表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/43

別れと始まり

家を出たら、キヨが待ってくれてた。



「キヨ!」



「未来。しばらく会えないから会いに来た。」



「待って!もうボスとはケリをつけたって、言ってたじゃない!」


キヨのシャツの裾を掴んだ。このまま離したら、もう戻ってくれない気がする。



「知ってた?オレ思った以上に欲張りなんだ。」



後ろ姿だから、顔が見えない。でも、はっきりした男らしい言い方だった。


「未来、愛してる。」



キヨは振り返ってゆっくり、キスをした。スローモーションみたいで、久しぶりのキスは、切ない別れの味がした。




「ばーか。泣くなよ。プロポーズはしに来るからさ。」



「っ…バカはっ…キヨでしょっ…?他のっ…良い男と…結婚するんだからっ!」



「くっそー。あんま可愛い事言うなよな。」


私が最後に見たキヨの笑顔は、大好きな彼らしい、はにかんだ笑みだった。






『レイン』と『シャイン』は、この町から消えた。俺とマサと光は、毎晩歩いて聞き込み調査をした。



「実は、兄貴は隣町の高校に編入するんです。」



「はぁ。何で黙ってたの?僕たちムダ足じゃん。」



「あんま、ふざけた事言うな。早く探そうぜ。」



冗談なんかじゃねぇって分かってた。昨日、キヨが会いに来たから。夢だと思った。夢なら良かった。






夕べなんとなく眠れなかった。いきなり、キヨから電話で公園に呼び出された。



「よ。久しぶり。」



いつものキヨで、拍子抜けした。



「よ。じゃねぇよ!みんなにどんだけ心配かけてるか知ってんのか?…元気そうで良かった。」



「オレ、しばらくここ離れるから。唯一のダチには、知らせねぇとと思ってさ。」



「あんなに受験頑張ったのに、離れて高校どうすんだよ。」



「隣町に行く。編入試験ちょろかったんだぜ。受験頑張って良かった。」




いきなりキヨが拳を突き出してきた。



「いつこっちに戻れるか分かんねぇけど、ダチでいてくれるか?」


コツン。と俺も拳をあてる。



「俺はもう、一番のダチのつもりだぜ。」



「まーた、かっこつけやがって。」



その後は、バカ話で盛り上がった。会いに行こうと思えば簡単に会えると思ってたんだ。






人との出会いは、別れる為にある。なんて、誰かが言ってた。立川先輩とは、短い付き合いだったけど別れる時は、切なくなった。キヨとは、隣町だし電車ですぐ会える。だから、別れなんて言わねぇんだ。



「みきや、荒城ほんとに転校したんだね。」


「隣町だし。近いだろ。」



「だといいけど。チャイムなっちゃった。席に着かなきゃ。」



華は、自分の席に戻った。華までどこかに行ったらどうする?絶対連れ戻すに決まってる。現実は、ドラマチックにはいかないよな。


後ろから、シャーペンでつつくヤツはもういない。自然とため息が出る。



「吉井ー。先生の授業そんなにつまらないか?黒板の問題解け。」


「げー。はい。」



ヤバ。古典だ。華が小声で答えを教えてくれた。



「正解。次は自分の力で解けな。」



キヨに助けられてた部分結構あったんだ。





昔使われてた小学校の音楽室。



「いいか。ここからは無理強いはしない。まぁ、いつもしてるつもりは無いが。」



どっと笑いが起きる。


「ヒノトリとオレの争いにお前らを巻き込むのは、これで最後にしよう。これからは、『シャインレイン』それがオレ達のチーム名になるんだ。」



『おー!』と男たちの雄叫びが校舎に響き渡った。



キヨは一人、窓の外を眺めていた。ここでの最後の夜を噛み締めるかの様に。






とある建物の地下室では、真面目そうな男達が会議をしていた。



「もう、真面目なフリは疲れただろ。もう一度あの頃みたいに暴れてやろう!『シャインレイン』の名はオレ達がとる!」



男たちは雄叫びの変わりにダデ眼鏡を投げた。



まさか、さわやかサッカー少年が、この中にいるなんて誰も想像してなかっただろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ