キヨ過ぎる青空
忍者か。ってくらいに俺を抱えたまま、宝来は木を越え山越え。
今俺の手元には、契約書?らしき紙がある。
「ここにサインして。」
宝来刹那がめっさニコニコしてます。
「ボスー!また無理矢理勧誘したんか?」
何でいきなり忍者テイスト入ってんだよ。今、男が天井から降りて来た。黒髪だ。俺も黒髪だけどな。
「ちっ。ツルギに見つかったか。」
「いい加減、連れ去る癖なくさないとヤバいとよ。よく捕まらんよな。」
「ここどこっすか?」
「オレんち。」
この忍者屋敷が家…。
「いいっすね!」
「だろ?ってことでサイン。」
「いかんよ!簡単にサインしたらいかんとよ。兄ちゃんが連れて帰ってあげるからな。」
…すいません。アナタの方が怪しいです。
「ツルギは一様、オレの右肩だから。」
「右腕やないんかい!?」
「何か楽しそうっすね。レインとの争奪戦いつなんすか?」
きっとそこにキヨは来るはず。
「あー。それだけは企業秘密。教えるとしたら、サインしてシャインに入ってからだね。」
「明後日。この近くの河原で。帰る道を案内するからおいで。簡単に変なおじさんについて来たらいかんよ。」
「ツルギ!おまっ。何勝手に言っちゃってんだよー。いいとこだったのに。ブーブー。」
あからさまにブーイングする人初めて見た。手も親指下の向けてた。こんな人がボスでいいんだか。まぁ、関係ねぇけど。
「今のうちに行くと。」
「イクト?」
次の瞬間、おんぶされた。だから、俺そんなに軽くねぇし!
「マジはーなーせー!」
「つかまらんと、首なくなるとよ。」
「ぎぃやぁぁあ!!」
「ツルギ待てー!」
待て待て待てー。俺…姫的ポジションじゃないよな。…しばらく想像中…。
「ちょっと頭伏せてなー。」
ドゴッ。
「アッハハ。遅かったか。」
このナマリ男ぜってぇわざとだ。木の枝に顔面直撃した。痛すぎて声も出ない。
「失明したらどうすんだよ!」
「よーし。着いたとよ。」
「シカトすんな!」
いきなり頭の髪をガシッと掴まれた。
「あー見えて、ボスは勧誘率100%なんやよ。覚悟しいや。」
「いっでぇ!!髪が抜ける!」
「お前のどこがええんか分からんけど、ボスが仲間に入れたいんなら…。」
予告無しに手を離され、思わずこけかけた。その間にいなくなっていた。そしてここは、決戦のある河原。
「アイツ案内しやがった。」
流れる川は、青空を写してまるで海みたいな青だ。
あのナマリ男何考えてんだろ。宝来とかアイツみたいに、キヨをさらえたら良いのに。
「…幹也?」
まだ数日しかたってないのに、もう10年以上会ってない気がした。声が懐かしすぎる。
「キヨ…。」
困ったようにキヨは笑っていた。
「幹也に見つかるなんて、オレもまだまだだな。」
「怪我だらけじゃねぇか!」
「ははっ。男の勲章だよ。」
寂しそうに笑うキヨ。河原はゴツゴツしていたけど、キヨは俺の隣に座った。
「空がスゲー綺麗だな。」
「寝るなよ。汚ねぇな。」
「まぁな。頭に石が当たっていてぇし。」
俺も寝転がった。青い空が目ぇいっぱいに広がる。
「学校サボってんじゃねぇよ。」
「じゃあ何で幹也はここいるんだ…よっ。」
肘で脇腹をつつかれた。なぜか目頭が熱い。ゴツゴツと石が当たるからだ。
「いってぇな。俺は真面目くんだから、ごほうびだよ。」
「んー!オレも青の一部になりてぇー!雲になって漂うのも良いかな。」
キヨが体を起こして気持ち良さそうに背伸びした。キヨを見つけたら聞きたい事たくさんあったのに、何もなかったかのように隣にいる。
「ツルギに連れて来られてたな。シャインに入ったのか?」
俺は寝転がってるから、キヨの背中しか見えない。急に現実に戻された。
「キヨの言うスカウトだよ。アイツら忍者だったのか?」
俺も座った。隣を見ると、キヨは泣きそうな顔をしていた。きっと本人は気づいてない。
「キヨ?」
「何かオレの顔おかしいや。いっつも幹也には振り回されるんだよな。オレが振り回そうと頑張るのに、天然の小悪魔だろお前。」
「…何の話だ?」
ガッ。と頭突きが来た。さすがにくらっとした。俺空手部だぜ?今日…反射神経死んでるよ。
「…った。石頭!」
「幹也!明後日には決まるよ。じゃあな。」
クラクラしてる隙に、キヨは帰って行った。キヨは、明後日ここに来る。キヨを見たら、邪魔しちゃならない気がした。
あんな緊迫したキヨ初めて見た。
「…だからここどこだよ。」
家に着いたのは、三時間後だった。服はボロボロの私服のまま帰ろうとして、光に呼び止められたのは言うまでもない。
光に強制的に、風呂に入らされた。
「何があったか分かんないけど、家族心配させたらダメでしょ。」
「ん。今日キヨと会った。」
ガッチャーン。俺の水…。光が俺に渡そうとした水を落とした。
「何ですぐ言わないの!マサにも電話しないと!」
珍しくあたふたする光。
「マサには言わないでくれ。」
「は!?」
携帯を片手にすげぇ睨まれた。俺はかくかくしかじかと説明した。割れた破片をかたずけながら、ため息をつく水田光くん。
「だからこんな時間に私服だったんだね。華さんとかにも言ってないでしょ。」
「まさか、連れ去られるなんて思わねぇだろ!」
「…。」
「おい。目ぇ据わってるぞ。」
本日二度目の盛大なため息来た。
「もう僕は知らないよ。マサに言わないのは納得いかないけど、マサも決戦に行くって言いそう…いや、言うよね。僕は行かないけどね。」
「あぁ。光ならそう言うと思ってたぜ。」
ソファーでふて寝する光。
「じゃ、夕飯ちゃんと来いよ。」
「分かってるよ。おかず頂戴ね。」
こうして、水田サンちを出た。光は本当は、行きたいんだよな。俺のフォローとかしたいと思う。…場所言わなくて良かった。
夕飯で唐揚げを半分以上取られたのは痛かった。