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176)それぞれの決断


出航準備の間クロト達は待機。

手伝おうとしたがポロンポにやんわり断られた。


フォニアは側近と共に、先日会った記者のリボルとバーバーとの打ち合わせに出かけた。


アメリアが同行を願い出たが、こちらもやんわりと、、、いや、「クロトとイチャイチャしておれ」と、はっきりと断られた。


そんなわけで今、部屋にはエル・ポーロの面々と、パオロ、ムジュア、クィッチにエルフのフィルがいる。


先程まで執事のロアルさんと留守番をしていたフレアが「くあぁ」と欠伸をしたのを皆でなんとなく見つめていたのだが、そこでアーヴァントが口を開く。


「ちょっと今のうちにみんなに提案しておきたいことがある」


そう言うアーヴァントに皆の視線が集まる。


「今後の事だ。端的に言おう。クロトが王になった時、皆はどうするのだ? 、、、、まあ、アメリアだけは聞くまでもないが、今のうちに考えておいたほうが良いと思うのだ」


「アーヴァントさんはどうするの?」ジュリアが聞く。


「私はクロトが許せば、建国の手伝いをしたいと思っている。先ほどのファウザ王の発言、私の意を汲んでくれたものだろう。クロト、どうだ?」


聞かれたクロトに断る理由など1つもない。


「助かる。頼むよ。あーこれで俺何にもしなくても、アメリアとアーヴァントで国、できちゃうんじゃないか?」とおどけて見せると、


「そうだな、後悔するほど働かせてやるから安心しろ」と珍しく冗談で返される。




「僕もお手伝いするよ!!」元気良く宣言したのはジュリアだ。


「良いのか? エルムと一緒じゃなくて?」


「前にも言ったけど、会いたくなったら会いに行くからいいよ。クロトお兄ちゃんとアメリアお姉ちゃんの国って、なんか面白そう!」


2人の国、と言われてアメリアが顔を赤くする。


そんなアメリアが、シーラに「シーラは、、、?」と問う。




アメリアに見つめられたシーラは深く、深くため息をつく。


「不本意だな」


シーラから出た言葉に、アメリアが少しの驚きをもって「シーラ?」と口にする。



「まったく不本意だ。。。。。。アメリアからそんな質問が飛ぶなんて。以前にも言ったろう? 私はアメリアに剣を捧げた。私があるべき場所は、アメリアがいる場所だ」


「シーラ、、、、」



「クロト、王様になったらもちろん私を雇ってくれるんだろうな? 言っておくが、、、私の腕は高いぞ?」


「ああ。俺の国の近衛騎士団長はお前しかいないよ」


「ならいい。アメリアを泣かせたら、私がお前を泣かす」


、、、、シーラの笑顔が怖いな。




「、、、あー、いっすか?」手を挙げたのはパオロだ。


「あのですね、クロトさんの国は落ち着くまで時間がかかると思うんですよね。その間、シーラさんだけじゃ、戦力が足りないんじゃないですか?」


「いや、俺たちもフォローするから大丈夫だぞ?」


「いやいや、足りませんね! 絶対に! ここはもう一声、優秀な将軍を増やしてもいいんじゃないっすか?」


「お、それもそうだな、ガーヴォやパールに声をかけてもいいかもしれないな! パオロ、いい助言をありがとう!」


「違うでしょ!? いるでしょここに!? 優秀な将軍候補が!!」



様式美とも言えるパオロとの掛け合いが済んだので少々真面目な顔でパオロに聞く。


「いいのか? 俺から見てもロッセンの出世街道に乗っていると思うぞ?」


「、、、まぁ、そっすね。でも、ジュリアちゃんの言葉を借りるなら、”こっちの方が面白そう”なんで」





「、、、分かった。じゃあ頼むよ」





こうしてエル・ポーロに最後のパーティメンバーが加わる。





最後まで黙っていたのはサリナだ。アーヴァントが気遣って声をかける。


「サリナはいずれムーンウルフを率いる立場になるかもしれないのだから、別に無理する必要はない。このメンバーの中で同調圧力に屈するなど無意味だ」


そう言われたサリナは静かに首をふる。


「違うの。。。。いえ、、、違わないかな。。。私の気持ちだけでいえば、みんなと一緒がいいの。だからいつかムーンウルフに戻るって約束した方が、私の足枷。。。。。でも決めた。私は私の気持ちに素直に生きてゆきたい。だからみんなと、一緒に行きたい」



少し涙目で言ったサリナにアメリアが「サリナの気持ち、、、私も同じだから分かるわ」と、そっと抱きついた。





そんなやりとりをフィルとクィッチは微笑ましく見つめるのであった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



翌日。全ての準備は整った。



「それでは妾もそろそろ出るかの。クロト、アメリアを泣かせるようなことはするのではないぞ」


「そこは”無事で”とかじゃないのか?」


「お前は多分無事じゃろ? それよりも近い将来甥の嫁になる少女を心配しておいた方が建設的じゃ」


そう言ったフォニアがアメリアにトコトコと寄ってゆく。


「クロトを、、、頼むの」


「はい」


その返事に満足したフォニアは、クィッチや側近を連れてそのまま立ち去って行った。




「クロト!!」でかい声で近づいてきたのはヴァーミリアンとビクトル。もちろん声の主はビクトルだ。


「そろそろ出る! お互い無事でな!」


「東の港が芳しくなければ、すぐに我らと合流するのじゃぞ」


と、それぞれ言いながら乗船して行く。



両名の艦隊が出航すると、残ったのはクロト達とムジュア、ポロンポの一行だけ。



全員がなんとなくクロトを見やる。





そんな視線を感じたクロトは






「あー、なんか結構大ごとになったけど、俺たちにとっては最後の国の”旅行”で、新しい”出発”だ。楽しんで行こう」









というと、皆んなから「「「「「「「おおー」」」」」」という元気な返事が返ってきたのだった。







いつも読んでいただきありがとうございます。


もうパーティメンバーは増やさないって言ったのに! 言ったのに!

、、、、、まぁパオロだからいいか。


クロト達の旅路も、遂に最後の国となります。引き続きお付き合いくださいませ。

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