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英雄の冠  作者: 月下 猫
第一章 「騎士誕生」
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第一話 『目覚め』

 太陽の光が部屋を照らす。静かな風はカーテンを揺らし部屋を巡回する。ベットには金髪の天然パーマが掛け布団から出ている。心地よい睡眠のように静かに呼吸している。そこに大きな音を立てながら誰かか迫ってくる。しかし、決して眠りからは覚めることはなかった。


「もう無理だよぉぉ~何にも食べられないよぉぉ…zzz」


 寝言までいうほど熟睡していた。そんな時布団越しには悪魔がいた。


「おめぇはいつまで寝てんだぁぁ!!!このアホガキがぁぁぁ!!!!」


 怒鳴り声ともに拳が振りかざされる。あまりにも力が入っていたためかその威力は身体を貫通して床にまで伝わる。痛いという問題ではない。それは死の拳、無防備な状態で受ければ無傷でいられるはずがない。あばら骨は何本残っているのか心配はそれぐらいしか考えられないほど危機的状況に陥っていた。


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、何で起こされるのに命はならないといけないんだ…」


「そりゃあ、おめぇが1人で起きねぇからだろ。そもそも男で16になったんだからてめぇで起きやがれ!そんなじゃあたしみてぇになれんぞ。」


 そう銀髪で紫紺の瞳しているババアが言っている。見た目だけなら若く見えるのに実際の年齢はかなりいっている。だからといってなめているとこっちが殺されるほどの拳を持っているため逆らうものはいない。


 そもそも今どこにいるのか曖昧になっている。眠いからではない。朝の目覚ましという名の殺人パンチで死にかけなのだ。もはや言葉を喋ることすらままならない程に意識が薄れていく。なにかしようと動こうとした瞬間、意識がとんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれ…?ここはどこだ。」


 意識が徐々に回復する。殴られた痛みも完治している。どこもおかしくはないがここ今どこなのかはわからない。自分が寝ていた部屋でもない。そもそも自分の家は孤児院であり、各部屋は用意されてはいるが基本共用部分を利用して過ごしている。だから、自分が分からない部屋はないと思っていた。この部屋はただ暗いだけだがこんな部屋は見たことがない。


「やっと起きたのかいアルトリウス。相変わらず寝過ぎだ」


「いやいやいやいや!途中からは完全にあんたの…」


「あぁん?…まだやんのかい?」


 本当に女なのか?疑われるほどの筋肉量、腕まくりしているとはいえ腕から見える血管の分厚さは異常だ。しかもメイド服を着ている。ここは孤児院で管理担当はミテラ・ファールマケットである。この人物は今目の前にいる銀髪で紫紺の瞳をしているババアだ。なぜこの人が管理担当なのかが本当にわからない。


 ババアの名前にあるファールマケットとは偉業の名と呼ばれるものらしく、過去にこの国に起きた事件や未達成項目の達成など誰もが成しえなかった偉業者に与えられる名前らしい。詳しく聞こうにも頑なに教えてはくれない。


「いえ!何もありません!今すぐに仕事に取り掛かります!!」


 勢い良く返事をしその場を後にしようとしたが、改めてここがどこなのかハッキリしていないことを思い出した。そもそもここでの仕事は普段生活でしていることをするだけだ。皿洗い、洗濯、掃除などご飯以外のことをやる。それだけのことを孤児院にいる全員で作業したら一時間はかからない。


「それよりも一つ伺っていいですか?」


「なんだい?」


 恐る恐る問う。返答も安心の声だ。怒ってはいない、むしろ聞かれることを分かっていたのかと思うぐらい落ち着いている。


「ここはどこですか?あはは…」


「私が作った地下牢だ」


「ですよね!だろうと思っていました。」


 もちろん嘘である。全く知らない上になぜ作った?と疑問が浮かぶ。作らなくてもいいことを作るということは必ずしも意味があると小さい頃からババアに教わっていた。なにか裏があるはずだ。そう思うの束の間だった。


「地下牢は冗談だ。てめぇに聞かなきゃいけないことがある。」


 珍しく怒っているわけでもなく冗談を言っている状況じゃないことをすぐに察知した。だからといって気が緩むことはない。むしろ逆である。自分がババアと言えているのは彼女が寛大な心を持っているからだ。でなければ、わざわざよくわからない子供の世話をしているにもかかわらずバカにされるのは許されることはない。しかし、彼女は許した。そんな恩人が真剣な眼差しでこちらをみる。


「な、何でしょうか…?」


 おちゃらけた雰囲気はすぐさま沈黙へと変わった。身体は萎縮し、心拍は上昇する。緊張はもちろん、少し恐怖も感じる。


 沈黙の時間は長く、1秒が1分、10分と徐々に長く感じ焦り初める。彼女がこのような雰囲気を出すこと自体珍しいのでなかなか体験していないせいだろう。そんな状態でも彼女は黙ってじっと俺の方みる。あまりにも怖く感じ固唾を飲んだ。


「おめぇは騎士になりたいのか?」


 ミテラが口に出した問は、アルトリウス自身が最も憧れる存在『騎士』のことであった。この国での騎士という存在は高潔で民を守り国の幸せを守る存在。16才の少年にはそれがどれほど憧れの存在かなんてわかりきっていることだ。


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