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光の好きな人


「デッレデッレぇー、デッレッデッレー。」


「幹也くん。華さんにデレデレなのは分かったから、変な歌口ずさまないでよ。しかもクリスマスソングまがいだよね。」



俺は光が勉強してる横で現国の宿題の漢字を書いていた。ちなみに今のは俺の鼻歌だから深い意味はない。



「鼻歌は頭をリフレッシュする効果があるらしいぜ。」


「それ幹也くんが今考えた理論でしょ。」


「よし、あと少しだ。」


「あー、今逃げたね。問題です。そんな幹也くんですが、1ヶ月記念日に彼女に何をしてあげたでしょうか?」


「華に花をあげた。」

「…マジ?」


「ちょっと明らかに引くなよ。」



光は出口までズサッと体を引いていた。



「ダジャレとか無いだろ。いくら隠れ硬派な幹也くんでも、ギリギリアウトだね。」


「花屋に行って、片手で持てる小さなサイズの花束作ってもらったんだぞ。花言葉も花の名前も知らねぇから、『幸せになれる様な花言葉の花、束ねて下さい。』ってハズいセリフはいたんだぜ?」



「…僕は何も聞かなかった。次は、数学しよう。」


「ネットで花言葉調べて万が一家族に履歴見られてみ?俺キザだと思われるだろ。」


俺を無視して、黙々とシャーペンをスラスラ動かしている光。自分から問題とか言っといて腹立つなぁ。



「その後プリクラ撮った。俺あんまり好きじゃねぇけど、いい思い出になったな。」


「そういえば、元カノとチュープリとってたよね。華さんとはとらないの?」


「さぁて、どうだろな?俺も数学しよう。」

光の部屋で宿題した方がはかどる。殺風景で誘惑が少ない部屋だからだろう。


「おかしいな。僕の解き方が間違えるハズがないんだよね。」


「自信満々だなおい。あー、単純ミスだな。ここんトコ計算ミスしてる。」


「本当だ。どうも。」

「どうもってなんだよー。あ、光が照れてる。」


「違うよ。幹也くんこそ、そこ間違えてる。」



「二人とも何イチャイチャしてんの?気持ち悪い。」

雪が入り口に立っていた。


「雪ちゃんとチャイム鳴らせよ。」


「…何か変なコトでもしようとしてた?」


「僕はちゃんと女の子が好きだから。大丈夫!」


「お。雪も勉強しに来たのか?」



「うん。教えてー。」

さっきまで、ホモ疑惑かけて来たのに、変わり身早いなぁ。さすが俺の妹。雪を教えるのはどっちだ!を決めるためにジャンケンした。俺が負けて教えるコトになった。



「今数学してるから、数学だせ。」


「はーい。」


数分後。


「この公式覚えろってこの前も言っただろ!全っ然やる気ねぇな。」


「たまたま忘れただけだもん!今暗記したよ。」


「じゃあこの応用問題解け!」


「こんくらい楽勝だもん!」



「二人とも自分ちでやってよね。まぁ、僕は問題集一冊終わったけど。お先に休憩するね。」


光は一階におりていった。光は問題集を1日一冊解くとか目標にしてる。結局どこ高行くんだか。


「お兄ちゃんできたよー。」


「お!やれば出来んじゃん。」


「アイス食べる?」


光が戻って来た。


「食べるー!ありがとー光ちゃん!」


「さんきゅ。俺バニラがいい。」


「はいはい。雪はイチゴ味で幹也くんはバニラ味ね。ちなみに僕はコーヒー味。」



「生きかえるー!」


「冷たくて気持ちぃー。」


「ははっ。オーバーだよ。他の人に餌付けされないでよね。」



二人に聞きたいコトはある。でも呑気な二人の顔を見たら、今はその時じゃないかなと思った。


「お兄ちゃんこぼれるっ!」


「うあっ。危ねっ。」

「ちょっと僕の部屋汚さないでよ。」



そんな俺たちの日常は、永遠だと感じていた。まだガキで、バカで、くだらない毎日は短い青春の1ページに過ぎないなんて、知るわけなかった。


「現国の作文のテーマは…『青春』か。やっぱ部活のコトを書くしかねぇな。」


「なんで?華さんに花をあげたって書けばいいじゃん。」


「お兄ちゃんキザだったんだ。ブラコンの上にキザ男…最悪。」


「華は可愛く喜んでくれたんだよ!お前らに分かんなくてもいいし。」



俺は下書きを始めた。雪は光に教わっている。ケンカしない時は穏やかな二人。光と雪の勉強からケンカに変わる時といったら、漫才なみの勢いだ。


「光。眠くなってきた。ベッド借りる。」


「うん。分かった。後で起こすよ。…で、このXに代入して。」


「ほんとだー!」



賑やかな声を聞きながら俺は眠りについた。


夢の中で、俺は華と追いかけっこをしていた。場所は、見たことのない広い草原。いくらなんでもメルヘン過ぎる。でもこんな夢を見るくらいだから、今は追いかけっこだけでドキドキするくらい華が好きなんだろうな。



ドゴッと頭上の音で目が覚めた。


「幹也くんやーっと起きたね。」


辞書を片手に光が俺の顔を覗き込んで来た。

「あれ?雪は?」


「先に帰ったよ。」


「お前その手に持った辞書を頭に落とそうとしただろ!っつーかギリギリに落としただろ!」


「へ?こんなトコに辞書が。変だな。」


3時間も寝てたらしい。光のベッドは寝心地が良いんだよな。


「幹也くんHな夢見てたでしょ?」


「はぁ?」


「はなぁー。はなぁ!とか幸せそうに叫んでたよ。」


「ちっ、ちげぇよ!バカ。ピュアすぎる夢だ!」


「はいはい。ピュアとか似合わないから言わないで方がいいから。僕なら何でもアリだけどね。」


「光のがピュアじゃねぇし。ピュアなハートがふるえーる」


「ナンとかの愛のシゲーキ。僕、歌詞忘れた。幹也くんご機嫌だね。」


「俺ってやっぱ、意外とロマンチストだって分かったんだよ。」


「どのへんがー?」


「このへん全部だよ!コイツー!」


「タンマタンマ!」



光にヘッドロックを決めた。光んちに泊まるコトになった。

「僕好きな人ができたんだ。」


「いきなりその話?」

「心って意外と簡単に癒えるんだね。」


光と恋バナなんて久しぶりで、あっと言う間に夜が明けた。


心の傷が簡単に癒えるなんて俺は思わない。光は好きになった人は、スゲー努力して光を振り向かせたに違いない。少し前までもう恋なんてしないなんて言ってた光が、簡単に心がわりするハズがない。光のコトだから、相手の気持ちには気づいてたんだろうな。


「光の好きな人今度紹介しろよ!」


「ちょっと今やっと寝かけてたのに、大きな声出さないでよね。すぐには紹介しないよ。」


「あっそ。そんなに見せられない様な人なんだ。」


「その反対。幹也くんに惚れられると困るからね。」


「バッカじゃん。アホらしー。寝よ。」


なんて言ったけど、一歩踏み出せた光に安心した。人にすぐ壁を作る癖がある光だから、好きになるってよっぽどなんだと思う。



「…ごめん。」


光が小さな声で何か呟いた。寝言かと思って俺はスルーした。ごめんの深い意味が、俺にはまだ分からなかった。俺は呑気に光の成長に喜んで、いつか紹介してくれるんだろうなとか期待してた。



まさか、光の好きな人があの人だなんて全く想像してなかったんだ。3日後の部活帰りに目撃するまで、1ミリも…。



「…花音さん。」



まさか光が俺の元カノを好きだったなんて、嘘だ。でも光のあの熱っぽい眼差しは恋をしてる顔だ。いつから、会ってたんだろう。まさか、俺と付き合っている当時からいつも会ってたのか?そういえば光、花音さんを見たってしょっちゅう言ってたな。



「だから紹介できないわけか。」


俺はむなしく呟いた。

光から見たら、まだ俺が引きずってるみたいだったのかよ。


また一つ光に聞きたいことが増えた。

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