表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/43

おとぎ話


「お会計、五千百円です。」


「はい。」


「ちょうどですね。」

近くの本屋さんで、エッチな漫画大人買いしちゃった。全部樹に取られたからってのは2割で、8割はストレス発散。買う時のスリルが癖になる。


初めて読んだ時、体がずくんって熱くなった。でも、今は読んでも、読んでも何も感じない。


エッチな漫画を見るよりより、みきやと一緒にいたい。比べられないほどのときめき。キスするだけで心臓がとまるかと思った。有野先生の話を思い出した。


「華がエロ漫画読むのは寂しいからだろ?」

「寂しい?」


「そう。人は孤独を感じれば肌を寄せ合う。相手がいないから漫画ってワケ。」


「セクハラオヤジ。」

「ガーキ。」



寂しいって、ぽっかり心に穴をあいた様な感じ。その心を埋めるために、漫画を買ったのかも知れない。


携帯を見るのも辛い時とか、わざとリビングに置いて漫画読むの。現実逃避ってずるだけど、私なりの心のクッションだから必要なんだ。





むかーしむかし。鈍感な王子様がいました。王子様は、他の国のお姫様たちからアプローチされても気付かず、王様とお妃様は心配していました。


しかし、王子様には誰も知らない秘密があったのです。それは、使用人の娘に恋をしていることでした。そうです。王子様は本当は、他のお姫様の気持ちに気付いていたのです。気付かないふりをして、遠ざけていました。

両想いになれたのですが、現実は甘くなくお妃様に見つかり使用人の娘は辞めさせられまし…。


「ばかみたい。」


シャーペンを置いた。こういう場合、使用人が綺麗になってハッピーエンド。使用人の娘=元カノ。合宿終わってるはずなのに、会いに来てくれない。宿題はむなしくどんどん減っていく。

漫画の残りは宿題終わってから読むことにした。



「姉ちゃん携帯忘れてるよー。」


「げーんちゃん。実入っていいか聞いてから開けるって約束でしょ。…ありがとう。携帯そこにおいといて。」


「ぼくも早く欲しいなぁ。黒の携帯にするんだ。」


「…無い方がいい時もあるよ。」


「ぼくにはまだ分かんないなぁ。だって持って無いもん。」



弦から見れば贅沢な悩みか。携帯をスライドさせた。未来ちゃんから着信有り。


「姉ちゃん。後で、マカロン作ってね。」


部屋から出て行く弦ちゃん。電話かけるって分かったみたい。さすが私の弟。



《はぁい。》


「ごめんちょっと手が離せなくて。本当は宿題してたんだけどね。」


《こらぁ。海どうする?》


「今ちょっとケンカ中なの。実は、みきやの合宿の時ケンカしちゃってさ。」


《えっ!応援がどうやったらケンカになるの?今から会おう!》


「今から?良いよー。」




クレープ屋さんで待ち合わせ。暑いからノースリーブの淡いピンクのワンピースを着た。


「お待たせー。そのワンピ可愛いね。」


「未来ちゃんの胸元のリボンすごいカワイイ。」


「って、本題に入るね。ケンカってどゆこと?」



大まかに話した。『空手に集中したい』って言われたこととか。



「それはヒドイね。」

「うん。」


「でも、たまに男らしいよねよっしー。」


うっとりする未来ちゃん。


「未来ちゃんみきやは私の彼だからね。」


「あはは。冗談だって。でも、意見はっきり伝える人嫌いじゃないかなー。」



未来ちゃんは、私より長くみきやと一緒にいたんだ。それが友達としてだとしてでも、まだ私が知らないみきやを知ってる。ちょこっと妬けるかも。


「私がキヨとケンカするのは、いつもキヨは『いいよいいよ』って私を甘やかすでしょ。それで、だんだんとエスカレートするから我慢するキヨがキレるってパターン。まぁ、私が気持ち確認するために、オーバーな甘え方するのが悪いんだけどね?」



美味しそうにイチゴを頬張る未来ちゃん。付き合いが長いとケンカにもパターンがあるんだ。



「あ、そのチョコちょうだい?」


「いいよー。」


マジだ。私自然に『いいよ』って言ってる。恐るべし甘え上手!


「えっちした?」


「はっ?はいー?」


「せっくす。」


バナナを食べながら言って欲しくなかった。

「まだだよ。」


「体で繋ぎとめるってのも悪くないかもよ?」


怪しげに笑う未来ちゃん。


「んー例えば、まずは指を絡めて、足を絡めてー。」


「ストップ!ストーップ!まだ昼間です。姉さん。」


「唇を絡めて、」


「私、知識はあるから大丈夫だよ。」


「初めてかぁ。個人差はあるよー。」


食欲失せてきた。プラス未来ちゃんがセクシーに見えてきた。荒城はこの罠にかかったんだね。



「なんて、体の繋がりなんてすぐに終わるよ。だから、華ちゃんはゆっくり、よっしーに任せてね。」


未来ちゃんは一瞬泣き出すかと思った。皆、濃い恋愛してるなぁ。私には、まだまだ経験不足で、不謹慎だけどちょっと憧れちゃう。



未来ちゃんの携帯が鳴った。今ヒット中の恋愛映画の主題歌。私は歌手の甘ったるい声が苦手。


「キヨからだ。メールだから大丈夫。」


「荒城って意外と束縛激しいんだね。」


「ううん。私が縛るんだよー。」


「シバル?」


「そ。し・ば・る。私の部屋ではキヨを縛ると安心するの。どこにも行かないって信じられる。」



どうしよう。話がヤバいよね。縛るって…えすえむ的な?監禁して安心?いやいやいや、目の前の美人さんが危ない事をするワケないじゃん、ねぇ?


「あの人見たー?豚のTシャツ着てたよね。」


何か女王様みたいに見えるのは気のせい…だよね。私の漫画趣味なんてまだカワイイ。



「縛るって詳しくは分かんないけど、繋ぎとめたい気持ちは分かるよ。」


「教えてあげようか?」


「遠慮するよ。私の場合、赤い糸をお互いの小指に結びたいなー。」


「なんてっ!純粋なの!」



体を繋げても純粋な人は純粋だと思う。未来ちゃんは純粋過ぎて、荒城への気持ちがそうなっただけなんだよね。



カラオケに行く途中、未来ちゃんはナンパされまくってたけど、断り慣れてた。あのマシンガントークをかわせてたのが、とにかくすごかった。



「カラオケ次は四人で来ようね。」


「うん。」



まずは、みきやくんと仲直りしなきゃね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ