神様(あなた)は私を殺してくれない
アラームの音で、目が覚める
床には酒の空き缶が転がっている
ああ…
また神様は、私を殺してくれなかった。
1ヶ月前まではこんな事思わなかったのにな。
1ヶ月前
結婚して1か月の記念日だった
「はい、あなたコーヒー」
「ありがとう」
「え、ブラック!?」
「おいおい!おれが、
ブラック飲めないの知ってるくせにわざとだろ!」
「さぁねー毎日入れてあげてるだけでも感謝しなさい」
そんなたわいもない会話しながら二人でテレビを見ていた
「ねー見て!桜ノ園またテレビで紹介されてる!
ほんとに一生に1回でいいから、二人で行きたいね」
「そっ、そうだね。でも予約が全然取れないみたいだし予約が取れたら行こうなー」
「あ~もう7:30じゃないかそろそろ仕事行かないと」
「そうそう今日は19時に迎えに行くから家の前で待ってて」
「じゃ、いってきます」
夫は、それだけを私に伝え
めずらしく慌てて家を出ていった
何であんなに慌ててたの?
まぁ久しぶりに何処か連れてってくれるみたいだし
私も早めに帰ってこないとね~
少しテンションが上がってるのが自分でもわかるぐらい気分よく職場へ向かった。
朝の約束の時間をすぎてしまった
仕事が長引いたせいだ。
最寄り駅に着いたころには
時刻は19:30
必死に走って帰った
最後の横断歩道を渡ろうとしたところだった。
サイレンの音が聞こえる
私の前を一台の救急車が通りすぎた
もう~急いでるのにと思いつつ
急いで家に帰った
よし何とか19:40に家に着いた
家の前には、夫の車がとまっていた
しかし、家に夫はいない
何故だろうと疑問に思い夫に電話した
出ない
何度かけてもでない
でも、着信音は微かに聞こえる
車の中から着信音がする
車のロックもされていなかった
夫の携帯を手に取った
何故?
何故だろう
いつも肌身はなさずもってたのにな
何かあったのかと嫌な事が脳裏によぎる
「奥さん、何でこんなとこいるの?」
隣に住んでいる奥さんに声をかけられた
「なんでって、夫と約束してたんですけど居なくて探してたんです」
「何もきいてないの!?
さっき、車に引かれて救急車で運ばれていったんだよ!」
「車から荷物を落としてそれを拾いにいったら飲酒運転の車に引かれたって」
「桜ノ総合病院に運ばれるって言ってたから、急いで!」
「ちょっとまってください、なにをいってるんですか?」
突然の出来事すぎて、頭が追い付かない
「ほんとう、なんですか?」
「嘘なんて言ってる場合じゃないでしょ!」
「早く、いってあげないと」
私は泣くのを堪えて、病院へ急いだ
19:50
病院に着いた
「鹿苑寺です、さっき交通事故で運ばれてきた鹿苑寺の妻です」
「おっ、夫はどこですか無事なんですか」
「奥様ですね、ご案内致します」
看護師に案内され部屋にはいった
そこには…
白い布を被って寝ている夫と医師がいた
「奥様ですね」
「落ち着いて聞いてくださいね」
「義博さんは、只今19:50にお亡くなりになられました」
「嘘ですよね、寝てるだけですよね」
「だって、今日は結婚して1ヶ月の記念日なんですよ」
「この後、二人で出掛けるです」
「起きてよ、ねー」
「私が遅れたのは謝るから、はやく起きてよ…」
何度も、何度も呼び掛けた
いつもなら声をかけるとすぐ起きる夫がまったく起きない…
目を覚ますことがないとわかった途端に涙がとまらなかった
夫の携帯に電話がはいる
知らない番号からだ
でれる状況ではなかった
留守番電話にメッセージが入る
「鹿苑寺様でしょうか?桜ノ園のさとうですが、
ご予約の時間を過ぎてるのですが…」
留守番電話の途中で私は涙が溢れた
「死んじゃったらいっしょにいけないよ…」
涙が枯れるまでなき続けた
数日が経ち
葬儀も終わり
周りはいつもの日常にもどっていた
私も
毎朝お揃いのマグカップにブラックコーヒーをいれる
7:30に家をでる
仕事をして19時には家に帰ってくる
いつもの日常に
そして
いつものように
大量の睡眠薬をお酒で流し込み
死んだかのように眠りにつく
…
アラームの音で、目が覚める
ああ…
また神様は、私を殺してくれなかった。