8)旅人、置いてけぼり
藪から現れたグラマラスな美人、ここは王宮の舞踏会じゃないよ?
アメリアが第一妃と呼んだという事は、本当に王妃なの?
で、なんでこんな所に? バーンの仕込み?
「アメリアはともかく、、、バーンとシーラは頭が高いのではありませんこと?」
めっちゃ艶っぽい声ながら、どこか背筋がゾワッとする声。この人苦手かも。
とは言え、状況がさっぱり分からん。とりあえず聞いてみるか。
「あのー「貴方にさげる頭はありませんね」」
バーン、ことごとく被せてくる。俺なんかした? あ、王誘拐してバーンも煽ったわ。
「不遜ですね。王に言って処刑してもらいましょうか」
「貴方が本当の妃なら、甘んじて受けましょう。が、このような場所にお一人で、何をしに? そもそもどうやって?」
それ、俺が今聞こうとしていたんだけど?
「あらあら、愛しの我が王が連れ去られたのですよ。私は心配でいてもたってもいられませんでした」
「だから、一人で王を追った、と?」
「もちろん」
睨み合う双方。あの、我々関係ないのでしたら、別のところでやってもらえませんか? ちょっと忙しいのですよ。
「白々しいというか、この状況ではもはや滑稽ですね。私が追ってきたのは、王たちではなく、貴方ですよ。皆が正門から出ていく彼らを見ている中、城門の死角から馬よりも速く走って追っていく貴方をね」
「ほお? わたくしが馬より速く走ってここまで来た、と? 近衛騎士団長の冗談はあまり上手くありませんね」
ほほ、と手を添えて笑う第一妃。
「どういうことですか? バーン」
緊迫の会話に参戦するアメリア。ここで割って入れる姫。強い。
「今言った通りですよ。まぁ、そろそろ動きそうだとは思っていましたが、あなた方が予想外の展開を生んでくれたので、好都合だと思いまして、“アレ”を張っていたのですよ」
「では、本当に私たちを追ってきたのではなく、最初からプライア様を。。。」
信じられないと言った表情でバーンを見るアメリア。
「はい。クロトさんと姫がグルなのは結構序盤で分かりましたから、おそらく城内から出るための茶番であろうなと」
「そんなに分かりやすかったですか?」
「姫やクロトさんはともかく、シーラの演技は流石に不自然すぎでしたからね。予定通りに動きすぎというか」
「なっ、そんなに私は分かりやすくない!」
シーラが抗議の声を上げる。
「そんな事は後回しです。まずはそちらの第一妃、、、の偽物ですね。こちらとケリを、、」
瞬間、第一妃プライアがその格好と肢体には似合わぬ速度でバーンたちとの距離を詰める。
狙いは、、、アメリアか! 俺は加速ブーストをかけ、アメリアをかばうように前に出る。
だが、それよりも早くガキンという金属音とともに、プライアが跳ね返されて後ろへ下がる。
「私の前で、そう簡単に姫に触れられると思うな!」
この短時間で発動したとは思えない、高度な防御術式のシールドがアメリアを包んでいる。
展開しているのはシーラ。普段の沈着な雰囲気からは想像できない覇気でプライアの前に立ちはだかる。
「ふふ、ロッセンの赤き壁の二つ名は伊達ではないという事ですね」
ペロリ、と唇を舐めながらプライアが不敵に笑う。
「ではこちらからも」
先ほどまでアメリアの横にいたはずのバーンが、プライアの背後から一閃。だが、プライアも尋常ではない反応速度で避ける。
「清流のバーン、こちらも厄介な事」
なに? シーラそんなかっこいい二つ名があるの? と考えている間に続けて登場する二つ名。情報処理が追いつかないのでちょっと待ってくれる!?
だがクロトの意思は全く反映される事なく、流れるような剣技と、それを避け続ける美女のせめぎ合いは続く。
「姫、私と安全な場所へ」
シーラがアメリアを誘導しようとするが、アメリアは首を横に振る。
「私もある程度の防護壁は張れます、それよりもバーンの援護を。まさかとは思いましたが、あれは間違いなくプライア様ではありません。バーンがあれほど手こずるのは初めて見ます。シーラ、頼みます」
「はっ。しかしくれぐれもお気をつけて!」
言うと同時にバーンの方へ駆け寄る。が、バーンがシーラが駆け寄る方へ目をやった瞬間、プライアは高く飛び上がり、幹の上に降り立った。
「ふふふふふふふふ、まぁまぁ、やりますね。本当はあなた達のどちらかは手駒にしたかったのですが、そうも言ってられませんねぇ。まぁいいでしょう。では、あなた方は王の奪還に失敗して、討ち死に。その混乱のなか、王も重傷を負い、その傷がもとでお亡くなりになぁっていただくの」
プライアの笑顔は次第に狂気じみていき、それと同時に背中が膨れ上がる。
バキバキという音とともに膨れた背中から足が生え、その異形があらわになっていく。
わずかの間に四本の足が生え、六本の足が並ぶ光景に人間の下半身の名残はない。体の大きさも先ほどまでに倍に。
その姿は、俺でも知っている伝説の魔物。
「そんな、、、まさか、、、ア、アラクネ。。。。」
アメリアが呟いた。




