66)クロト、ジュリアとお出かけする
翌日朝食を皆でとっている最中、アメリアより
「王都や姉様、バルゲドの事務官などに手紙を出すので今日は休息を兼ねて引き籠ります」
との宣言があり。シーラもそれを手伝うと言う。
アーヴァントは「この間の宝具の古代文字の解析を進めたい」とのことで、こちらも終日宿から出ないらしい。
「ジュリアはどうしたい?」クロトが聞くと
「うーん、せっかくだから買い物に行きたい!」
と元気の良い返事が返ってきたので、クロトとフレアが一緒に出かけることとなった。
「ジュリアは何か欲しいものがあるのか?」
「良さそうなマントがあったら欲しいかな。あと、うーん、、お菓子!」
アメリア曰く、レーバールはマルメにおける商業の中核都市とのことで、商店や品数は物によってはマーロウ以上とも言われている。
特に果物と魚介類を中心とした食料品が豊富で、マーロウ周辺で取られた特産品と、バルゲドの港経由で輸入された諸島の名産品、さらに東の国の特産品がこの街に集まり、商人がそれぞれに需要に合わせて買い求め、再び各地へ散って行く。
とはいえ、新鮮なものは周辺で採れたものばかりで、大抵のものは干したり乾燥させたりした加工品。
旅先でもおおいに役に立つものなので、ジュリアが美味しそうと言ったものを中心に買い求める。
野営の夕食はシェフ・ジュリアとシェフ・アーヴァントにお任せすることに決まったからな。
代わりに夜間の見張りはクロトとシーラの交代制。アメリアは馬の手入れ全般を担当することで落ち着いた。
昨日飲んだ果実水の元となった果物も売っていたので、2つ買ってジュリアとかじりながら街を歩く。
パーティの中でも亜人のコンビであるが、見た目は人間寄りのクロトとパーカー&マントで耳と羽を隠したジュリアは、違和感なく人混みに溶け込むことができていた。
むしろ一番目立つのはフレアである。横着をしてクロトの肩からだらりと前足を垂らしている。
遠くから見たらタオルか何かを肩にかけているように見える。
近づくと猫がテロンとなっているので、道ゆく人から「かわいい」などの声が上がっていた。
無論、フレアは我関せず。器用にバランスを取りながらクロトの肩でウトウトしていた。
マントを求めて服屋を何件か覗くも、季節は暑さが本格化する頃合い。
需要の少ないマントの品数は少なめで、ジュリアのお眼鏡に叶う物がなかなか見つからない。
「うーん。いっそ自分で作っちゃおうかな。。。」
そんなことを言い始めたジュリア。
「え? ジュリア自分で服とか作れるのか?」
「うん。村だとあんまりお店とかもなかったから。自分たちで布から縫ったり、破れても繕ったりしてたよ」
「へえ、それ凄いな。じゃあ、良さそうな布と裁縫道具を買ってこう。今度俺にも作ってくれよ」
と言うことで方向転換。道具屋でジュリアが使いやすそうな裁縫道具を探す。
「これなどは如何ですか」
親切な道具屋の店主がオススメしてくれたのは、外箱の装飾が可愛い裁縫セット。
「あ、可愛い。これがいい。これにします!」
ジュリアも即決。その後再び服屋などを回り、良さそうな布を何枚も購入。
多くない? と聞いたら
「みんなにも作ってあげるので」
とのこと。ええ子や。
そんなこんなで目一杯買い物を堪能し、気がつけば昼も大きく過ぎた時間になっていた。
「宿に戻ってもアメリア達はもう昼食を済ませてるだろうし、どこかで飯食ってから帰ろう」
クロトの提案にジュリアも頷く。
「ジュリアはなんか嫌いなものとか、食べられないものないか?」
「なんでも食べられるよ! 肉も魚も果物も好き! クロトお兄ちゃんは?」
「やー、苦手なものちょっとあるなぁ」
「えー! 大人なのに!」
エドラック=クロト、23歳。苦味のある野菜が苦手です。
ジュリアがチーズの料理が食べたいとの事だったので、服屋の女主人にオススメのお店を聞いて向かう。
オススメされた”らんらん亭”という、なんだか愉快な名前のお店に入った。
昼時も過ぎたので店内はまったりとした時間が漂っている。
お店自慢の一品という、肉厚の白身魚をチーズで挟んで、揚げ粉をつけて揚げたものを更にパンに挟んだ「らんらんサンド」というのを頂く。
揚げたての白身のざっくりとした食感が心地よく、中からは食べでのある白身と溢れ出るチーズ。ボリューム感満点の一食である。
なお、付け合せに出てきたサラダの中に、クロトの苦手な苦い野菜があった。
残したらジュリアに怒られた。
食後、希望橋のたもとにせり出した川辺の公園で休憩。
ぼんやりと川を眺める2人。クロトが何の気なしに口にする。
「バルゲドで用が済んだら、エルフの里を探して連れて行ってやるからな」
そう伝えると、ジュリアは下を向いて元気なさそうに「うん。。。」と言う。
「やっぱり、里に行くの不安か?」
ジュリアは首を振る。
「ううん。不安もあるけど、そうじゃないの。あのね。。。もし、エルフの村が見つかってお母さんに会えたとして、、、」
「会えたとして?」
ジュリアは一瞬の逡巡の後、覚悟を決めたようにクロトを見る
「その後もボク、クロトお兄ちゃん達に付いて行っちゃ、、、ダメかな?」
「いいぞ?」
「え? いいの?」拍子抜けしたようにおうむ返しするジュリア。
「ああ、そういえば前にアメリアにもおんなじようなこと言われたな。ちゃんとお母さんに話をするならむしろ大歓迎だ」
「うん。もちろんちゃんと話するよ! よかった〜」
「え? 断られると思っていたのか?」
「うん。ボクまだ子供だから、、、」
「いや、戦力的に見てもその辺の大人より上だぞ。その上料理もうまいし、裁縫もできる。何より明るいジュリアはみんな大好きだぞ。パーティにいてくれるならこんな頼もしいことはない」
そう伝えると、ジュリアの眦に光るものがあった。
「でも、お母さんと一緒にいなくても、いいのか?」
「うん。ちょっと寂しいけど、でもあの里にいい思い出もないし、住みたいとは思わないから」
「そうか。じゃあ、今度行ったら嫌な事してくる奴に、弓矢ぶっ放しちゃおうぜ」
そう伝えると、ジュリアは泣きながら元気よく「うん!」と笑った。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
タイトル「勇者は」の部分いらない気がして「通りかかった「だけ」なのに!?」に変更しようか考え中です。勇者か?




