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外務省、異世界管理局  作者: 藍沢 理
第3章 局長奪還作戦
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第2話 若手たちの決意

 異世界管理局、奥多摩支部。深山コンプレックスの会議室に、高千穂鏡子、鬼塚剛、円覚禅司、狭間刃狼の四人が、重苦しい空気の中で向かい合っていた。窓からは奥多摩の緑豊かな山々が見えるが、その美しい景色とは裏腹に、室内の雰囲気は暗く沈んでいた。


 異世界情報部長、高千穂が、深いため息とともに口を開いた。


「局長が責任を取って辞任するそうです」


 その言葉に、会議室の空気が一瞬で凍りついた。鬼塚が突然立ち上がり、机を強く叩いた。


「ふざけんな! 局長は何も悪くねえ!」


 鬼塚の怒声が室内に響き渡る。


 転生管理課長、円覚は静かに目を閉じ、穏やかな声で言った。


「なんとか阻止する方法はないものかの」


 次元間外交室長兼、次元特殊作戦部隊長、狭間が腕を組み、冷静な表情で提案する。


「実力行使という手もある」


 高千穂が即座に首を振った。


「それは論外よ。単なる犯罪になってしまうわ」


 円覚が眉をひそめながら言う。


「わしから政治家に圧力をかけようか」


 狭間が苦笑しながら答えた。


「それは面倒なことになりすぎる。政治を巻き込めば、収拾がつかなくなるぞ」


 会議室に沈黙が降りる。四人はそれぞれに思案を巡らせるが、どの案も一長一短で、決定打に欠けていた。


 高千穂が静かに、しかし力強く言った。


「私たちにできることは、ただ一つ。真摯に反省し、再発防止に努めること。そして、局長の意思を継いで、組織をより良いものにしていくことよ」


 その言葉に、全員が重く頷いた。彼らの表情には、決意と覚悟が浮かんでいた。


 一息ついたところで気の抜ける声がする。


「まいったなぁ、いったいどうすりゃいいんだ……」


 鬼塚の呟きに、誰も即答できなかった。会議室に漂う空気は、途方に暮れたような、しかし何かを模索しようとする緊張感に満ちていた。


 *


 深山コンプレックス、無限演習場。広大な空間に設置された訓練設備の中に、桐生波留、神無月良二、月城リナ、緋村茜、霧島カンナの五人が、人目を避けるように集まっていた。


 波留が、決意に満ちた表情で口を開く。


「なんとかして、局長を守らなきゃ」


 月城が不安げな声で答える。


「でも、どうすればいいんでしょうか……」


 神無月が冷静な口調で提案した。


「透明性の確保だ。言い方は悪いけど、次元調和同盟サミット襲撃事件は、ただのガス爆発として報じられてる。これを機に異世界管理局の存在を公にし、僕たちの役割を正しく理解してもらう。それが、局長を守る最良の方法だと思う」


 緋村が静かに頷く。


「そうですね。すでに世界樹事件で私たちの存在が週刊誌で報じられてますし。隠すことで、かえって疑念を招いてしまいます。正々堂々と、我々の仕事を示すべきです」


 霧島が、鋭い目つきで言った。


「記者会見を開くってのはどうかな」


 波留の目が輝いた。


「それだ!」


 波留は立ち上がり、熱っぽく語り始めた。


「僕の『官僚的直感』が、それが最善の策だと告げてる。メディアを味方につければ、世論も動かせる。異世界管理局が真摯に仕事に取り組んでることを、みんなに知ってもらおう」


 五人の表情に、決意の色が浮かぶ。


「よし、準備を始めよう。記者会見の場所は……ついでに奥多摩、深山コンプレックスの存在も知ってもらおう。スピード感持ってやらないと、話を潰されそうだし」


 神無月の声に、全員が頷いた。彼らの行動が、異世界管理局の、そして鴨居局長の運命を左右することになる。夕暮れ時の無限演習場に、新たな希望の光が差し込んでいた。


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