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要するに結果が同じならいいじゃない

作者: jima

§1 火星大学法学教室の君と僕


「この結論に問題はないだろうか。パン」

「マサ、あなたはそう言うけれど、もう結論は出てるんじゃないかしら」

「いや、このケースなら極刑は確定じゃないのかな」

「よく考えて。ただの痴漢(ちかん)よ」

「パンこそよく考えろ。惑星間連絡チューブの中での犯罪だ。ただの痴漢(ちかん)では済まない」

「教授がこの事例を課題として出したということの意味を考えてね。マサ」

「どういうこと?」

「地球での犯罪とこの火星(かせい)コロニーでは法律が違うでしょう」

「君が言っているのは火星(かせい)独自の民事および刑事法系(ほうけい)についてだろうか」

「惑星間移動の公共交通機関内では地球連邦のものが適用されるという原則があるわ」

「地球と火星(かせい)のどちらの法律が適用されるのか審議(しんぎ)は終わっていただろうか?」

「もう…たかが痴漢(ちかん)の事例よ。痴漢(ちかん)くらいで…」

「たかが痴漢(ちかん)、されど痴漢(ちかん)だ。それがどっちの法系(ほうけい)か」

「地球の法系(ほうけい)に決まっているでしょ!マサ、あなたは大学で何を勉強しているの!?」

「パン、落ち着けよ!審議(しんぎ)の内容は一般公開されていない。火星(かせい)における法系(ほうけい)が適用された可能性はないのか?()いを残さないためにも、もっと調べたほうがいい。ここに審議(しんぎ)内容の文書がある。痴漢(ちかん)がどう扱われているか、審議(しんぎ)の文書をよーく見るんだ」


 (§4に続く)



§2 大道芸を科学する僕と君


「何と素晴らしい技だろう。傘の上でボールがグルグル回っている」

「正月だからいつもより沢山回っているそうよ」

「この傘で回すものの形について最適解を考えたいんだ」

「馬鹿じゃないの、マサ。まん丸に決まってるじゃないの」

「でも、ほらこの神技(しんぎ)をもう一度見てごらん、パン」

「あら?途中からボールでは無いものを回し始めているわ」

「ボールを枡に置き換えたね」

「その形状の置換(ちかん)に意味があるのかしら」

「その方が観衆には受けがいいということ」

「片手で傘を回し、上には枡のようなものを乗っけて回している。おまけにもう片手でパンを食べ始めたわ」

「ホント。まさに神技(しんぎ)だ」

「確かに四角いものを回すなんて神技(しんぎ)だわ。パン()いもしているし」

「枡の形に置換(ちかん)してはどうかということだ」

「枡の形なんていいじゃない!まん丸が一番回しやすいに決まってるはずでしょ!」

「落ち着け、パン。この神技(しんぎ)、この枡の形…動画をよく見るんだ。丸と正方形(せいほうけい)、どちらの方がよく回っているか?その形状置換(ちかん)を!そしてこの神技(しんぎ)の最後に残るものも!」


  (§4に続く)




§3 ドラキュラを退治したけれど妙なことを言い出す僕と君


「ついにドラキュラの胸に(くい)を刺すことができた。僕らの勝利だ。パン」 

「恐ろしい敵だったけれどやったわね、マサ」

「ほら、ドラキュラが灰になっていく」

「素晴らしいわ」

「でも…知っているかい?ドラキュラを完全に灰にしてしまう男には条件があるんだ」

「何の話?」

「パン、言いにくいんだけど…(くい)を打った男性の…その…ナニが」

「マサ?」

「つまりナニがゴニョゴニョ」

「何を言ってるのかさっぱりわからないわ」

「…男性自身が『皮かむり』でも、そうでなくても駄目なんだ、パン」

「あなた頭がどうかしたの?」

「聞いてくれ。本当か、嘘か。ほらドラキュラがこんなに完全に灰になるところは見たことがないだろう」

「皮を完全にかぶっていても駄目で、完全にかぶっていなくても駄目でって。待って、それじゃあ。あなた…」

「自分では言いたくないし、もちろん見せるのも嫌なんだが…」

「べ、別にその真偽(しんぎ)を証明しなくてもいいです!」

「いや、これはぜひ君にわかってほしいんだ。そして僕はさっき奴に()まれた」

「えっ。どこを()まれたの?」

「戦いのさなか、思わず奴にパンチを出して…」

「そのパンチの拳を()まれたというわけ?マサ」

「そう、パンチを()まれたのだ。手袋はしていたので大丈夫だとは思うが」

「そう…じゃあその真偽(しんぎ)はどうでもいいじゃない。ドラキュラは倒したんだし」

「だが、だが…どうしてもこの『ナニの皮の関係でドラキュラはすべて灰になり、(くい)のみが残る』という仮説の真偽(しんぎ)を」


    (§4に続く)




§4 すべての結論はここにある(1~3の続き)


「もう!あなたはそう言うけれど、どう考えてもこれでいいはずよ」


「だが問題はある。ぱん ち かんだってことだ。もう時間もないかもしれない」


「だからこそ、そこはもういいことにしましょう」


「頼む。重要なことだ。そのしんぎについてもう一度確認したいんだ。見てごらん、ほら」

 マサはパンにそれをよく見せた。



「…あららら。まさ か せいほうけいってこと?」


「だとしたら、僕のアレに根拠があることはわかってもらえるはずだ」


「まあ、確かにねえ」


「だからこそ、すべてが終わって、最後はパン くいが残るだけだ」



読んでいただきありがとうございます。文章上の実験みたいのを幾つか書いていて、そういうのは書き終わっても出来不出来がよくわからないのですね。ちょっと面白い、と思っていただけたらありがたいのですが。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう言葉遊びって、日本語の成せる技ですよね。 [一言] 古きSFCゲームの「かまいたちの夜」を思い出しました。 私の名前は釜井です。 奇遇だな。おれも鎌井ってんだ。 あら、私は蒲井で…
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