7)旅人のハッタリは本人も予期しない
バーンには再び下がるように言い、アメリアとシーラに命じて、王をしっかりと縛って、布で耳栓をして、目隠しをして、猿轡を噛ませる。
その上で馬に荷物のように乗せる。よし、バッチリ。
先ほどと同じ並び、先頭にシーラ、俺、アメリアの順で馬を走らせ、一気に王都を駆ける。
幸いというか、さすが王都、大通りは広く中央部は馬車などが走るために空けられており、歩行者を気にせずに進むことができる。
まぁ、色々ぐるぐる巻きにされたおっさんが馬に乗せられているので、道ゆく人の何人かは不思議そうな目でこちらを見ている。
しかし、先頭にいるシーラのおかげで、一見すると騎士が犯罪者の護送中に見えなくもないのは嬉しい誤算。
なお、アメリアは顔ばれ防止にフードを深く被っている。
短時間で考えた作戦だから、正直いろいろ穴だらけだからね。
最悪力ずくで王様拉致するつもりだったし。
シーラのおかげで正門も問題なく抜けた。
王都を出て東の街道はしばらく開けたところが続くが、正門から見えなくなるくらいの場所から先は鬱蒼とした森の中へ入る。
シーラの話では、この森はなだらかな丘陵になっているらしいので、頂上のあたりで王を縛っておいておくつもりだ。
シーラ曰く、東の国境までは馬なら全力疾走でおよそ、一日半ほどとのこと。馬に無理をさせるのもなんだから、実際にはもう少しかかるか。
一応、合図の前に追撃を始めたら王の安全は保証しないと言ってあるので、こちらの姿が見えなくなったら即追撃とはならないとは思うが、おとなしく合図を待つとは思えない。
王を縛って仕掛けを準備する時間を考えると、それほど余裕はない。最悪、追っ手を見つけたら王を捨てて逃げるケースも考えておく必要がある。
そんなことを考えながら馬を走らせていると、アメリアが馬を寄せてきた。
アメリアは馬に乗れると言っていたが、本当に上手い。下手したら普段馬に乗らない俺より上かも。
「こんなにうまくいくとは思いませんでした」
王都から見えなくなって安心したのだろう。先ほどの緊張でこわばっていた顔が嘘のような笑顔。
「おい、王に聞こえるんじゃないか?」
「大丈夫ですよ。聞こえないようにしーっかりと耳栓しておきましたから」
君のお父様で王様ですけど、良いの?
「いいんですよ、特にここ1年くらいお父様は弟を王にすることだけで、私や兄の話など聞く耳持たない感じでしたから。ちょっと痛い目見たほうがいいです」
「と、そういえばそのお兄さんには会えたのか?」
するとアメリアの顔が曇る。
「実は会えなくて。帰城してすぐの作戦でしたから、たまたま巡り会えなかったのか。。。いつもいらっしゃる執務室にはいなくて、側近の方も見当たらなかったので少し気がかりです。何か大きな問題が起きれば、短時間の滞在とはいえ私の耳に何も入らないという可能性は低いとは思うのですが。。。」
「そうか、心配だな」
「はい。もし何らかの形で捕らえられているとしても、対外上すぐに殺されたりすることはないとは思いますが、なるべく早くお姉様に助けをお願いしなければ」
そんな会話をしていると丘の頂上辺りに着いた。
「この辺りに縛っておきましょう。良さそうな場所を探してきますので、少しお待ちください」
シーラが馬を手ごろな木に繋ぎ、茂みに入る。少しすると戻ってきて、この先に手頃な空間があるという。
シーラの誘導で進んでみると、なるほど手頃な空き地だ。
こんな状況でなければ、弁当でも持ってきて木漏れ日の下でのんびりしたい雰囲気。
アメリアも思わず、素敵なところですねと呟いた。
「信号弾を設置する。クロトも手伝ってくれ」
テキパキ準備を始めるシーラを手で制して、指を立て口に近づける。 静かに、のポーズ。
皆が動きを止めると、周囲はわずかな風で葉が揺れる音しか聞こえない。
「いるのは分かっている。姿を現せ」
俺は言った。皆、身じろぎもしない。そして誰も出てこない。
実は誰かいる気配など俺にはわからない。そんなスキルも存在するらしいが、俺にはない。
ただ、誰かつけて来ているのなら今ので姿を表すかもしれないな~と、カマをかけてみただけ。
今のところ誰も現れないので、ちょっと恥ずかしいが「気のせいか」と達人風に言って誤魔化すつもりだ。
誰も現れない。
誰も現れない。
誰も現れない。うん、俺は追跡者がいるとは言っていない。気配的なものを感じただけだ風に真面目な顔をして
「気の「流石ですね」」
藪の中から音もなく現れたのは、近衛騎士団長バーン。鎧を脱いだ身軽な姿。マントは青なのでイメージカラーなのかな?
つか、そのタイミングで出てくるの? 俺がいうのも何だが間、悪くない? っていうか、なんで藪の中から音もなく出てこれるの? 怖い。
「んっ、おほん。君の気配などお見通しなのじゃよ」
「じゃよ?」アメリアが突っ込む。どど動揺などしていない! 断じて!
そんなことより、完全なルール違反! アメリア、語尾のことはもういい。あの人約束全く守ってませんよ!
「ご心配なく、騎士団は追ってきていません。私の合図があるまで動くなと命じてきました」
「どういうことですか?」質問を投げながら、シーラはアメリアをかばうような位置にすっと移動する。
「その前に、クロトさんもお気づきだとは思いますが、そこで聞き耳を立てている貴方。気配がダダ漏れですよ。もう出てきてはいかがです?」
ふっ、バーンよ、二番煎じは良くない。気配なんてそうそう分からないんだぜ。って、誰か出てきたんですけど?
「やはり、貴方様でしたか。。。」「なっ」「えっ!? なんでこんな所に!?」
バーン、シーラ、アメリアが三者三様の反応を示す。
特にアメリアは幽霊でも見たような驚きの表情。震える声で続けた。
「プライア様、、、? なぜ、なぜ、第一妃がここに、、、?」
はい! ここに状況についていけてない人が一人いますよ! 置いてけぼりダメ! 絶対!




