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外務省、異世界管理局  作者: 藍沢 理
第4章 黄金の勇者
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第15話 共存への道

 深山コンプレックスの会議室。大きな窓から朝日が差し込み、新たな一日の始まりを告げていた。波留たちは、疲れた表情ながらも、どこか晴れやかな顔で席に着いていた。


「みんな、本当によく頑張ってくれた」


 鴨居局長の声が、静かに響く。


(たちばな)弘樹(ひろき)の件、そして魔王の侵攻。全て見事に解決してくれた」


 チームメンバーは互いの顔を見合わせ、小さく頷き合う。


「しかし」


 局長の表情が引き締まる。


「我々の戦いは、まだ終わっていない」


 波留が身を乗り出す。


「どういうことですか、局長」


 鴨居は深く息を吐き、言葉を続けた。


「波留、君に新たな任務を言い渡す」


 会議室の空気が、一瞬で緊張に包まれる。


「その任務とは……異世界との共存を図るためのプログラムを立案することだ」


 波留の目が大きく見開かれる。


「共存……ですか?」


「そうだ。我々は、異世界と対立を続けるわけにいかない。だからこそ、共存の道を探る必要がある」


 波留は深く考え込む。そして、ゆっくりと顔を上げた。


「分かりました、局長。全力で取り組みます」


 その時、会議室のドアがノックされた。


「どうぞ」


 局長の声に応じて、ドアが開く。そこには、一人の老人と、幼い少女の姿があった。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん! けーしちょーではありがと!」


 少女が叫び、波留たちの前に駆け寄ってきた。


「えっ!?」


 驚く波留たち。老人が静かに一歩前に出る。


「久しぶりだな……ああ、君たちにとっては三日前の話か」


 その声に、波留が息を呑む。


「その声は……橘ですか!?」


 老人――橘が穏やかに微笑む。


「そうだ。五十年の時を経て、こうしてまた会えた」


 莉子(りこ)が、兄である年老いた橘に抱きつく。


「お兄ちゃん、やっと会えたんだよ!」


 老橘が優しく莉子の頭を撫でる。


「ああ、莉子。待たせてごめんな」


 波留たちは、目の前の光景に言葉を失っていた。


「橘、あんたは……」


 波留が言葉を探す。


「ああ、五十年前に戻った後、普通に人生を歩んだ。そして、約束通り誰にも未来のことは話さなかった。ただ、この日を待ち望んでいたんだ」


 老橘の目に、温かな光が宿る。


「波留、みんな。本当にありがとう。君たちのおかげで、俺は正しい道を選ぶことができた」


 波留は感極まった様子で、老橘に近づく。


「橘……本当に、本当によかった」


 二人が握手を交わす。その瞬間、波留の中で何かが閃いた。


「分かった……」


「ん? 何が分かったんだ、波留?」


 橘が不思議そうに尋ねる。


「異世界との共存……その鍵は、まさに橘たちなんだ!」


 波留の目が輝きだす。


「橘は異世界と地球、両方の経験を持っている。そして莉子ちゃんは、時を超えてやってきた。この経験こそが、両世界の架け橋になる……!」


 会議室が、波留の言葉に沸き立つ。


「ふむ……」


 鴨居局長が静かに頷く。


「波留、そのアイデアを具体化してくれ。橘、協力していただけますか?」


「もちろんです」


 老橘が力強く答える。


「莉子と共に、喜んでお手伝いさせていただきます」


 波留は仲間たちを見回す。神無月、月城、緋村、霧島。みんなの顔に、新たな決意の色が浮かんでいる。


「みんな、次の仕事だ。異世界との共存という、誰も見たことのない未来を、俺たちの手で作り上げよう!」


 波留の言葉に、全員が力強く頷いた。


 窓の外では、朝日が燦々と輝いていた。それは、地球と異世界の新たな夜明けを告げているかのようだった。


 波留は胸に手を当て、静かに誓う。


(僕たちは必ず、この二つの世界を繋ぐ。そして、誰もが笑顔で暮らせる未来を作り上げる……!)


 異世界管理局の次のプロジェクトが始まろうとしていた。








 =完=


完結です。最後までお付き合いありがとうございました。

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これまでありがとうございました!

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