表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第五話 学校の日常

朝日が照らす、ワンルームのアパートで、僕はベッドでうつ伏せになり、枕を抱きしめていた。


桜瀬咲(さくらせさき)のことが頭から離れなくなっていた。


少女漫画の乙女かよ、俺は。


彼女が欲しいなんて思ったことはない。好きなことをやって、楽しく生きる。それが最高の人生だと思っていた。でも、どうしてだろう。そんな楽しそうな人生よりも、桜瀬(さくらせ)さんの隣にいるほうが、幸せな人生だと思ってしまう。


僕にも女友達はいる。大学一年生の頃から親しくしている星宮(ほしみや)まきだ。大学に入学してすぐ、普通自動車免許を取りに、大学の近くの自動車学校に行っていた。星宮(ほしみや)とは学科教習で何度か同じになり、いつしか仲良くなっていた。でも、ただの友人である。恋愛感情も抱かない。星宮(ほしみや)だって優しくて良い人柄だと思う。将来恋人となる人は幸せだろう。しかし、桜瀬(さくらせ)さんには他の人とは違う何かがある気がする。言葉ではうまく表せない何かが。


そんなこともあり、今日は大学へ着いたのは十二時を回ってからだ。昼の学食の時間には間に合ったようだ。食堂へ入ると、清水寛太(しみずかんた)とすれ違った。彼は、いつも三百円のカレーライスを数分で平らげてしまう。タイムアタックでもやっているのだろうか。だから、十二時をちょっと過ぎたくらいに着いた僕とすれ違ったのだ。それにしても、その時僕の方を見てニヤニヤしていたのは何だったのだろう。少し嫌な予感がした。


僕は、四百円の牛丼をゆっくりと食べた後、研究室(けんきゅうしつ)へと向かった。すると、清水(しみず)の他に、機械科(きかいか)の人たちが三人いた。すると清水(しみず)がニヤニヤしながら

「お前、昨日天神(てんじん)で誰といた?」

と言ってきた。僕は咄嗟(とっさ)に、

「いやだなぁ、友達といただけだよ~」

と答えた。

「友達ねぇ、最近の若者はただの友達とプリ()ったりするんだ~」

そうか、こいついつもゲーセンで遊んでるんだった。

「でも、デートでファーストフードはねぇ」

ちょっと待て、お前どこまで知ってるんだよ。ストーカーじゃねぇか。


清水(しみず)が話していると、他の人にも熱が入る。

「それで清水(しみず)、相手はどんな人だった?」

「えーっと、長い黒髪(くろかみ)でかわいい系だったよ」

同じ大学と言っても、生徒は全部で五千人ほどいる。桜瀬(さくらせ)さんは情報学部(じょうほうがくぶ)情報科(じょうほうか)だったので、彼女を知る者はいなかった。

「まじで!友達なら紹介してくれよ、高橋(たかはし)


紹介はしたくなかった。ここはもう僕が折れるしかなさそうだ。

「友達というか、まぁ、いい人だなとは思っている」

僕がそう言うと、いつもは静かな研究室(けんきゅうしつ)に、男たちの歓声(かんせい)が響いた。


どうしてそんなこと言ってしまったのだろう。話は盛りに盛られて、夕方頃には

高橋(たかはし)!彼女できたんだ!」

などと言われていた。

どうしてこうなっちゃうのだろう。伝言ゲーム下手すぎない?

「できてねぇよ。デマ流すなよ」

僕はそう言いつつも、何故か悪い気はしなかった。


日が落ち、スーパーで、すでに半額になっていた弁当を買うと、僕は家に帰った。そういえば、先月の回転寿司も、昨日の天神(てんじん)も、桜瀬(さくらせ)さんから誘ってきていた。よし、今度は僕から誘おう。僕は、彼女の連絡先を開き

「また一緒に出掛けたいので、暇なとき教えてください!」

と送信した。すると、

「再来週大丈夫です!!」

そう返ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ