63)アーヴァント、欣喜雀躍
昨日の地震で被害に会われた皆様の一早い復旧をお祈り申し上げます。
序盤のサブタイトルいくつか変更しました。併せて少し読みづらいなと思った所を修正しました。話の筋に影響はありません。いずれ書き切ったら、最初の方は少し手直ししたいなぁと思っています。
水面を眺める事しばし。コムタとブルドが木箱を積んで戻って来た。
クマの獣人であるベア族のブルドの体格をもってしてもなお重たそうな箱をクロト達の前に慎重に下ろす。
「いやあ、何かお礼をと考えてみたはいいものの、我々、その日暮らしの根無し草。荷物といえば商売道具と酒と夢。あとはささやかばかりに旅先で見つけたガラクタが少々」
コムタはそこまで言って、頭に乗った小さなシルクハットを両耳を使って器用にくるりと回す。
そうして妙に芝居掛かった姿勢で、箱に手をかざした。
「酒と夢は我らの魂。然れども恩を忘れるは一座の恥。どうかこのガラクタの中に、皆様のお眼鏡にかなうものがあれば幸甚でございます」
そこまで言って胸に手を当てて深々と礼。
その際の視線で何かを察したクィッチが、クロトの横から高く飛び上がる。
そのままくるくると回転しながら箱の上に音もなく着地。
一旦箱の上でポーズを取ってから、今度は後ろ向きに跳ねて、ブルドの頭の上に着地。
ブルドは微塵も動かずに平然としている。
クィッチに気を取られているうちに木箱の側面が全て開いて、中が見えるようになっていた。
「すごいすごい!」と無邪気に喜ぶアメリアとジュリア。
お礼をされに来たはずなのに、クロトも思わず投げ銭しそうになった。
「もう十分なお礼を貰った気がするな」シーラも同じ気持ちみたい。手にコインを持っていた。
一人反応が違うのはアーヴァントだ。
「おお、まさか、、、信じられん、、、、?」
箱の前にひざまづき、中のものを舐めるように見つめている。
「どうした?」クロトの問いには返す事なく、その姿に若干引き気味のコムタに視線を向ける。
「これは各地で集めたものなのか?」
「い、いえ、、実はこれは先日雨宿りをした古い祠の中で、たまたま見つけた地下にあったものです。。」
「地下? どんな感じだった?」
「どんなと言われましても、、、しっかりした作りで部屋が一つだけありました。もうずいぶん使われていなかったようで、私らはてっきり、かつてどなたかの隠れ家だったのかと思いましたが」
そこまで話したところで、慌てて弁明のように続ける。
「あ、決して盗んだわけじゃありませんよ。入り口のドアも朽ち果てる寸前で、祠もそう長くないうちに潰れそうな状況でしたので、このまま埋まってしまうくらいならと、中のものを軒並み持って来た次第でして」
クロトは、それは普通に窃盗だなぁと思ったが、わざわざ突っ込むつもりものないので黙っていた。
「そうか、、、、分かった。これら全て、言い値で買おう。いくらだ?」
アーヴァントの提案に驚くコムタ。
「へ? いや、お礼、、、」
「断言はできないが、これらは宝具の可能性がある。きちんと調べたいが無償でもらえるような物ではない。騙すような真似もしたくないので、ちゃんと金を払おう」
「そう言われましても、、、私らも価値などわかりませんので、どうせ道具屋に持ち込んでも二束三文の物ですよ?」
「それは価値がわかっていないからだ。では私が知っている相場で払う。それでいいか?」
「いやー、それは構いませんが、お礼、、、じゃあ、こうしましょう。あなた様が言った値段の半額でお譲りします。いくら安くても文句は言いませんので。それでどうですか?」
「貴殿らがそれでいいなら文句はない。では」
といって、アーヴァントは結構な金額をコムタに提示する。半額だとしても馬車を1台買えそうな金額だった。
「こ、こんなにですか!?」
コムタのみならず、クィッチとブルドも先ほどの状態のまま固まっている。
「不満か?」
「いいえ! いいえ! とんでもない! これでしばらくは一座が遊んで暮らせますよ!」
「どう使うかはそちらの自由だ。では商談成立だな」
アーヴァント自らの金が入っている袋を無限の皮袋から取り出し、提示した金額を渡すと、いそいそと箱の中身を皮袋へ入れていく。
さして大きくない皮袋に目の前のものが次々と吸い込まれる様にも驚きながら
「えー、、、っと、あなた様たちは、一体?」
まぁ、そうなるよね。
しかし自由人らしいこだわりのなさで追求することをやめたコムタは、想像以上に大きな取引となったのでホクホク顔でお金を懐に入れる。
「いやぁ、思わぬことろでいい思いができました。そうだ、一座の割符も差し上げますので、もし獣人相手に困ったことがあったら私たちの一座の名前を出してみてください。これでも顔は広いので、運よく知り合いであれば解決することもあるかもしれません」
「一座の名前?」ジュリアが首をかしげる。
するとようやく自分のペースを取り戻したのか、コムタは大仰に手を広げ
「これはこれは! 私としたことが一座の名乗りを忘れているとは! 我々は旅一座「羽無しの雄鶏」と申します! 皆々様! 今後ともどうぞお見知り置きを!」
言うと同時にブルドがコムタの体を上空に放り上げる。おどけたように慌てながら落ちてきたコムタは、ブルドの頭の上で立ちっぱなしのクィッチがかざした両手の上に当然のように着地。遅れて落ちてきたシルクハットがすぽっと頭に収まる。
クロトたちは今度こそ、拍手とともに投げ銭をした。
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クロトたちを見送り、コムタは手で撤収の合図をする。
「割符まで渡しちまって、良かったんですか?」
先程までののんびりとした口調はなりを潜め、低くハッキリとした口調でブルドが喋る。
「構わん」
コムタは短く告げる。ブルドはそれ以上聞くことはしない。
「泣く子も黙る大盗賊、大翼のカラスの団長がお宝を半額で譲るなんて、明日は大雨ですね!」
クィッチが茶化すとコムタが再び頭をひっぱたく。
「馬鹿野郎。元はと言えばお前が調子に乗ったからだろうが。それに別に嘘をついたわけじゃない。たまたま見つけたモンだ。どうせ次の街で二束三文でも売っぱらっちまうものだったからな。むしろ大儲けだ」
恨めしそうに睨むクィッチを、鼻であしらうコムタ。
「それに俺たちは盗掘が仕事じゃねえ。そうだろ?」
「はいはい、仰せの通りです。大義賊コームターランド様」
そう言ったクィッチの頭を「返事は一回だ」とまた引っ叩くのだった。




