表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

第十九話 メッセージ

七月になり、雨も降らない日々がしばらく続いていた。僕はいつも通り朝七時に起きる。そして、スマホの通知を見る。メッセージは何も来ていない。(さき)が元気になることを願い、布団から出る。

食パンを取り出してオーブンに入れる。そして、手元も見ずにダイヤルを三分の場所まで回す。その間に作業服へ着替える。

スマホをイジりながらパンを食べ終わると、洗面台へと向かう。寝癖を直しながら歯を磨く。これが意外と難しい。

顔を洗い終わると、リュックを背負って家を出る。


会社までは徒歩十分くらいだ。途中のコンビニで弁当を買い、会社の門を抜ける。そして、工場を通り、設計室(せっけいしつ)へと向かう。扉を開けると

「おはよう」

と言われたので

「おはようございます」

と返す。

僕は自分のパソコンへ向かい、引出しからマンガ本を取り出す。そして、始業時間まで読んでいる。その間、人がやってきては、おはようございますと返す。


始業のチャイムが鳴ると、パソコンに目を向ける。僕は2DCADのソフトを開き、図を作る。そして、寸法を付けていく。午前の仕事は、この繰り返しだ。


昼になると、コンビニの弁当を取り出す。そして、パソコンデスクの上で開ける。そして、隣の中尾(なかお)さんと話しながら食べる。

「会社にも馴れてきたな」

「そうですね。中尾(なかお)さんのお陰ですね」

そう言うと、中尾(なかお)さんは嬉しそうに笑った。


昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ると、再びパソコンに向かう。午後からは3DCADを使用する。それなりのスペックが必要なこのソフトは、起動に少し時間が掛かる。僕は起動中の画面をボーっと見ながらしばらく待つ。

今回は、ラックアンドピニオンと呼ばれる、回転する歯車から直線への運動に変える動作を、シミュレーションする作業だ。DVDプレーヤーのトレーが開くときの動作と同じである。但し、大きさが桁違いであり、ものすごく大きい力が働くので、事前にシミュレーションして、負荷(ふか)等を見なければいけない。

僕は、その歯車を、パソコンの画面に作っていく。これをやっていると、少しずつ時間が経ってゆく。



終業のチャイムが鳴り、僕は保存していることを確認すると、パソコンを閉じる。スマホを見てみると、一件の通知が来ていた。


桜瀬咲(さくらせさき)、大復活しました!」


卒業式以来の連絡だった。嬉しかった。今すぐにでも会いたい。そう思った。そして、涙をこらえながら


高橋伸一(たかはししんいち)、迎えに行きます!」


と、メッセージを送った。

次回、最終話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ