おかえりなさいませ
「お、おかえりなさいませ。ご主人様」
「違う!もっと笑顔で!」
「おかえりなさいませ。ご主人様」
「だからもっと笑顔で!」
「す、すみません……」
イナンナが勝手に応募したのは喫茶店。しかもただの喫茶店ではなくいわゆるメイド喫茶と言われるやつ。
「あんたルイだっけ?ほんと笑顔下手ね」
そう言ってくるのはこの店のオーナーであるフロットさん。見た目は凄く綺麗で仕事が出来る凄い人なんだろうけど……なんか怖い。それにさ、仕方ないじゃない。笑顔でいた事なんて記憶にないんだから。どうやれば良いかなんて分からない。
「全く……ちょっと見てなさい」
そう言いフロットさんは眼鏡を取り、こっちを睨んできたかと思えば満面の笑みで
「おかえりなさいませ。ご主人様♡」
言い終わるとすぐにいつもの表情に戻り
「これくらい出来なさいよね」
そう睨みながら言ってきた。
「うわ……怖っ」
「あっ?なんか言ったか?」
「い、いえ!」
やっぱり怖いよフロットさん。
「逆にさ、全く笑わないって出来るの?」
「た、多分」
「ちょっとやって見せなさい」
えっと……。
「おかえりなさいませ。ご主人様」
そう試しにやってみるとフロットさんは何かに納得したようで
「ルイ。あんたはそれで行きなさい」
「は、はあ」
そしてフロットさんは手元に持っていた紙に何かを追加し
「明日までにこの設定覚えてきなさい。明日は朝9時に店に来なさい」
「わ、分かりました」
そう言い紙を受け取る。
そして夜。街外れの人気の無い公園に私とイナンナは居た。
「じゃールイー。スキルの勉強ーしましょうねー」
「それどころじゃないよ!」
「もー、何ですか?」
「これ見てよ!」
「えっとー………いいじゃないですかー。私ー好きですよー」
「ちっとも良くない!」
このクソ女神……。絶対楽しんでる。
「明日がー楽しみーですねー」
「イナンナ店に来る気!?」
「当たり前ーじゃないですかー」
「は、恥ずかしいんだけど」
絶対あれやらせるつもりだ。
「それよりもースキルですよー」
「う、うん」
「ルイにはー察知能力を鍛えてーもらいまーす」
「察知能力?」
「はーい。ルイはーおバカさんなのでー。まず危険かどうかの判断ー。これは人や魔物。物に対してでもですねー。次にー常に察知能力を継続させるんですー。これによりー相手よりもー早く動く事がーできまーす」
「な、なるほど」
「それじゃ、本気でやるからちゃんと覚えてくださいね」
「わ、分かった」
……んっ?
「ねえイナンナ」
「何ですか?今更怖気付いたとか言わないでくださいね」
「いつもの人をバカにした喋り方どうしたの?」
「あれはですね。ルイをバカにしている時の話し方です。ちょっと本気でやるのでそんな余裕無くなりそうなので」
「そ、そうなんだ」
………って!
「それ今まで私の事バカにしてたって事!?」
「違いますよー。これからもーですっ☆」
こ、このクソ女神がっ!!




