6)旅人は騎士団長と交渉する
「馬と、それに縄、猿轡にできる布もだ。急げ」
矢継ぎ早に指示を出すクロトの言葉を、シーラが復唱。
「だ、そうだ。王と姫の命がかかっている。急いで準備してくれ」
城の正面門前。シーラの指示で周囲の兵士が慌ただしく準備に走る。クロトはさらに、右往左往している下っ端の兵を捕まえて、こう言った。
「一人、騎士団の中でも話のわかる奴を呼んでこい」
すると、おそらくすぐ近くに隠れて隙を狙っていたのであろう、切れ者そうな騎士が一人近づいてきた。
いかにもなスマートさに、青い鎧をまとっている。っていうか、ここの騎士って鎧の色統一しないの?
さっきいた近衛兵の鎧も、銀色が多かったけど、コロンコロン君みたいな黒い鎧のも何人かいたし。そう言えば、この青い鎧の人、謁見の間で一人離れた場所に立ってなかったか?
「近衛騎士団長、バーンです。私が話を聞きましょう。剣は置いてきました。これでよいでしょう?」
もう剣持っていようがいなかろうが強者のオーラを纏ったバーンさん。友好を演出するのに笑顔で近づいてくるけど、こっわ! 目、笑ってませんよ。端正な笑顔がよけいこっわ!
「構わない。王の引渡し方法について話がしたい」
「何故です? 王都を出たら解放するのではありませんでしたか?」
「約束通り解放はする。そこからの人質もいるしな。ただし、王都を出た直後に解放したら、あんたらが一気に追ってくる可能性があるだろ? それを避けるために少し離れた場所に、時間を決めて解放する」
ここからがこの作戦のキモ。どれだけ騎士団の追跡開始時間を遅らせることができるか。
可能な限り動きを抑えて、なるべく逃走距離を稼ぎたい。そこで3人で考えたのが信号弾を使った方法だ。
手頃な場所、できれば見晴らしはあまり良くない場所がいい。そこに王を縛り付けて、併せて紐を引くと発動する信号弾と縄をつなぎ、信号弾を高いところに引っ掛けて重しもつける。
王を縛っている縄が緩めば重石が動いて、紐を引いて信号弾が上がる。という仕組み。加えて王を縛る縄を本人が頑張れば徐々に緩むようにしておけば、適当な時間をかけて自分で紐を緩めて、縛られている場所が信号弾で分かる。
「つまり信号弾が上がったところを目指して、あんた達は救出に向かう。その間に俺たちはその場を離れる」
「なるほど。しかし、そこに王がいるという保証は? 無事であるという保証も」
「そこは信じてもらうしかないな」
「今。その王に刃を添えている男を信用しろと?」
まぁ、それはそうだよね。
「この状況が、お願いではなくて命令だと悟ってほしいところだが、、、個人的に王に恨みがあるわけではないのは、謁見の場にいたバーンもわかっているだろう。あくまでこれは、行きがかり上、俺の安全を確保するためにやっていることだ。それに万一、王を斬ってみろ。無事逃げたところで連合王国から追われることになる。それはそれで面倒だからな」
バーンは即、「その理屈では、ここで私が貴方を取り押さえようとしても、王を傷つけることはできないことになりますが?」と返す。
頭の回転速いなー。さすがの騎士団長。コロンコロン君とは違うよね。
「一つ誤解があるな。俺は【面倒だ】と言ったんだ。手間と怪我人が増えるだけで、特に俺としては王国連合から追われても問題ない」
「強気ですね?」
友好的(?)な笑みが、挑戦的な笑みに変わる。どっちも怖いけどな! 全く目が笑ってないから!
「自分で言うのもなんだが、ドラゴン程度なら簡単に退けられるんだぞ? 連合がどれほど本腰入れてくるかな? そんでどれだけの被害を覚悟するかな? あと、ここの王に侵略戦争を手伝うように強要されたって言いふらすぞ?」
流石に渋い顔をするバーン。
「ただ、先に言ったが俺の安全が確保さえされれば、王には興味がない。そっちの姫にもな。なのであんた達が無茶しなければ、お互い被害なしで済む。それでもどうしても、、、と言うのなら、ある程度の損害は覚悟して動いてほしい」
少し悩んだようだが、最終的には合意してくれた。笑顔で「もし約束を違えたら、覚悟しておいてくださいね」と言いながら。
だから怖いって! 目!




