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チュッと鳴るキス

部活に華が顔を出さなかった。いつも欠かさず見に来てくれてたのに、心配だ。



教室に戻ると、華は俺の席で眠っていた。



「ったく。無防備なお姫様だ。」



前の席にまたがり、華の様子を見た。気持ち良さそうに眠っちゃって、俺を待っててくれたのか?わー。めちゃくちゃ可愛いい。



「んっ…。ひゃっ!みきや?」



「何で俺の席で寝ちゃってんだ?」



まだ寝ぼけてる華にデコピンした。目をぱちくりさせている。



「今日、先生に呼び出されて空手部に行く暇が無かったの。みきやの席に座ったらうとうとしちゃって、そのまま寝ちゃってたみたい。」



「『寝ちゃってたみたい。』じゃねぇだろ。襲われたりしたらどうすんだよ。」



「何その裏声!似てないもん。…襲う物好きなんてみきやだけだよ。ばか。」



「あー華が照れてる。しかもほっぺ痕ついて赤くなってる。」



華の右頬に触れた。



「えっ!どうしよう。恥ずかしい。」



「華…大好き。」



チュッ。とわざと音をさせて唇にキスした。


「やだ。みきや…いなくなっちゃうの?」



潤んだ瞳で見る華。



「こら、まだ寝ぼけてんのか?どこも行かねぇよ。」



「ほんとに?約束してくれる?」



「…あぁ。こんなに大好きなんだぜ?離れる理由なんてねぇだろ。ほら、帰るぞ。」



最後らへん目をそらしてしまった。嘘なんてついてねぇのに。



「私…聞いちゃったの。刹那さんが自分から言ってきたんだけど、私…邪魔するなって言われた。」



「…宝来の言葉なんて信じたのか?デタラメに決まってんだろ。」


「嘘つき。」



心臓がとまるかと思った。まるでナイフで刺されたみたいに胸が痛い。



「いつまでもそうやって拗ねとけよ。俺帰るわ。」



俺は走って教室を出た。これ以上、華と一緒にいたら八つ当たりしそうで、優柔不断な今の俺自身に腹が立ってるのに華まで巻き込みたくない。





「幹也くん。路上でつっ立たれると迷惑なんだけど。」



考え事ばっかしてたら、足が動かなくなってたみたいだ。



「…たまたまだよ。光に言われたくねぇし。」



「いったん、僕の家で頭冷やそうか。」



「いつも悪いな。」



「うわっ!気持ち悪いからあやまんないでよ。うげぇ。」



うげぇ。とまでは行かねぇだろ。と笑いながら、そのまま水田サンちに行った。



「はい。」



「冷やす。で氷水ってそのままかよ。あ、でも気持ち良い。」



「リラックスしなきゃね。今は聞かないであげるけど、だいたいは何絡みか想像つくよ。」



俺は光んちのリビングのソファーに寝転がった。氷水をあてると、不思議と気分が落ち着いてくる。



「最近寝不足なんでしょ?ちょっとは寝たら?」



「…ん。さん…きゅ。」



バサッとタオルケットをかけられた。それから、すぐに眠りについた。






「みきや、行かないで!」



これは夢だって分かってる。今の俺にはキツイ。そんな泣くなって。…華の洋服が薄くなっていく。



「だぁっ!」



俺は、目を冷ましたと同時にガバっと起き上がった。



「幹也くんエロい夢でも見た?」



アイスをなめながら、冷たい目で俺を見る光。



「まだ、エロくはねぇよ!阻止したし。ちっ。最後まで見れば良かったぜ。」



「すっきりした顔してるから良かったよ。こっちまで被害が及ぶところだったよ。全く。」



「えー!?自分に被害が来ない様にだったのかよ。さすが光。」



フッと余裕の有る笑みをされた。早く言えば、鼻で笑われた。




さすがに明日には、宝来刹那に返事しないといけない。俺の心は決まっていた。



「お兄ちゃん。ハンバーグもらっていい?」


「良いワケねぇだろ。あ!光!食べやがったな!」



「もぐもぐ。さっきのリラックス料だよ。」


母さんも父さんもただ笑って見ていた。



この暮らしを変えようなんて思わない。






とある大学。俺は学校をサボってまでここに来た。さすがに学ランはヤバいから、公園で私服に着替えた。



「吉井幹也。ほんとに来たんだな。」



入り口付近をウロチョロしてたら、宝来刹那に見つかった。いや、見つかって良かった。


「返事をしに来ました。」



「今日の昼休みも、そっちの学校行こうと思ってたのに。」



「よくも華に余計な事言いましたね。」



俺が睨みつけても、クスッと余裕の笑みを見せる。いかにも的なダテ眼鏡が腹立つ。



「華ちゃん、体当たりして来そうじゃん?華ちゃんに言われたら、挫けそうだもんオレ。」



「…返事はノーです。仲間にはならないし、あなたのチームには入りません。」



「一人で解決します。って言いたいんだろ?甘い。君はハチミツだ。」



ハチミツ?ボスは変わりもんが多いらしい。


「そんな目で見るなって。ハチミツはもちろん例え話。知ってるとは思うけど、向こうの連中は日本刀を持ち歩くクレイジーなヤツらもいる。」



「宝来の仲間にも、ナイフとか持つ奴らはいんだろ。」



「目には目を歯には歯を。って言葉知らねぇの?ってことで仲間になってくれるんだな?」



「それで、よく死人出ねぇな。話聞けよ。仲間にはなりませんから。」



俺は大学を出ようとした。



ヒュッ。



すぐには、帰してくれないようだ。宝来の武器は、透明な紐。今日は天気が良いから、透明な紐が反射してどうにか避けた。


「オレの目に狂いは無かった。」



「何でそんなキラキラした目で見るんすか?だから、仲間にはなんねぇよ!!」



俺はしばらく追いかけられた。男に追いかけられても全く嬉しくない。



「だから、不良グループなんて俺には無理!」



足を引っ掛けられ、転ぶ。端から見れば何もないところで転ぶマヌケな男だ。



「つーかまーえた!」


「ぎゃー!」



俺は軽々と担がれ連行された。



どうなる俺!

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