89)偵察部隊が見たもの
無人島に戻るとヴァーミリアン自らが出迎えてくれた。
「ムーンウルフ全員の協力は取り付けられなかった、すまん」
ヴァーミリアンに経緯を報告し、クロトが謝る。
「高い戦闘力誇るムーンウルフが1人でも手伝ってくれるのはありがたい。ここにきてくれた3人だけでも大きな戦力だ」
ヴァーミリアンはそう言って、サリナ達を歓迎した。
連れ立って天幕へ戻ると、天幕の外には見覚えのない獣人の戦士の姿がちらほらと見える。多分昨日はいなかった。
「各島を巡っている部隊が声をかけた者達だ。近い島の者から順次集まってくれている」
クロト達の視線から考えを察したヴァーミリアンが双方に紹介する。
ムーンウルフと同じくらい「アレが白虎王様の腕を直された、、、」と、アメリアが注目を浴びていた。
アメリアは王女様スマイルを保ったまま、自然な所作でクロトとシーラに隠れる様な位置へ移動する。
「それと、偵察部隊から何名か報告に戻ってきている。いい頃合いだ、一度状況を整理しよう」
天幕に入り敷物の上に座ると、ムーンウルフの街で出たお茶よりも薄い緑のお茶が配られる。
不思議そうに杯の中を見るクロトに
「出がらしではないぞ、笹茶という変わったお茶だ」
「ササ茶?」
「ああ、外に生えている硬くて尖った葉っぱを煮出して作る」
「へえ。初めて見るな」
「ワシもあまり飲む機会はないがな。船の在庫に茶がなかったのよ」
一口すすると、変わってはいるが悪くはない風味が鼻を通り抜けた。
「さて、茶よりも偵察の話じゃ。ヘイタ、どうであった?」
ヘイタと呼ばれたティガ族の男がすすっと前に出る。偵察部隊を取り仕切っているそうで、どことなくバーンの様な雰囲気というか、気配のない感じ。
「はい。我々が上陸すると、早々におかしな生き物が多数徘徊しているのが見られました」
ヘイタの話によると、見た目は二足歩行のアルマジロの様な生き物、背中は鱗なのか、甲羅なのかつるんとしていた。
特に目を引くのは両腕。まるでゴリラのそれで、アルマジロについている腕にしては異様に見えた。筋肉質の両腕は地面に付くほどの長さがあり、個体によっては地面に引きずりながら歩き回っていたそうだ。
獣人の種族にアルマジロ型はいないので、獣人ではないことは間違いない。では魔族かと聞かれれば首を傾げざるを得ないという印象だった。
なぜならアルマジロの化け物は無感情に徘徊し、動くものを見つけると駆け寄って拳を振り上げるということを繰り返していたからだ。
偵察に出た者の一人が不注意でアルマジロに発見された際、慌てて海へと飛び込んだところアルマジロも海に飛び込み、そのまま沈んでいったというから、知能はほとんどないのではないかと。
「まるで人形の様でした、、」とヘイタがまとめる。
「人形、、、人が造った、、、」アメリアがそのまま口にした言葉をアーヴァントが拾う。
「人造魔獣といったところか? ふむ。召喚という禁呪もあったのだ、失われた遺産の中にその様な物があってもなんの不思議もないな」
「召喚とは?」今度はヴァーミリアンが首をかしげ、アメリアが連合議会で話した内容をかいつまんで説明する。
「多分、詳細な話は追って王国連合から来ると思いますが、、、」
「では、この件もドラグロアなる奴らの手による物であるのか?」
「分かりません。ただ、必要以上に手のこんだやり口は、近いものがあると思います」
「そうか、、、なんにせよ人造の兵士など、不快でしかないわ。全て叩き壊し、造ったものも必ず斬らねばな」
話のキリの良いところまで待っていたヘイタが、引き続き偵察報告に入る。
「そのアルマジロ、人造魔獣ですか? 以外は街中に人気はありませんでした。多分家の中で息を潜めている者もいるとは思いますが。それと、城内も同じ状況で、石像となった同胞と人造魔獣以外は見当たりませんでした」
「ということは、向こうの戦力は人造魔獣を除けばヴァーミリアンが最初に見た数人で全てなのかもしれないな。人造魔獣さえなんとかすれば、あとやばいのはゴルゴンの首だけか?」
クロトが腕を組みながら言うと、アメリアも「油断はできませんが」と言いながらも同意する。
「そんで、こっちの戦力はどんな感じなんだ、ヴァーミリアン?」
「ああ、いずれの島にも石化する危険も踏まえて、それを恐れぬ者のみを派遣する様に伝えている。そうだな、元からいた人数と、応援に来た戦士、そこから船に残るものを考えると、、、50名には届かぬくらいか。ここにムーンウルフが参加してくれるとして、上手くして60人そこらといったところか」
「全員で港から攻め込むのか?」
「いや、できれば手勢を分けて攻めたいと考えている。ロックには主要な港以外に、小さな港がいくつもある。最低でも2ルート、できれば3ルートから攻めることで相手の戦力を分散させたい」
「そうですね、敵に判断できるものが少ないのであれば、分散する方が効率的ですね。あとできれば、そのうちの1部隊を先行させて囮とするのは?」
アメリアの提案にヴァーミリアンも頷く。
「それは良いな。人造魔獣が単純な動きしかできないなら、先行隊が派手に暴れて注目を引けば、そいつらをまとめて叩けるかもしれぬ」
あとは援軍を呼びに回っている船が戻って来てから、夜にでもまとめよう。と言うことで、一旦お開きとなった。
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その夜、現状集まれる全ての戦士が集まったことで、改めて部隊編成となる。
クロト達は序盤の激戦区となるであろう、先行の囮部隊への助力を申し出たが、
「この無人島上陸時の状況を見る限り、君たちは重要戦力だ。別働隊の1つを任せたい」
と言うヴァーミリアンの言葉により、エル・ポーロとムーンウルフの混成部隊で1部隊とし、ポロンポの商船を使って島の北側から上陸すると言う手はずになった。
その後ヴァーミリアンが自ら囮部隊の指揮を買って出るも、側近の者達よりクロト達と全く同じ理由で却下され、獣人の精兵で構成される別働隊と共に東側から上陸することとなった。
と言うか、当初側近達はヴァーミリアンには船上で指揮を取る様に強く進言していたが、ヴァーミリアンが頑として譲らなかったので、妥協点として別働隊で落ち着いた。
ロックを代表する西の港からは、応援の戦士を中心とした者達で当たることに。この部隊はとにかく騒いで人造魔獣を引きつける。最悪、海に飛び込めば人造魔獣が泳げないことは証明されているので、少しでも危なくなったら海に逃げることが厳命された。
「港で騒げば、家の中で息を潜めているであろう住民にも希望の声となる。とにかく騒げ! 派手に行け!」
「「「おおおおお」」」」
ヴァーミリアンの檄に、獣人達が吠える。
「作戦開始は明日! 闇夜に紛れて出航じゃ! 良いな!」
「「「うおおおおおおおおお」」」」
先ほどよりも大きな叫びは、月に吸い込まれる様に天へと登っていった。
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翌日、夕方になるまで、ムーンウルフの増援の船が無人島に姿を表すことは、なかった。
いつも読んでいただいて有難うございます。
100話あたりで原稿用紙1000枚超え、いける! 、、、のかな?




