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175)クロトの目指すもの


細かな打ち合わせが済み、各国の意思疎通が完了したところで各自持ち場へ散会となる。


最初に席を立ったのはハイネ。ファウザはエルトラ方面を担当するため、イエロードラゴンに騎乗といえどそろそろ出発しなければならない。


同じくエルトラ方面を担当するフォニアはドラゴンになればイエロードラゴンよりはるかに早く移動できることに加え、ハナムの軍は到着までもう少し時間がかかるようだ。


そのためファウザ軍が牽制も兼ね先行し、あえて迂回するように進軍。ハナムは軍が到着次第、最短距離でエルトラの首都を目指す。

つまり合流するのではなく2面作戦となる。


トップ間にわだかまりはないとはいえ、末端まで認識を改めるには時間がなさすぎる。下手に合流して仲間割れなどの諍いに頭を悩ませるくらいなら、最初から別行動で首都に向かい、互いに競争させたほうが効率的であると言う判断。


クートと側近のザーバルはフォニアに同行、これもエルトラ内に味方が潜んでいた場合、相手が魔族では話を聞いてもらえない可能性もある。そこでクートに出てもらい、同士討ちを避けるための配慮だ。



「それでは、アメリア、クロト。お互いに無事にまた会おう」


そのように声をかけてくれるハイネに、アメリアが一歩近づき問うた。


「ハイネ様は私の気持ちを汲んで、クロトさんに王証を貸与してくれたのですか?」


クロトがファウザの使者として、連合議会で役割をこなせばそれを理由に貴族へ取り立てることができる。

ファウザ王の覚えのめでたい貴族と、特に両国間の交流が盛んなロッセンの姫君の婚姻。それほど無理な身分差ではなくなる。


ハイネは目を細め、自身の娘に接するようにアメリアの頭に手を乗せた。


「さて、どうだろうな? まぁとにかく、またクロトも連れてガノーへ遊びに来なさい。リヴィアも喜ぶだろう」


「はい。ありがとうございます」



アメリアから手を離すと、クロトの後ろにいたアーヴァントに目を向ける。


「アーヴァント」


「はい」


「知っての通り、アメリアは私にとってもう一人の娘のようなものだ。。。。。或いはこれが、ファウザのアーヴァントとしては最後の任務になるかも知れんが、、、頼んだぞ」



「、、、、、はい」



どう言う意味ですか、とは聞かない。アーヴァントは深く頭を下げて答える。


それを見てから、もう一度クロトに視線を移し。今度は黙って目礼。


クロトも強い思いを込めた瞳で礼を返して見せた。





そうしてハイネが立ち去ると、ゲラントとイグナシアも動き出した。


彼らは持ち場こそ近いが、ファウザとハナムとは違いしっかりとした連携をとって、ランカータの国境から攻め込むため。こちらはこちらで両軍の密な連携の調整を取らねばならない。


「それじゃ、そろそろ行くよ。義弟クロトよ」ゲラントは茶化し気味に言ってから、少し真面目な顔をして


「必ず君たちエル・ポーロ揃って、私の戴冠式に参列するように。これは約束だ」


「ああ。約束する」クロトも力強く返事を返す。



「クロト、一ついいか?」その様子を見ていたイグナシアがタイミングを見て声をかけて来た


「なんだ?」


「ダスクの事だ」


「ああ、見つけたら捕まえておくよ」


「いや。その必要はない」イグナシアは少し怒気を孕んだ声で続ける。


「見つけたら躊躇なく殺してほしい。頼む」



「、、、、分かった」



「最後まで迷惑をかけて、すまん」


それだけ言うと、連れ立って立ち去って行った。




残った面々は船の準備があるため、明日朝一の出発の予定となっている。

フォニアもそれに合わせてバルゲドを発つという。



そんな会話をフォニアやヴァーミリアン、ビクトルとしていると、そこまで所在無げにずっと大人しくしていた、ラビッターのクィッチが意を決して「あのぅ!」と声を上げる。


「どうした?」クロトが聞くと、クィッチはフォニアの方を向いて「私も連れて行ってください!」と願い出た。


「ふむ。大翼のカラス、、、と言ったか。あやつらもマルメに到着していよう。合流したいと言うことか?」


「はい」


「じゃが、ここで待っていればいずれはやってくるのではないか?」


「でも多分、団長の性格からしてもう一度エルトラに行くと思います。そう言う人ですから、、、」



ここで2人の話を黙って聞いていたイグナシアが首を傾げながら聞く。


「クィッチと言ったか? お主、、、、ラドルの縁者か?」


「ラドル、、、誰ですか?」


「気のせいか。すまん。忘れてくれ。横顔が良く似ておったのでな。。。」


「、、、、とにかく、私も団長の力になりたいんですぅ! お願いします!」


「ふむ、、、クロト、どう思う?」


フォニアがクロトに意見を求めた


「うーん。コムタは多分、安全なところに連れて言ってくれって意味で同行させてんだと思うんだが。ただ、、、」


「ただ?」


「本人のやりたいようにやればいいんじゃないか?」


至極シンプルな答えに、フォニアもニヤリと笑う。


「うむ。そう言う考え方は嫌いではない。分かった、連れてゆこう。ただし安全は保証できん。良いな?」


「もちろんです!」


そんなわけでクィッチはフォニアに同行と決まる。


そこでふと、フォニアがそういえばと言った風にクロトを見て聞いた。





「クロトは王になったらどんな国にしたいかの?」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




問われたクロトはきょとんとしたまま


「どんな国って?」と聞いた。



「まあ、なんでもいいんじゃ。単純に腹一杯食える国にしたいとか、強い国を作りたいとかの。例えば前者なら農耕に力を入れる方向へ、後者ならロッセンのように騎士団を揃えるのを目標にしても良い。国を造る上で、最初の目標というのがあるとないのでは、大分やりやすさが違うはずじゃ」


「なるほど、、、フォニアや、ヴァーミリアンにもあるのか」


「おう、なぜ俺には聞かん?」ビクトルが割って入る。


だってビクトルは何にも考えてなさそうだもん。


「心の声が漏れてやがる! 俺だって考えているわ! いいか、俺の国の目標は観光立国よ!」


「そうなのか?」クロトが返すとルルルさんもビクトルに同意する


「はい。獅子王様は観光に力を入れたいと考えています。クロトさんをお連れした灯台見学ツアーや、大々的な進水式も観光事業の試験的な側面もありましたのです」


「そうなのか。なんか、、ごめんな」


「おい、謝るな! 逆に俺がバカに見えるだろ!」


まあビクトルは放っておくとして


「ヴァーミリアンは?」


「うむ。ウチは商業に、ひいては貿易に力を入れている。外貨で国を豊かにするのだ」


そういえば、前にルルルさんがそんなこと言っていたな。


「へえ、フォニアもなんかあるのか?」


「妾はクロト達に話した通り、王国との国交よ。3代かけた大望ぞ」


「そうか、、、」クロトが考え込む仕草を見て、フォニアが助け舟を出す


「何、すぐに決めろ、という話ではない。考えておけば良い」



と、すぐにクロトはぽん、と手を打つ。


「あ、1つあるな」



「ほう? なんじゃ?」






「俺亜人だからな。亜人でも、獣人でも、魔族でも、もちろん人でも、誰でも気兼ねなく住める国にしたい」





どうだ? と意見を求められたアメリアは





「クロトさんらしいですね」と微笑んだ。







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