第15話 共存への道
深山コンプレックスの会議室。大きな窓から朝日が差し込み、新たな一日の始まりを告げていた。波留たちは、疲れた表情ながらも、どこか晴れやかな顔で席に着いていた。
「みんな、本当によく頑張ってくれた」
鴨居局長の声が、静かに響く。
「橘弘樹の件、そして魔王の侵攻。全て見事に解決してくれた」
チームメンバーは互いの顔を見合わせ、小さく頷き合う。
「しかし」
局長の表情が引き締まる。
「我々の戦いは、まだ終わっていない」
波留が身を乗り出す。
「どういうことですか、局長」
鴨居は深く息を吐き、言葉を続けた。
「波留、君に新たな任務を言い渡す」
会議室の空気が、一瞬で緊張に包まれる。
「その任務とは……異世界との共存を図るためのプログラムを立案することだ」
波留の目が大きく見開かれる。
「共存……ですか?」
「そうだ。我々は、異世界と対立を続けるわけにいかない。だからこそ、共存の道を探る必要がある」
波留は深く考え込む。そして、ゆっくりと顔を上げた。
「分かりました、局長。全力で取り組みます」
その時、会議室のドアがノックされた。
「どうぞ」
局長の声に応じて、ドアが開く。そこには、一人の老人と、幼い少女の姿があった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! けーしちょーではありがと!」
少女が叫び、波留たちの前に駆け寄ってきた。
「えっ!?」
驚く波留たち。老人が静かに一歩前に出る。
「久しぶりだな……ああ、君たちにとっては三日前の話か」
その声に、波留が息を呑む。
「その声は……橘ですか!?」
老人――橘が穏やかに微笑む。
「そうだ。五十年の時を経て、こうしてまた会えた」
莉子が、兄である年老いた橘に抱きつく。
「お兄ちゃん、やっと会えたんだよ!」
老橘が優しく莉子の頭を撫でる。
「ああ、莉子。待たせてごめんな」
波留たちは、目の前の光景に言葉を失っていた。
「橘、あんたは……」
波留が言葉を探す。
「ああ、五十年前に戻った後、普通に人生を歩んだ。そして、約束通り誰にも未来のことは話さなかった。ただ、この日を待ち望んでいたんだ」
老橘の目に、温かな光が宿る。
「波留、みんな。本当にありがとう。君たちのおかげで、俺は正しい道を選ぶことができた」
波留は感極まった様子で、老橘に近づく。
「橘……本当に、本当によかった」
二人が握手を交わす。その瞬間、波留の中で何かが閃いた。
「分かった……」
「ん? 何が分かったんだ、波留?」
橘が不思議そうに尋ねる。
「異世界との共存……その鍵は、まさに橘たちなんだ!」
波留の目が輝きだす。
「橘は異世界と地球、両方の経験を持っている。そして莉子ちゃんは、時を超えてやってきた。この経験こそが、両世界の架け橋になる……!」
会議室が、波留の言葉に沸き立つ。
「ふむ……」
鴨居局長が静かに頷く。
「波留、そのアイデアを具体化してくれ。橘、協力していただけますか?」
「もちろんです」
老橘が力強く答える。
「莉子と共に、喜んでお手伝いさせていただきます」
波留は仲間たちを見回す。神無月、月城、緋村、霧島。みんなの顔に、新たな決意の色が浮かんでいる。
「みんな、次の仕事だ。異世界との共存という、誰も見たことのない未来を、俺たちの手で作り上げよう!」
波留の言葉に、全員が力強く頷いた。
窓の外では、朝日が燦々と輝いていた。それは、地球と異世界の新たな夜明けを告げているかのようだった。
波留は胸に手を当て、静かに誓う。
(僕たちは必ず、この二つの世界を繋ぐ。そして、誰もが笑顔で暮らせる未来を作り上げる……!)
異世界管理局の次のプロジェクトが始まろうとしていた。
=完=
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