97)お爺様には許可取りましたか?
エルフの里を知っている。と、思わせぶりな事を言った獅子王ビクトルだったが、
「酔った状況で話す事ではないな。この話は明日だな」と、そのまま話題を打ち切った。
酔っ払いめ、、、翌日しらばっくれたらぶん殴ることにする。
いずれにせよ明日の夜は、「情報のすり合わせがしたい」とのヴァーミリアンの希望で集まる予定だったので、そこで詳しい話を聞くことにした。
翌朝、クロト達は同行を願い出たサリナと共に、適当に開けた場所まで散歩。
てくてく歩きながら、クロトがふと気になったことをアーヴァントに聞く。
「そういえばさ、アーヴァントが月が消えた時、なんか言いかけたろ? あれ、なんだったんだ?」
「ああ、あれか。大した話ではない。月が消えた理由を知っていただけだ」
「へえ、私も知りたいな」サリナが乗って来る。
本当にそんな大した話じゃないのだが、と前置きするアーヴァント。
「あの月が消える現象は”蝕”と言うのだ。数年に一度は発生しているので、よく過去の記録がある。月が消えるものが”蝕”、他に太陽が消える”大蝕”と言うものがある。こちらは蝕よりも発生頻度は低く、数十年に一度と言われている」
「へえ。なんで蝕だと月が消えるんだ?」
「さあな。私は天文には詳しくない。ただ、過去の文献で何度か蝕と関係する宝具の話があったので知識としては知っていただけだ」
「蝕、、、」呟いて何事か考え込むサリナ。
アーヴァントの話を聞きながら歩いていたら、ほかのメンバーより遅れていたようで
「はーやーくー」と言うジュリアの声に促されて、みんなの元に急ぐのだった。
ヴァーミリアンに教えてもらった場所に到着すると、アメリアは休憩スペースの用意。他の面々は戦闘準備に入る。
ファウザの首都を旅立って以降、クロト達は時間に余裕がある日は1〜2時間ほど訓練の時間を設けるようにしていた。
基本的にアーヴァントを訓練官として、クロト&フレア・シーラ・ジュリアが実戦形式で汗を流す。
やり方はその日の気分。今日のクロトはフレアを休ませて、ジュリアの矢を一定時間避けると言うルールで始めた。
本来であれば圧倒的身体能力を誇るクロトの圧勝のはずだが、最近のジュリアの弓はより正確に、より手数を多く矢を放つことができるようになっていた。目で追うのも困難な矢がクロトめがけて襲いかかる。加速ブーストをかけて紙一重で避けていくクロト。
と、フェザーアローの1つがクロトの腕をかすめる。
「やった! 当たった」飛び跳ねるジュリア。苦笑しながら降参のポーズをするクロト。
大した傷ではないが、負傷はアメリアがすぐに治癒。これは一応アメリアの練習として行っている。
負けたクロトが休憩。今度はシーラがジュリアと対戦。
今度は多数の矢を放つフェザーアローではなく、一矢にできるだけ力を込めて放つ。対するシーラは可能な限りシールドを広範囲に展開する。シールドは10層展開させ、ジュリアに触れればシーラの勝ち。届くまでに破壊し尽くせばジュリアの勝ちだ。
「とんでもない訓練をしているな」
若干呆れ気味のサリナに
「サリナ達も参加したらいい。お互い、良い刺激になるだろう」と、アーヴァントが誘うとコクリと頷く。
ジュリアとシーラの対決はジュリアの負け、残り3枚のシールドを残して身体に触れた。
「あー、やっぱり”強い方”が難しいなぁ」
「手数ならかなりのモノだが、ジュリアの課題は破壊力だな」
アーヴァントの指摘に素直に「うん!」と返すジュリア。
ジュリアは連戦したので交代。いつもならクロトとシーラで一戦となるが、サリナの参戦によりクロトとサリナで手合わせとなった。
少し距離をとってトーントーンと跳ねるサリナに対し、体をやや斜めにして構えるクロト。
「行くぞ」サリナが小さく言うと、眼前から消える。
クロトが体を回転させながら横に滑るように動くと、直前までクロトがいた場所に模擬刀が現れる。
「早いな」感心しながらも模擬刀を避けるクロト。
速度とパワーにはある程度自信のあるクロトだが、サリナの速度はクロトに負けていない。
また、一手一手の威力はクロトとしてはそれほどでもないが、手数か多い。
速度とテクニックで圧倒する戦い方のようだ。なるほど、だがら負担の少ないダガーの両手持ちなのか。今は代わりに木の枝だけど。
ラチがあかないと思ったからか、サリナは再び距離を取り隙を探ろうとする。
だが、その瞬間がクロトにとっては隙だ。
同じ速度で前へと飛び込むと、「なっ」と小さく声をあげるサリナ。
そのままサリナの体をトン、と突くと尻餅をついて「参った」と言った。
「やっぱり強いな。ここ数日の不甲斐なさもあって、自信を失くすよ」サリナがちょっと尻尾を下げてため息。
「いや、サリナは相当強いと思うぞ。結構やばかった」言いながら手をとって身体を起こしてやる。
「サリナ。今度は私とやろう」シーラがやってきてクロトと交代した。
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適度にいい汗をかいて、訓練は終了。
その場でお茶を飲みながら休憩となる。
「クロトはもちろんだけど、やはり全員が相当な実力者ね、、、」
お茶を飲みながら、サリナがつくづくといった感じで言った。
「えへへ」ジュリアが照れながらお菓子を食べる。
その後とりとめのない会話をしている間、サリナは静かにカップの中を見つめていた。
それに気づいたシーラが「どうした? 具合でも悪いか?」と聞くと
「いや、そうじゃないんだけど、、、あの、、、ううん、やっぱりなんでもない、、」
とまたカップの中を見つめる
その姿を見ていたアメリアが、ピンときた顔でサリナの服の袖を引っ張る。
アメリアに視線を移すサリナ。それをじっと見つめるアメリア。
唐突に「お爺様にはちゃんとお話になりました?」と聞いた。
なんのことか思い当たって、目を見開くサリナ。
「あ、ああ。昨日それでお爺と話して。。。好きにしろと、、」
「なら、クロトさんなら大丈夫ですよ」にっこりと笑いかける。
「?」
キョトンとするクロトに、サリナが意を決したように口を開く。
「クロト、私もエル・ポーロと同行させてもらいたいのだけど、、、、ダメかな?」
お、ちゃんと許可とったのならいいぞ。大歓迎だ。
そんなわけでパーティが増えたので急遽、休憩のお茶会は歓迎のお茶会になった。
「しかし、パーティへの加入は歓迎だが、なんでまた急に?」
シーラが聞くと、尻尾をパタパタしながらサリナが答える。
「私は今回、ほとんどなんの活躍もできなかった。。。」
「いや、そんなことは、、」
シーラが言いかけるが、サリナがそれを手で制す。
「事実だ。大口を叩いた割に魔剣使い相手にも一族の救援がなければ負けていた。人造魔獣相手にもそれほど活躍できたとは言えない」
パタパタしていた尻尾が、ぺたんとなっている。
「私は自分の弱さを思い知った。今までどれだけ世間を知らずに”自分は強い”と思い込んでいたのかと」
いや、結構強いと思うけど。。。
「私はもっと強くなりたい。でも、島の中にいたんじゃダメだと思う。だから、一度島を出ようと思ってお爺に話した。今回の遠征には父も来ていたから一緒に話した。最初は渋られたが、いずれ島に戻ってくることを約束して許してくれた」
再びパタパタ動き出す尻尾。
「君たちについていけば、何か掴めそうだと私の勘が言っていたから、一緒に行きたいと思ったんだ」
あー獣人の”勘”かぁ。じゃあ仕方ないな。
黙って聞いていたシーラが気になる事を言う
「獣人の勘、、、クロトのおばあ様も大事にしろと言っていたものだな。実際今回もポロンポ達の勘で災難を避けることができた。だがサリナの勘を信じるとなると、、、」
となると?
「また、この先とんでもないことに巻き込まれると言うことなのでは、、、」
サリナを除く全員が「あー」と残念そうな顔をしながらクロトを見た。
ちょっ!? なんで俺を見るの? 俺だけの問題なの!? ねぇ!!
前衛がもう一人欲しいなとは思っていましたが、完全に予定外です。もうほんと、これ以上はパーティ増やさない! 作者のキャパの限界だから!
というわけで100話目前にして新しい仲間が加入しました。
果たして作者は使いこなせるのか。そんな感じで引き続きクロト達の旅路をお楽しみくださいませ。




