな。



さっきから隣からの視線が痛い。絶対見たくない。



《さっきのお礼さ…》


私、シカトしてます。でも杉岡は挫けないで、私に話しかけて来る。



チャイムが鳴った。



でも、チャイムが鳴ってからは他の友達のところに行った。



私は携帯を見た。みきやからは来てない。未来ちゃんも遅刻みたい。何か疎外感が沸々と出て来る。


「刹那さんなら知ってるかな。」



昼休みに、現国準備室に行った。



コンコンコン。ノックしても返事がないから開けちゃった。



「はーる…。」



寝て…る。眼鏡がずれてるよ。はる兄まで相手してくれないなんて、退屈だなー。



顔に落書きしちゃお。


そーっと、油性マジックを近づけたら、腕を掴まれた。



「こら。何してんだ?ふぁー。よく寝たー。」



はる兄が思いきり伸びをした。



「はる兄って呼ぶなって何回言えば…。何ちゅー顔してんだよ。」


「ごめんなさい。私が言いつけ守れない娘だから、みきやも嫌になっちゃったのかなぁ。」



「昼飯食ってねぇんだろ?ただ、そのせえじゃねぇの。パンやるから。ほら。」



駅前のクリームパンをくれた。



「それ好きだろ。たまたま買っただけだからな。勘違いすんなよ。」



「ぷっ。まだ何も言ってないのに。ありがと。」



クリームパンは甘くて、はる兄の優しさが伝わって来た。私に甘いからね。



「刹那さん今日来ないの?」



「分かんねぇけど、今いないから来ないと思うぜ。」



はる兄はピザパンを食べてる。美味しそう。


「やらねぇよ。分かったら教室戻れ。」



「やだ。みきやのいない教室なんて意味ないもん。」



「はぁ。次オレの授業なんだけど、ここで堂々とサボる気か?」



「ここでサボる…よ?」



私はしゃがみ込んだ。はる兄もしゃがんで私の顔を覗き込んだ。



「泣き虫華。」



「泣かないよ。泣いてもないもんねーだ。」


「華がサボるなら、オレもサボろっかな。」


私は目を見開いた。はる兄はニヤッと笑っている。



「あー!嘘ついた!」


「ほら、立て。行くぞ。」



腕を引っ張られて、準備室を出て、はる兄は鍵をかけた。



「オレの授業だけは、出ろ。」



頭をコツンと小突かれた。



窓の外を見上げると、青過ぎる綺麗な空だった。みきやも見上げてるかも知れない。



私は空を写メった。



「しょうがないから、準備出ようかな。」



はる兄の怒りの鉄拳は受けたくないし。しぶしぶ教室に戻った。





みきやのいない教室は、いつもの笑い声も何もかも私の心では空っぽに感じとってしまった。まるで、クリームパンなのに、クリームのないただの空洞のあるパン状態。



なら、メールすれば?


返事が来ないような予感がして嫌だよ。



早く電話したら?



『華の声聞きたいと思った』なんてもう、言ってくれない気がして怖い。




みきやはきっと、荒城の事で精一杯のはず。なんか、ただの勘だけど分かる気がする。



明日は、学校来るよね。ただただ、自問自答ばかりをくり返した。





次の日。門を出るとみきやがいた。



「はよー。華。」



私を抱きしめるみきやは、いつもより力強かった。



「おはよ。」



今はまだ聞かない方がいい。みきやの全身から、気持ちが伝わる。


「また四人で、遊ぶんだ。」



「うん。」



ただ、みきやの言葉に頷いていた。ぎゅうっと抱きしめて、私を確かめるようにキスをするみきや。



建物の影に入って、私は壁に腕を押しつけられた。心も腕も苦しい。



「ごめっ…。痛かった?」



「お願い続けて?」



ゴクンとみきやの喉が上下した。みきやの視線が集まる場所が熱くなる。



「はぁー。誘っちゃダメだろ。」



いきなり背中を見せた。私は後ろから抱きついた。



「やだ。私と繋がらないと、離れちゃうでしょ?」



みきやはピタリと動かない。私の手をみきやの手が包んだ。



「電車ごっこ。ガタンゴトンガタンゴトン。」



「もう!ふざけないでよ!」



私の手をみきやの口元に持っていく。私は少し背伸びした。



「俺さ、体が繋がんのは、すっげぇ嬉しいよ。でも、今も華のこと好きすぎて、ほら、心臓スゲーだろ。」



心臓に持っていかれた手に伝わってくる速い音。心地よく私の胸にも響く。



みきやが、ガバっと私に向き直った。



「あんま誘うと、次は最後までヤるかんな!」



「ねぇ。手繋いで学校行こう。」



「しょうがねぇな。」


恋人繋ぎ大好き。違うよね。みきやと繋ぐから好きなんだね。



「華さー。その指の絡め方どこで覚えた?」


「へ?あーこれ。知りたい?」



「…やっぱいい。」



「何よそれー!」



みきやが、もしも刹那さんのグループに入っても、この手は離さない。



私はこの時自分に誓った。

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