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169)集う希望


ポロンポ達が寄港した、その夜。


城内に用意された会食室には、クロト達とポロンポ商会の面々をはじめ、多彩な人々が顔を揃えていた。


エル・ポーロ、ポロンポ商会以外では、ハナムを統べる魔王フォニアと側近の2人。それに新緑商団の団長、ムジュア。

ロッセン王国からはパオロとバルゲド駐在大使のヘラルさん。

エルトラの王太子クートに、精霊王の右腕、エルフのフィル。


なお、ポロンポ商会はかつてクロトと共に旅した10人のみ。

参加を希望した者もいたが、残念ながら会場のキャパシティの問題でご遠慮いただいた。


代表して乾杯の挨拶はポロンポ。クロトの指名。


「えー、それでは、、、思い返せばエル・ポーロの皆様と初めてお会いして、夕食を共にさせて頂いたのもこの部屋でした。あれが先日のような、ずいぶん昔のような不思議な気分です。本日は様々な種族の方々が一堂に介しておりますが、願わくばここにいる皆様全員がご満足いただける一夜になりますように、、、乾杯!!」


「「「「「「乾杯!!!!」」」」」」」





「は? 魔王、、、、様。。。は? え? どちらの?」


港では荷下ろしなどの仕事で忙しそうだったので、詳しい話は夜に。と言うことで集まった訳で、ポロンポ以外にはフォニアのことは説明していなかった。ポロンポもクルーに説明しなかったみたいで、同じテーブルに座ったピエールが、バルゲドの入国審査の人と同じようなセリフを吐いて固まった。


それを見ながら爆笑するパオロとデュラハンのジレン。パオロも最初少女呼ばわりして真っ白に燃え尽きていたけどな。


フォニアも反応を楽しんでいるようで、目を細めてピエールの挙動を眺めている。


この愉快なテーブルにアメリアとともに同席しているクロトが他のテーブルに目をやると、



ポロンポとムジュアは何やら話し込んでおり、その周りにはシーラ、アーヴァントら比較的落ち着いた者達が集まって、大人な空間を形成していた。


その向こうでエルトラの王太子クートと、エルフのフィルがジュリアを挟んで取合い。それを微笑ましそうにポロンポ商会のクルーが眺めている。


またサリナは久々の諸島の同胞ということで、クルーのパックやクラッツさんと料理の話題に花を咲かせている。



「はー、クロトさんって、ほんと、、、、クロトさんっすよね」


ようやく落ち着いたピエールが、しみじみとした目でクロトを見、それに「そうっすよね。全くクロトさんっすよ」とパオロがウンウンと同調する。気が合いそうだな、お前ら。



「ところで、結局フィルはなんでバルゲドに?」


「あれ? ポロンポ会長から聞いてませんか?」


ポロンポは商会の規模が大きくなったことで、対外的な面を考慮して、大将呼びから会長に肩書きを変えたらしい。


「港ではそこまでの時間がなかったんだよ」


「ああ、なるほど。じゃあ、俺たちがここにきた理由もまだ聞いていないんですね」


「理由? 商売じゃなくて?」


「商売もありますが、多分クロトさんがここに来るんじゃないかと、会長が読んで先手を打ってきたんですよ」




つまりこういう事らしい


エルフの里との交易に加え、新事務所の引き継ぎや、吸収したパーニャ商会の再編。エル・ポーロ号の改装の打ち合わせなど、エル・ポーロ号が出航できない中でも、ポロンポ商会の日々は慌ただしく過ぎていった。


そんな中、ポロンポ達の耳に不穏な噂が流れてきた。


ランカータとの交易が途絶えたという。それから程なくして、ランカータにたどり着けないという、不思議な話が出回り始める。


「ランカータへ向かっても、モヤのようなものに阻まれて進めない」と。


ポロンポたちはとてもよく似た現象を知っている。エルフの里だ。


そう言えば、前王の息子ラッソは怪しげな人間を迎え入れて、何やら取引をしていたと言っていたことを思い出す。


取り急ぎビクトルの元へ懸念を伝えると、この件は当然ビクトルの耳にも届いており、王の代理としてエルフの里へ向かうことに。


その間ビクトルは白虎王や鳳王に連絡を取り、何かあればすぐに動ける準備を整えておくと。




そうしてエルフの里に走るポロンポ達。


ジュリアの母、現精霊王のエレムに相談を持ちかけると、モヤはエルフに伝えられてきた秘伝であり。ラッソが横流しした可能性が高いということが分かった。


本来は、対策のためにエレム本人が乗り出すと言っていたのだが、未だ落ち着きを取り戻していないエルフの里、ここでエレムに何かあっては混乱を飛びかねないと、代わりにフィルが同行することとなった。



「それで、そのままバルゲドに来たんですよね」


「そのまま? ビクトルの島でなく?」


「はい。獅子王様と会長が話をして、王国と連携した方がいいだろうということで、バルゲドから各国に連絡を取ってもらおうということに」


なるほど、どこも似たようなことを考えて動いているわけだ。


「それに」


「それに?」


ピエールがそこで一旦間をとって、クロトや他の席で歓談しているエル・ポーロの面々を見渡す。


「会長は、こんな話にクロトさん達が絡んでいないとは考えられないから、バルゲドにいた方が何かと力になれるんじゃないかって考えたみたいです。まぁ絡んでいるどころか騒動の中心にいるみたいですけど」




さすが、ポロンポ。分かってんな。。。。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




翌日は朝から続々と各国のトップがこの地に集まって来る。


一応発起人の立場であるクロトとアメリアは、それぞれ要人を迎え入れなければならないため、城内に軟禁状態である。


最初に到着したのは獅子王ビクトル。

動ける準備万端の状態であったので、朝一番には到着。ルルルさんも一緒だ。


「よう! クロト! お前らは相変わらず妙なことに首を突っ込んでんな!」


「いや、好きで突っ込んでいるわけじゃないぞ」


「むしろ妙なことを呼び込んでいるのでございますね」とルルルさんまで乗って来る。


そんな挨拶を交わしている間に、ロッセンの新王にてアメリアの兄、ゲラントが到着した。

親衛隊長のバーンも一緒。それに、、、


「お、暴君殿と天女様」と茶化すゲラントに突っ込む間も無く


「クロトよ! 久しぶりであるなあ! 息災か!!」


腹の底から声をだして来る巨漢の老兵。ガーヴォ将軍である。


「まったく! 儂のおらん間にオベリアに来たそうではないか! 先に連絡せんか!」


などと言いながら、クロトの首に腕を巻きつける。


「ちょ! ガーヴォ! 暑苦しい!」


抗議するクロトに構うことなく笑うガーヴォだったが、ゲラントからほどほどにしておけと苦笑されたので、適当なところで手を緩める。と、それをじっと見ていたビクトルがなぜか対抗意識を燃やし、クロトの首に手を回そうとするので素早く避ける。


そんな様子を見たガーヴォがビクトルに目をつけ


「お主はどなたかの!」と、挨拶が始まる。


ビクトルも獣人の中で頭一つ抜ける巨体。2人が並ぶと圧がすごい。そばにいるゲラントが子供に見える。


「皆様、まずは会場の方へ。それぞれに待合室も用意してありますので」とアメリアに促されて、獅子王とロッセンの王達は連れ立って会場へと歩いて行った。




次にやって来たのは白虎王、ヴァーミリアン。そしてマルメの皇女イグナシアもほぼ同時にやって来た。


こちらはクロト達の元に来る前に挨拶が済んでいたらしく、何やら話しながら歩いている。


ヴァーミリアンの背後にはロクタとヘクトも控えているのが見えた。イグナシアの背後には先日マーロウで見かけた騎士。イグナシアの双子の弟のどちらかだろう。


「相変わらず主らと会うときは妙なことになっておるのう」


ヴァーミリアンより、少々あきれ気味に獅子王と同じようなことを言われたクロトだったが、ヴァーミリアンと会うときはゴルゴンの首、古代竜、そして今回と思い返せばぐうの音も出ない。


「フォニア殿はどちらにおられるか?」


イグナシアの方は挨拶もそこそこにフォニアの居場所を聞いて来た。宿題だった魔族の軍を自領に入れる件だろう。


フォニアの居場所を伝えると足早に去って行った。





昼過ぎに現れたのはファラウィルと名乗る鳥人。鳳王ウィズの代理だと言う。


「鳳王様はご病気か何かですか?」アメリアが聞くと


「いえ、そう言うわけではないのですがね、まぁ、我が主人は、と言うか我々はこう言う感じですので」


とヘラヘラとしてどうも掴み所がない。


アメリアも釈然としない表情のまま、会場へと送り出す。






最後に到着したのがファウザ王、ハイネ。

アーヴァントの親友にして、子息のロヴァも一緒である。

そして、その背後、意外な人物がファウザ王の後ろから顔を覗かせた。






薄汚れた衣類が、ここまでの道程を偲ばせる。









エルトラの戦士、ザーバルの姿がそこにあった。








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