表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

名探偵ヒカルと助手のミキヤン


「あー!思い出した。」


「何だよ急にデカい声出しやがって。」


「僕、雪から相談のってた時期あった。『年上のショップ店員』がどったらって。」


「おい。どったらじゃねぇだろ。」


「駅前にティアラって店あるでしょ。雪毎日通ってた時期あったらしくて。」



俺たちは、その店に向かった。


「いらっしゃいませ。」


「あ!あん時の。」


小さい紙袋を雪に渡してって言ったヤツ。頭を下げてきた。


「幹也くん知り合い?」


「微妙。」


「雪ちゃんは元気ですか?」


短髪で爽やかな男。この笑顔で女ならみんなイチコロになりそうだ。


「あんたさ。今も雪と会ってるだろ。」


「幹也くん抑えて。」

俺が睨んだのを気にもとめず、にっこりと笑いかけてきた。


「あなたに袋を渡してから、関わってません。」


「いきなりすいませんでした。」


光が頭を下げて、俺を引きずって店から出た。


「幹也くんあれは、いくらなんでも失礼過ぎるよ。僕もあの笑顔にはイラッとしたけどね。」


「大人の余裕…か。」

「そういえば雪、あの人に恋愛感情はないって言ってた。」


「はぁ?来る前に言えよ!」


「さっきの幹也くん面白かったなぁ。オラオラ系っぽくなってた。」


「なってねぇよ!」


ショップ店員と何もないなら、樹が怒ったのは何でだよ。何だかんだで、樹は俺と華がケンカした時仲直りさせてくれたし。まぁ…いいヤツだから。



「樹んち突入する?」

「だーかーら、俺の彼女の家でもあるんだよ。光、楽しんでるだろ?」


「ちょっと探偵気分?」


「最低だな。こっちはマジなのによー。」


「幹也くんは、さっきから力みすぎだよ。もっとリラーックス。」

やたらと発音がいい光が笑えた。確かに今の俺はキレやすい。


「樹に会っていいのか分かんねぇよ。雪が嫌がるかも知んねぇし。」


「今さらだねー。このままじゃ、雪が非行の道まっしぐらだよ。お兄さん。」


「このパターンだと、良かれが悪かれだぜ。ガキん時も雪に怒られたろ。」


「『私は一人で大丈夫だから、余計なことしないでよ。』でしょ。雪はやたらと呼び出しくらってたからね。」

「俺たちは、ただ守りたかっただけなのによー。」


「僕たちのせいで、エスカレートしてたからね。」



「だから女は分かんねぇ。」


「分かんねぇ、か。まだ、分かんなくていいんじゃない?」


「そうだな。」



樹が急に立ち止まった。


「キヨさんち行っていい?」


「めんどいな。一人で行けよ。」


「ほら、マサも情報通なんだよ。」


…何か、上手く丸めこまれてるっつーか。


「はいはい。分かったよ。」



古着屋に隣接する家の門を開ける。



「幹也さん!光先輩!」


子犬みたいなマサが玄関から出てきた。


「マサ香水つけすぎ。甘ったるい香りだな。」


「僕があげたんだよ。ねぇ、マサ。」


「はい!ありがとうございます。」



こりゃ忠犬ハチ公だな。マサが尻尾をふってる様に見える。マサは光に憧れてたりする。


「光か!オレのマサをこんなにしたのは!」

店からキヨが出てきた。さすが地獄耳。キャラ違うし。


「ども。キヨ先輩は相変わらずピョコンって前髪決まってますね。」


「これセットに時間かかるんだよ。自然な仕上がりだろ?」


光のペースにハマったな。


「兄貴ダサいって言ってんだろ。」


「マサも似合うかもね。」


光のせいで明日からマサもキヨヘアーの餌食になる。


「マサはこのふわふわな髪が似合うよ。」


「先輩!」


はいはいやっとけ。


「みっきー、海早く行こうぜー。仲直りしたんだろ?」


「さすがキヨ。情報はやっ!行きてぇけど、土日以外朝練なんだよ。」


「オレも朝練行ってるし。じゃあ今週の土日な!」


土日じゃ…夏休みの意味なくね?ってか他の二人ねキヨスケジュール把握済みかよ。


「お前に似合う服あるんだよ。見る?」


「見るだけな。いっつも、すぐこずかい無くなるんだよ。」


キヨの後に続いて店に入った。オシャレなキヨのおじさんとおばさんに挨拶した。


「幹也くん久しぶりね。」

「部活が忙しくて。」

「キヨも最近頑張ってるのよ。」


「母ちゃん余計なこと言うなよ!」


「じゃ、ゆっくり見てね。」


若い母ちゃんだなぁ。うらやましい。


「これこれ。このチェーンオレがつけたんだよ。」


「へぇ。スゲーな。このボタンも?」


キヨはジーンズをアレンジするのが趣味で、仕上げはおじさんがするけどなかなかの腕前だ。世界に一つだけってのがいい。



「どうスか?お客さーん。」


「…ちょっと俺には派手かもな。」


「幹也は、黒とか白とかしか着ないからなぁ。こんなのも似合うと思うぜ?」


「うーん。絶対これマサに作っただろ。」


「はは。ばれちゃった?」


「最近反抗期だから、着ないってところか?」


「鈍い幹也が鋭くなった!ピンクとか黄色とかカラフルすぎんだよ!だとー。ぼくちん、嫌われちゃったよ。」

「雪も反抗期なんだ。マサと関係あったりしてな。」


俺たちはそれは無いだろと笑った。






これは、お兄ちゃんが指輪を受け取って、私に渡してからの話。


私は樹くんに指輪の話をして、『ちゃんと自分で返す』って言った。『僕もついていくよ。』この言葉を貰えて、最初は嬉しかった。でも、信じてくれて無いんだって思う自分がいた。



「僕がついて行ったら迷惑なんだ?やっぱり、やましいことがあるんじゃないか?好きなんだろ。あいつが。」

「何で私一人で行っちゃダメなの?信じてよ!私を信じて!」


「信じられないよ。しばらく距離を置こうか。」



去り行く樹くんを、ひきとめるのも怖かった。信用できないなんて付き合う意味ないもんね。


私は結局、学校の帰りに指輪を返しに行った。意外とあっさりしてて、樹くんとの言い合いが馬鹿みたいに思えた。



「あの。」


振り向くと、子犬みたいな目のくりくりした男の子がいた。


「ポチ。」


私は思わず呟いた。


「はい!よく言われます。」


変わったこだな。


「なんか用?」


「雪先輩ですよね!光先輩といつも一緒に帰ってる。」


「光ちゃんの知り合い?」


「はい。光先輩は憧れなんです。」


「君、明るいね。」


「先輩もいつもは、太陽みたいに元気じゃないですか。あんまり話したことないのに、変だけど、オレで良ければ話聞きます!」



あまりにも必死なポチに、私は。


「ぷっ。あははっ!最高!」


爆笑した。


「笑うことないじゃないですか!」


「ごめんごめん。あまりにも可愛くて。」



これがポチ、いや、荒城マサとの出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ