75)連合議会①
3話ほど説明の多めの回となりますが、お付き合いいただければ幸いです
ついに連合議会の日がやってきた。
”ついに”などと言ってはみたが、クロト達には決定権があるわけでもない。
実際問題、各国の危機感をどこまで上げることができるかはゲラント達、ロッセンの仕事となる。
気楽とは言い難いが、そこまで気負う必要はないのだ。
「もちろん、私たちも今の状況が決して安穏としていられるものではないということは、ちゃんと伝えなければなりません」
アメリアに言われるまでもなく、アーミーアントの襲撃やヘカトンケイルと、あのとき天井にいたヤバイ”何か”その危険性を伝えるために、アメリアを中心に入念な打ち合わせを行ってきた。
会場は城の中心にある、広くて天井の高い半円状の部屋だった。
室内には一番前から2名ずつ座ることのできるテーブルが放射状に5列、それぞれ一列目のテーブルの背後には、階段状に高さの異なるテーブルが5段にわたり据えられていた。
ちなみに一番前の席のみ1人席になっている。各国の代表者が座るのだろう。
そのため最大で各列で各国ともに9名が参席できるようになっている。
さらに、それとは別に中央壇上の両側に席が用意されており、こちらは中立な立場の者や証人が待機する場所となる。
なのでエル・ポーロはこのサイドの席に着席。
先に着席して待っていると、順次各国の列席者が入室してくる。
参加人数は各国まちまちだ。
連合議会の招集をしたロッセンは先頭にゲラント。2列目の席にバーンと大使のヘラル。その背後に6名の文官が着席し、9名分全ての席が埋まる。
エルトラは先頭に駐在大使が。クートとザーバルは2列目。ザーバルがクートに何やら話しかけている。ザーバルの解説を聞きながら議会の流れを学ぶのだろう。クートと旅路を共にした部下も全員座り、こちらも9名が並ぶ。
マルメは当然イグナシアが一番前。2列目に大使が1人で座る。さらに3〜5列目にも文官が1人で着席して5名の体制。
自国内での襲撃に備えなければならなかったファウザは、一列目に大使、さらに4名の文官が追随して、2列目、3列目に2人ずつ着席した。
最後に入室してきたランカータは3名。先頭のローブを纏った妙齢の女性が大使で、後ろに1名ずつ席に着いた。
クートの学びの場として列席したエルトラは例外として、列席する予定のなかったイグナシアを減らすと、当初の人数はロッセンが9名、ファウザが5名。予定ではマルメが4名、ランカータが3名と、一連の事件の重視度合いがそのまま参席数に反映されたように見える。
さらに司会進行役の高齢の男性が入場。
クロトたちとは反対の席の端にある進行席へ、翁がゆっくりと座ると、警備の衛兵が重そうな扉をゆっくりと閉めた。
「それでは、連合議会の開催を宣言いたします」
翁がゆっくりとした話し方で、ゲラントへと手をかざす。
スッと手を上げてから、立ち上がるゲラントはそのまま壇上へ。
「ロッセン王族、現王長子のゲラントである。まずは各国の賢人達がこの場に集まっていただいたことに感謝の意を。この度の連合議会では、ロッセン及びファウザで起きたいくつかの事件と、看過できぬ謎の勢力の存在について報告と今後の対応についての話し合いの場を持ちたいと思う。どうぞ宜しく願う」
そこで一旦簡単に頭を下げた。
「さて、本題に入る前に私事ではあるが各国に申し上げたいが宜しいか?」
一拍おいて席を見渡し、異論がないのを確認してからゲラントは続ける。
「この度、当国ロッセンは現王が勇退をご決意なされた」
ここで多くの席からざわめきが溢れる。
「これは後に話す本題と無関係ではない。しかし、どのような話し合いとなるか分からぬため、先に報告させていただく。元王は此度我が国で起きた一件について、自身の不明を悔やみ王座を退く。現王の勇退により、不肖ながら私、ロッセン=バルデ=ゲラントが王位を継承する運びとなった。追って各国には使者を派遣させていただくので、承認の儀、宜しくお願い申し上げたい」
言い終わると、今度は深く頭を下げた。
パン、パンとイグナシアが手を叩いたのを合図に、さざ波のように拍手が広がる。拍手が鳴り響く頃合いを見計らって、ゲラントは顔を上げ
「皆々様の温かいお気持ちに感謝する」と述べてから席へ戻った。
ゲラントの着席を確認し、議長が本題へと話を進めようとすると、イグナシアとザーバルがほぼ同時に「発言の許可を」と挙手。ザーバルが譲る。
議長の許可を確認してからイグナシアが壇上へ。
「マルメ第一皇女のマーロウ=ド=イグナシアである。急な参列となった非礼を詫びる。我々も1つ報告事項がある。もうご存知の方も多いかと思うが、当家の愚弟、ダスクの件である」
イグナシアが言った通り、ダスクの一件は広く知られているので、今度は呟き一つも上がらない。
「度重なる他国への不遜な態度、この度に至っては王証を前にして分を弁えぬ発言を繰り返した結果、王族としての資格を抹消されることとなった。今後ダスクは「マーロウ=ド」の名もつかぬ、ただのダスクとなった。各国ともにそのように宜しく願う」
沈黙の中、イグナシアは毅然と席へと戻った。
入れ替わりに登壇したのはザーバルとクートだ。クートは明らかに緊張してガチガチ。
「エ、エルトラの王太子、ルパ=クートじゃ、、である。本日は後学ため諸兄らに混じり本議会に参加する、、、させて頂く。若年ゆえ至らぬこともあるかと思うが、宜しくたの、、、宜しく願う!」
たどたどしくも挨拶を終えたクートに向けて、先ほどのゲラントへの時とはまた違った、柔らかな拍手が向けられる。
ダスクの件で重苦しくなった空気が変わったところで、議長がコホンと咳払いをして席を見渡す。
「他に今のうちに話しておきたいことがございます方はおられるや?」
誰からも声が上がらなかったので、今度こそ翁が声をはる
「では、本議会の本題について、まずはロッセン近衛騎士団長、バーン殿よりご説明いただく」
クートの挨拶で和らいだ空気が再びぐっと引き締まったのが感じられた。
いつも読んでいただいてありがとうございます。100話まで掲載予約完了しました!
今度もコツコツ連続更新を目指しますので、宜しければ引き続きお楽しみくださいませ。




